トップページ > 県政の情報 > 組織・行財政 > 組織別案内 > 経営管理部 > 統計調査課 > DBJ設備投資計画調査からみた富山県経済の状況(特別調査)企業行動に関する北陸企業の意識調査

更新日:2023年10月16日

ここから本文です。

DBJ設備投資計画調査からみた富山県経済の状況
(特別調査)企業行動に関する北陸企業の意識調査

株式会社日本政策投資銀行 富山事務所長 田中 悟史

富山事務所副調査役 吉田 志穂

1.DBJ設備投資計画調査について

 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)は、わが国、民間企業の設備投資動向を把握することを目的として、毎年6月、資本金1億円以上の民間企業(金融保険業などを除く)を対象に、設備投資額の実績、計画に関するアンケート調査を定期的に実施している。
 本調査における設備投資額は、自社の有形固定資産に対する国内投資額であり、原則として建設仮勘定を含む有形固定資産の新規計上額(工事ベース)である。業種別では、原則として主業基準分類(企業の主たる事業に基づき分類)で集計している。なお、分析に際しては、地域特性をより明らかにすべく、投資額の大きい電力を除いて行った。
 また本調査は、本社所在地を問わず投資地点で集計している「属地主義」に特徴がある。すなわち、本調査における富山県の設備投資額とは、富山県に本社がある企業(県内企業)と富山県以外に本社がある企業(県外企業)を問わず、富山県へ投資があると回答のあった金額の合計値である。
 今回調査(2023年6月実施)は、2022年度実績および2023年度計画などについて、全国5,432社から回答をいただいた(回答率57.6%)。うち本社所在地が富山県の企業は110社、富山県へ投資があると回答のあった企業は220社であった。
 以下では、全国と北陸地域(富山県、石川県、福井県)、富山県の順で調査結果を整理し、設備投資動向からみた富山県経済の状況について述べることとしたい。

2.全国と北陸地域の設備投資動向

(1)全国の2023年度計画

 全産業(除く電力)は、全国は2年連続の増加(19.8%増)となる。地域別では、全国10地域のうち北陸(42.8%増)を含む10地域すべてが増加となる。
 製造業は、全国は3年連続の増加(27.0%増)となる。全国10地域のうち北陸(49.0%増)を含む10地域すべてが増加となる。
 非製造業(除く電力)は、全国は2年連続の増加(15.3%増)となる。全国10地域のうち北陸(19.6%増)を含む10地域すべてが増加となる。

 なお、当年度中の計画値は、計画の見直しや精査、工期の遅れなどがあるため、実績に向けて下方修正される傾向がある。物価の上昇や為替の急変動、人手不足など不確実性は高いが、コロナ前後の修正パターンを踏まえると、2023年度は最終的にコロナ前の2019年度の投資水準を回復して一段と拡大する可能性が高い。

(2)北陸地域の2023年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比42.8%増と5年ぶりの増加となる。
 製造業は、49.0%増と2年連続の増加となる。業種別にみると、前年に医薬品関連で生産能力増強が進んだ「化学」(13.1%減)などが減少するものの、半導体製造装置向け部品や工作機械の工場新設がある「一般機械」(102.0%増)、建材や自動車向けの投資がある「金属製品」(122.4%増)、半導体関連を中心に増産合理化投資が進む「電気機械」(48.8%増)などが増加する。
 非製造業(除く電力)は、19.6%増と5年ぶりの増加となる。業種別にみると、生産施設や商業施設の新増設にかかる投資が剥落する「建設」(42.2%減)及び「不動産」(15.1%減)などが減少するものの、新幹線敦賀開業関連投資や交通拠点整備、物流拠点の新設がある「運輸」(84.0%増)、倉庫新設や店舗新装等がある「卸売・小売」(22.9%増)などが増加する。

図表1 全国と北陸地域の設備投資動向(2023年度計画)

1

3.富山県の設備投資動向

(1)富山県の2022年度実績

 全産業(除く電力)は、前年度比14.9%増と3年ぶりの増加となった。
 製造業は、17.4%増と3年ぶりの増加となった。業種別にみると、建材や自動車関連の増産投資が一段落した「金属製品」(21.6%減)などが減少したものの、医薬品関連の生産拠点整備が進む「化学」(36.7%増)、生産設備の増強・合理化投資や研究開発施設への投資があった「その他製造業」(59.1%増)、半導体関連の工場新設があった「精密機械」(464.2%増)などが増加した。
 非製造業(除く電力)は、4.3%増と3年ぶりの増加となった。業種別にみると、前年に大型商業施設等の開業があった「不動産」(61.4%減)などが減少したものの、店舗等の新設・改装があった「卸売・小売」(250.4%増)、ホテルの新設等があった「サービス」(18.8%増)などが増加した。

(2)富山県の2023年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比27.1%増と2年連続の増加となる。
 製造業は、27.2%増と2年連続の増加となる。業種別にみると、前年に生産能力増強が進んだ「化学」(43.2%減)などが減少するものの、建材向けの増産投資を計画する「金属製品」(132.2%増)、自動車向け部品等の生産能力増強投資がある「一般機械」(50.1%増)、半導体関連を中心に増産投資が進む「電気機械」(108.9%増)などが増加する。
 非製造業(除く電力)は、26.4%増と2年連続の増加となる。業種別にみると、前年にホテルの新設等があった「サービス」(32.4%減)などが減少するものの、物流施設の新設等がある「卸売・小売」(70.9%増)、交通拠点整備が進む「運輸」(74.9%増)などが増加する。

 富山県の2023年度計画は、製造業では、建材や自動車向け部品、半導体関連需要への対応などを中心に幅広い業種で生産能力の増強が進み、非製造業では、物流施設の新設や交通拠点整備などが後押しし、全産業(除く電力)は、2年連続の増加となる。
 一方、2.(1)で述べたように、物価の上昇や為替の急変動、人手不足など、依然としてリスク要因は多く、今後の動向については注視が必要である。

図表2 富山県の設備投資動向(2022年度実績、2023年度計画)

2

4.富山県の設備投資の特徴

 富山県は日本海側有数の工業集積を誇り、富山県の2022年度設備投資実績に占める製造業のウエイトは81.1%と、全国(38.8%)を大きく上回っている。
 そこで、2014年度以降の10年間における富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移をみると、年度によって顔ぶれに違いはあるものの、化学(含む医薬品)や一般機械、金属製品、非鉄金属、電気機械など、歴史的に富山県で集積が進んだ業種を中心に、堅調な需要を背景とする能力増強などの活発な投資が行われ、全体の伸びを牽引してきたと言えよう。
 2018年度は電気機械の大幅反動減を主因に5年ぶりの減少となったが、2019年度は輸送用機械や食品の大型投資が寄与し、増加に転じた。2020年度はコロナ禍による投資の先送りなどにより、幅広い業種で減少となり、2021年度はコロナ禍の長期化や原油価格高騰など情勢の不透明感が影響し、2年連続の減少となった。2022年度はコロナ禍で見送った投資の再開などにより3年ぶりの増加に転じ、2023年度計画では幅広い業種で強い投資意欲がみられ2年連続の増加となる。全国では、デジタル化の加速を踏まえた半導体関連や脱炭素、自動車の電動化対応などの投資が旺盛であり、それらに対応する部材等の生産を富山県など北陸地域の企業や生産拠点が支えていると考えられる。

 

図表3 富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移
3

5.(特別調査)企業行動に関する北陸企業の意識調査

 本調査では、現下の経済・社会状況を踏まえ、民間企業の行動に関する意識を調査することを目的に、「企業行動に関する意識調査」(特別調査)も、合わせて実施している。特別調査には、全国4,023社(回答率42.6%)より回答をいただき、うち北陸本社企業は167社(製造業72社、非製造業95社)(回答率48.3%)であった。
 以下では、北陸本社企業の調査結果を紹介する。

(1)事業におけるリスク要因

 事業への影響が大きいリスク要因を聞いたところ、北陸では「物価上昇」、「人手不足」の回答が多く、概ね全国の傾向と一致している。
 他方、「為替の急変動」や「ウクライナ危機」をリスク要因と回答した割合は低い。

 

図表4 事業への影響が大きいリスク要因
4-2

(2)物価上昇への対応(中堅企業のみ)

 燃料費等の高騰が販売価格に転嫁できているかを中堅企業に尋ねたところ、完全に「転嫁できている」と回答した企業は1割に満たない。
 製造業より非製造業で「価格転嫁できていない」とする割合が高い。

 

図表5 燃料費・電力費・人件費等高騰の販売価格への転嫁状況
5-2

(3)カーボンニュートラルの影響

 カーボンニュートラルの進展が事業に与える影響について、製造業・非製造業ともに「設備入れ替えの契機」と回答した割合が最も高い。
 北陸の製造業においては「ビジネスモデルの転機」、「サプライチェーン全体での対応」、「長期的な移行戦略の策定・開示」の割合も高い。他方、非製造業ではそれらの割合は相対的に低く、全国と比較しても差が開いている。

 

図表6 国際的にカーボンニュートラルへの取り組みが加速することで想定される事業への影響
6-2

(4)カーボンニュートラル達成時期の目安

 カーボンニュートラル達成時期の目安について、北陸においては製造業・非製造業ともに「不明」の回答が最多であり、全国と比較しても多い。
 目安を設定している企業では、日本政府としての目標が示されている2030年や2050年に合わせた回答が多い。

 

図表7 カーボンニュートラル達成時期の目安

7-2

(5)取引先との間での、カーボンニュートラルの目標の共有・連携状況

 取引先とのカーボンニュートラル目標・共有状況について聞いたところ、販売先・調達先ともに「目標共有しておらず、具体的な連携も行っていない」の回答が大部分となっている。

 

図表8 取引先との間での、カーボンニュートラルにかかる目標の共有・連携(共同研究、原材料・燃料・電力の共同調達、目標に沿った調達など)状況
8-3

(6)企業行動に関する北陸企業の意識調査(まとめ)

⓵ 事業リスクと国内投資

 物価上昇や人手不足を今後の事業リスクと捉える企業が多い。海外取引のある企業が限られており、全国に比べ為替変動への意識は高くない。コロナやウクライナを選択した企業は少なく、事業リスクの意識としては落ち着きをみせている。
 昨年度実績が計画を下回った企業の要因は、投資内容精査や工期の遅れが多い。
 中堅企業では、燃料費や電力費・人件費等の高騰を販売価格に完全に転嫁できている中堅企業は1割に満たず、一部にとどまる企業が大半である。

⓶ 脱炭素

 主な投資は再エネ・省エネ関連が中心。全体的に積極的な姿勢はうかがえない。技術や開発コストを課題と感じる企業が多く、まずは公的な支援を求める企業が多い。脱炭素にかかるコストの価格転嫁に関する意識もまだ低い。

⓷ 人的投資

 人材獲得に向けては、新卒・中途採用を強化するほか、賃金引上げに取り組む企業が多い。人手不足の対応策は、製造業では自動化投資、非製造業では、営業時間短縮のほか、従業員のリスキリングなどにより多能工化により対応する姿もみられる。
 中堅企業では、物価上昇に伴う賃金引上げを実施した企業が多いが、その水準にはバラツキがある。

⓸ デジタル化・イノベーション

 デジタル化の活用について、関心は高いが、実際の取り組み状況はシステムの更新や情報データ化などにとどまり、ビジネスモデル変革・再構築といったDXに取り組む企業は2割程度とまだ少ない。
 イノベーション推進へは、人材不足を課題と捉えている。人材を獲得し、育て、イノベーションに繋げるまでをどのように取り組むかに知恵を絞る必要がある。スタートアップとの連携については、スタートアップに対する情報整備や公的支援を求める企業が多い。

 

  1. 本稿で示された意見は筆者のものであり、DBJの公式見解ではありません。
  2. 本稿で使用したデータは、DBJの設備投資計画調査によるものです。詳細はDBJのホームページをご参照ください。

(地域別設備投資計画調査)

https://www.dbj.jp/investigate/equip/regional/detail.html

(全国設備投資計画調査)

https://www.dbj.jp/investigate/equip/national/detail.html

(2022・2023・2024年度北陸地域設備投資計画調査 特別調査 企業行動に関する北陸企業の意識調査)

https://www.dbj.jp/topics/investigate/2023/html/20230824_204469.html

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

関連情報

 

このページに知りたい情報がない場合は

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?