更新日:2024年3月13日

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富山県の景気動向について

日本銀行富山事務所長

田中 英敬

1.はじめに

 富山県の景気は、緩やかに回復していたものの、令和6年能登半島地震の影響により、生産や個人消費を中心に現時点で強い下押しの動きがみられています。
 昨年末の時点では、富山県の景気は「緩やかに回復している」と判断していました。しかし、1月1日の地震の影響で県内経済には大きなマイナスのインパクトが加わりました。3月上旬のこのタイミングでは、ハードデータである経済指標はほとんど出ていませんし、ミクロヒアリングでもまだ断片的な情報しか得られていません。このため、地震の影響がどの程度の範囲で、どの程度の強さで、いつまで続くのか、現時点ではまだ不確実性が大きい状況です。本稿では、現時点の情報をもとに、蓋然性が高い見方を中心にお示ししています。
 地震の影響が目立つのは、個人消費と生産です。個人消費については、年末までは物価上昇の影響を懸念しつつも、緩やかに回復しているとみていましたが、地震の影響で小売や観光関連を中心に下押しの動きがみられています。もっとも、3月上旬のタイミングでは、消費活動・消費マインドは平常に戻りつつあります。
 また、生産については、中国の景気減速や世界的なIT関連財の在庫調整の影響などから、もともと弱含んでいましたが、地震による生産設備等への影響が広範に及んでおり、現時点では減少しているとみています。こちらも、発災直後からの企業の復旧対応が進捗しており、順次、生産水準は回復しています。
 設備投資は、今のところ省力化投資や環境対応投資など従来の積極的な投資スタンスが変わったという情報には接していませんので、引き続き増加していると判断しています。地震の影響で案件先送り等の動きがみられないか、4月1日公表の3月短観に注目しています。雇用・所得についても同様で、現時点では着実に持ち直しているとみていますが、生産や個人消費の影響が長引いてくると、雇用や賃金にも影響が波及する懸念もあり、地震の影響を注視する必要があります。

2.主要項目の動き

(1)個人消費

 個人消費は、利用可能な12月までのデータをみる限り、緩やかに回復していると判断していました。もっとも、年明け以降、地震の影響から小売や観光関連を中心に下押しの動きがみられています。3月上旬のタイミングでは、自粛ムードからの回復を指摘する声が聞かれており、消費活動・消費マインドは平常に戻りつつあります。また、北陸応援割や県独自の割引・クーポンなど、個人消費を刺激しようとの取り組みも進みつつあります。

(小売6業態の売上高)

 12月のデータまで利用可能な小売6業態(百貨店、スーパー、コンビニ、家電専門店、ドラッグストア、ホームセンター)の売上げ(前年比)をみると、昨春来の人流の回復傾向を受けて外出関連需要を中心に売上高は好調な地合いでした。もっとも、ミクロ情報では、1月以降、地震による外出の取り止めや自粛ムードなどの影響で、衣料品や身の回り品などを中心に売り上げが落ち込んでいました。さらに、3月上旬の時点では、発災から時間が経過する中で、消費マインドは平常に戻りつつあり、売上げも持ち直しつつあるようです。

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(新車販売)

 乗用車の新車販売は、年明けから一部メーカーの生産停止の影響が出ていることから、1月、2月と大きなマイナスが続いています。現在も相応の受注残があることから、今後の販売台数は完成車生産の回復次第であり、やや不透明感が強い状況です。

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(宿泊者数)

 県内の延べ宿泊者数は、インバウンド観光客も含めて着実に持ち直しています。もっとも、年明け以降は、地震の復旧・応援人員の宿泊が増える一方で、全体としては県外客の宿泊キャンセルの影響が強く、現時点では減少しています。

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(2)設備投資

 設備投資は、地震による案件先送り等に伴う下振れ懸念はあるものの、基調として増加しています。昨年12月の短観調査から県内企業の設備投資計画をうかがうと、内外需要の回復期待を背景に能力増強・省力化投資が増えているほか、新製品投入・新規出店の動きも続いています。また、IT・デジタル分野の投資や、脱炭素・環境対応投資といった少し長い目で見た企業の成長に必要な投資案件も堅持されています。地震の影響による設備投資計画を見直す動きはまだ確認できていませんが、どの程度の影響があるのか、4月1日発表の3月短観の結果に注目しています。

 

県内企業の設備投資計画(2023年12月短観)

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(3)生産

 企業の生産動向については、データのある12月までは、弱含んでいました。電気機械が、スマートフォン・PC向けの需要が弱く、低水準で横這い圏内の動きとなっていたほか、汎用・生産用・業務用機械は、中国の景気減速等の影響を受けて弱含んでいました。

 現時点のミクロ情報では、地震による生産設備等への影響が広範に及んでおり、足もとは減少しているとみられます。医薬品を中心とする化学は、地震後、操業を停止した先があり、生産は減少しているとみられます。また、電気機械でも一部に生産停止の影響がみられているようです。ただ、こうしたミクロの被災状況が全体の鉱工業生産にどの程度の影響が出てくるのか、不確実性が大きい状況です。3月上旬のタイミングではすでに生産再開に向けた動きも進んでいます。全体として、どの程度の下押しとなるのか、いつまで続くのか、しっかりと見極めていく必要があります。

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3.その他経済指標の動向

(1)労働需給

 県内の有効求人倍率(受理地ベース)は、製造業を中心に新規求人の減少等からこのところやや低下していましたが、全体としては高水準で推移しています。

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(2)企業の業況感

 短観(2023年12月調査)の富山県分の集計結果をみると、企業活動の全体感を示す業況判断DI(富山県・全産業)は、5四半期連続で改善し、プラス6になりました。製造業では原材料コスト高の影響や海外需要の減少等から弱含んでいますが、非製造業は幅広い業種で内外需要の回復や価格転嫁の進捗を背景に業況の改善が続いています。
 地震が県内企業のマインドに及ぼす影響は、4月1日発表の3月短観で確認できるため、注目しています。

業況判断(短観<富山県分>)

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〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

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ファックス番号:076-444-3490

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