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更新日:2025年3月12日
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日本銀行富山事務所長
藤澤 知行
富山県の景気は、一部に弱めの動きがみられていますが、緩やかに回復しています。
需要面をみると、個人消費は、日用品を中心に物価上昇の影響がみられていますが、雇用者所得が回復しつつあることや、昨年秋の大型観光キャンペーンの効果もあって、持ち直しています。また、設備投資は、幅広い分野への投資が増加しているほか、公共投資は震災復興工事などから着実に増加しています。この間、生産は横ばい圏内の動きとなっています。
先行きの県内景気をみる上では、一部に弱めの動きがみられている生産の動向や、物価上昇が続く中で春闘などを踏まえた所得動向について、注目しています。
なお、富山市が海外メディアの今年行くべき都市に選ばれ、国内外からの関心が高まっていることは景気の面でも追い風です。これを好機に、官民が協力して受入体制を整備し、持続的な集客に繋げていくことが期待されます。
個人消費は、物価上昇の影響などがみられるものの、持ち直しています。
2024年10~12月の小売6業態(百貨店、スーパー、コンビニ、家電専門店、ドラッグストア、ホームセンター)の売上は、前年を上回りました(+2.7%)。内訳をみると、ドラッグストアでは、節約志向に対応した商品の拡充やセールの実施などにより、前年比で高い伸びを続けています。また、百貨店・スーパーでは、セール等の需要喚起策の奏功もあって、前年を上回って推移していますが、「『ハレの日』消費にも節約志向がみられている」といった声が一部に聞かれています。
乗用車新車登録台数は、一部メーカーの生産停止等の影響による大幅な前年割れの状態からは、持ち直しつつあります。
10~11月の県内宿泊者数は、前年を下回りました(▲3.1%)が、マイナス幅は縮小しているほか、昨年秋の大型観光キャンペーンの効果もあり、この間の観光施設等の入込客数は多くの施設で前年を上回るなど、県内の観光需要は、着実に回復しています。
なお、本年入り後、富山市が海外メディアの今年行くべき都市に選ばれたことで、「外国人客のみならず、国内客も増加している」との声が関連施設等から聞かれています。
設備投資は増加しています。短観(2024年12月調査)の集計結果(富山県分)をみると県内企業の設備投資は前年を上回る計画(+10.1%)となっています。製造業では、能増投資や新規需要の取込みに向けた投資、合理化・省力化投資などが幅広くみられています。非製造業では、能登半島地震の復旧工事のほか、新規出店やシステム・情報インフラ等への投資がみられています。
なお、前回調査(2024年9月)に比べると、12月調査は下方修正(▲4.1%)となりましたが、下方修正の理由は、計画の具体化に伴う修正を挙げる先が多く、資材高や人手不足を理由に投資を先送りする動きは一部に止まっています。
生産は、横ばい圏内の動きとなっています。業種別にみると、化学は、医薬品が全体を引っ張る形で、緩やかに増加しています。電気機械は、スマホ向けが堅調なものの、自動車向けなどが弱めで、全体では横ばい圏内の動きとなっています。金属製品は、リフォーム需要を中心に下げ止まっています。汎用・生産用・業務用機械は、輸出向けを中心に足もと減少しています。
雇用・所得環境は改善しつつあります。有効求人倍率は、高水準で推移しています。雇用者所得は、実質賃金が前年を上回って推移するなど、改善しつつあります。
短観(2024年12月調査)の富山県分の集計結果をみると、企業活動の全体感を示す業況判断DI(富山県・全産業)は+4と、前回調査(9月)の+2から改善しました。製造業では、欧州・アジア地域への輸出減少や、工事の遅れに伴う建設資材の需要減少を理由に判断を引き下げる先がみられましたが、医薬品やスマホ向け部品、設備更新関連機材での需要好調を理由に判断を引き上げる先が上回り、業況判断D.I.は僅かに改善しました(▲9→▲8)。非製造業では、消費者の節約志向の高まりや競合激化などによる受注減少を理由に判断を引き下げる先がみられましたが、旅行関連需要の増加や能登半島地震の復旧工事の進展により判断を引き上げる先が上回り、業況判断D.I.は改善しました(+12→+16)。
先行きについては、製造業では、医薬品、自動車、AI関連での需要改善を理由に業況判断を引き上げる先が多くなっています。一方、非製造業で、原材料高・人手不足に対する先行き不透明感から業況判断を引き下げる先が多くなっています。この結果、全産業では、「良い」超+4を維持する見通しです。
なお、短観の次回調査(2025年3月)は4月1日に公表します。
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