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更新日:2022年9月14日

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DBJ設備投資計画調査からみた富山県経済の状況
付論)富山型ワーケーションのあり方について
~域外人材のナレッジを積極的に活用しよう~

株式会社日本政策投資銀行 富山事務所長 山本 覚

富山事務所副調査役 吉田 志穂

1.DBJ設備投資計画調査について

 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)は、わが国、民間企業の設備投資動向を把握することを目的として、毎年6月、資本金1億円以上の民間企業(金融保険業などを除く)を対象に、設備投資額の実績、計画に関するアンケート調査を定期的に実施している。

 本調査における設備投資額は、自社の有形固定資産に対する国内投資額であり、原則として建設仮勘定を含む有形固定資産の新規計上額(工事ベース)である。業種別では、原則として主業基準分類(企業の主たる事業に基づき分類)で集計している。なお、分析に際しては、地域特性をより明らかにすべく、投資額の大きい電力を除いて行った。

 また本調査は、本社所在地を問わず投資地点で集計している「属地主義」に特徴がある。すなわち、本調査における富山県の設備投資額とは、富山県に本社がある企業(県内企業)と富山県以外に本社がある企業(県外企業)を問わず、富山県へ投資があると回答のあった金額の合計値である。

 今回調査(2022年6月実施)は、2021年度実績および2022年度計画などについて、全国5,493社から回答をいただいた(回答率57.9%)。うち本社所在地が富山県の企業は115社、富山県へ投資があると回答のあった企業は217社であった。

 以下では、全国と北陸地域(富山県、石川県、福井県)、富山県の順で調査結果を整理し、設備投資動向からみた富山県経済の状況について述べることとしたい。

2.全国と北陸地域の設備投資動向

(1)全国の2022年度計画

 全産業(除く電力)は、全国は3年ぶりの増加(23.7%増)となる。地域別では、全国10地域のうち北陸(23.4%増)を含む9地域が増加となり、1地域が減少となる。

 製造業は、全国は2年連続の増加(30.5%増)となる。全国10地域のうち北陸(34.1%増)を含む9地域が増加となり、1地域が減少となる。

 非製造業(除く電力)は、全国は3年ぶりの増加(19.6%増)となる。全国10地域のうち北陸(12.0%減)を含む3地域が減少となり、7地域が増加となる。

 なお、当年度中の計画値は、計画の見直しや精査、工期の遅れなどがあるため、実績に向けて下方修正される傾向がある。米国の景気懸念や地政学リスクなど不確実性は高いが、近年の修正パターンを踏まえると、2022年度は最終的にコロナ前の2019年度の投資水準を回復する見込みである。

(2)北陸地域の2022年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比23.4%増と4年ぶりの増加となる。

 製造業は、34.1%増と4年ぶりの増加となる。業種別にみると、電子部品や半導体関連で旺盛な需要に対応するための増産投資がある「電気機械」(34.4%増)、生産設備の増強や合理化投資、新事業のための設備新設等がある「その他製造業」(81.4%増)、自動車の電動化への対応投資等がある「一般機械」(30.1%増)、建材や自動車向けで能力増強投資がある「金属製品」(54.5%増)、自動車向けの設備新設等がある「非鉄金属」(38.5%増)など幅広い業種で増加する。

 非製造業(除く電力)は、12.0%減と4年連続の減少となる。業種別にみると、主要設備の整備や更新がある「ガス」(132.4%増)などが増加するものの、光通信関連の増強工事等が一服する「通信・情報」(32.4%減)、前年に地域拠点整備に関連した店舗建設工事等が活発だった「不動産」(31.2%減)などが減少する。

図表1 全国と北陸地域の設備投資動向(2022年度計画)

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3.富山県の設備投資動向

(1)富山県の2021年度実績

 全産業(除く電力)は、前年度比20.9%減と2年連続の減少となった。

 製造業は、9.1%減と2年連続の減少となった。業種別では、自動車向け部品等の需要増に対応する投資があった「金属製品」(62.0%増)、生産設備新設があった「化学」(8.8%増)などが増加したものの、自動車向け工場投資が一巡した「輸送用機械」(85.7%減)、生産設備の増強や合理化投資が一服した「電気機械」(22.4%減)などが減少した。

 非製造業(除く電力)は、46.9%減と2年連続の減少となった。業種別では、前年に放送設備の新設や更新投資があった「通信・情報」(74.1%減)、商業施設の改装などが一巡した「不動産」(49.8%減)、設備投資の抑制等がみられた「運輸」(26.4%減)などが減少した。

(2)富山県の2022年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比38.8%増と3年ぶりの増加となる。

 製造業は、41.9%増と3年ぶりの増加となる。業種別では、生産設備の増強や合理化投資がある「その他製造業」(84.8%増)、電子部品等の生産設備や脱炭素に向けた投資がある「電気機械」(80.9%増)、自動車向け部品等の生産能力増強投資がある「一般機械」(35.9%増)及び「金属製品」(62.0%増)などが増加する。

 非製造業(除く電力)は、26.7%増と3年ぶりの増加となる。業種別では、前年に駅前商業施設の投資が一段落した「不動産」(54.1%減)などが減少するものの、新規顧客向け導管及び幹線整備がある「ガス」(138.2%増)、店舗の新設がある「卸売・小売」(139.2%増)などが増加する。

 富山県の2022年度計画は、製造業を中心に幅広い業種で投資が回復し、全産業(除く電力)は、3年ぶりの増加となる。

 一方、2.(1)で述べたように、コロナ禍や資源価格高騰、円安など、依然としてリスク要因は多く、今後の動向については注視が必要である。

図表2 富山県の設備投資動向(2021年度実績、2022年度計画)

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4.富山県の設備投資の特徴

 富山県は日本海側有数の工業集積を誇り、富山県の2021年度設備投資実績に占める製造業のウエイトは79.6%と、全国(37.7%)を大きく上回っている。

 そこで、2013年度以降の10年間における富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移をみると、2014年度に二桁の伸びを示して以降、年度によって顔ぶれに違いはあるものの、化学(含む医薬品)や一般機械、金属製品、非鉄金属、電気機械など、歴史的に富山県で集積が進んだ業種を中心に、好調な需要を背景とする能力増強などの活発な投資が行われ、全体の伸びを牽引してきたと言えよう。

 2018年度は電気機械の大幅反動減を主因に5年振りの減少となったが、2019年度は輸送用機械や食品の大型投資が寄与し、増加に転じた。2020年度は景気悪化による投資の先送りなどにより、幅広い業種で減少となり、2021年度はコロナ禍の長期化や原油価格高騰など情勢の不透明感が影響し、2年連続の減少となった。2022年度は自動車電動化などの需要を捉えた投資が計画され、投資意欲が回復している。半導体不足や原油価格高騰、中国ロックダウンの影響等により自動車の供給制約は回復途上であるものの、新規自動車販売においてEVやHVなどが伸長しており、対応する部材等の生産を富山県など北陸地域の企業や生産拠点が支えていると考えられる。

図表3 富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移

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5.(付論)富山型ワーケーションのあり方について
~域外人材のナレッジを積極的に活用しよう~

 人口減少時代においては、地域経済を維持・拡大していくためには、域内のリソースのみならず、域外の人材にも目を向け、彼らが持つナレッジ(価値観・ノウハウ・アイディア・技術など)をシェアし、多様な視点を地域に落とし込むことが重要である。4.で述べたように、富山県は製造業のウエイトが高く、産業構造のうえでは必ずしも多様な人的基盤があるとは言えないことから、人材シェアによる地域経済の持続的成長力の向上が急務である。

 DBJ富山事務所が2022年7月に発表したレポート「富山型ワーケーションのあり方について~域外人材のナレッジを積極的に活用しよう~」では、域外人材のナレッジを活用する、課題解決型ワーケーションのあり方について考察した。富山県経済を考えるうえの、一つの参考として、以下に要旨を記す。

(1)第3次富山県観光振興戦略プラン

 2022年3月に策定された第3次富山県観光振興戦略プランに掲げられているビジネス観光は、域外需要の獲得のみならず、人材シェアによって域外のナレッジを地域や企業活動に落とし込み内在的・自立的発展に結び付けるための有効な手段である。

(2)富山が目指すべきワーケーション

 自然環境や農林水産物、文化や歴史などの一般的な地域資源と同様に、地域課題も観光資源として捉えることは可能であり、現に、地域課題で人を惹きつけている事例も生まれつつある。

 地域課題解決型ワーケーションは一般のワーケーションで得られる域外需要に加え、ナレッジを呼び込むことで、地域や企業活動の課題解決を図り、地域の経済基盤(経済循環)そのものを強く大きくすることができる。かかる取組みは、ウェルビーイングの基盤強化にもつながるであろう。

 富山が目指すべきワーケーションは、幸せ人口1000万を実現する、そしてそれを活用する人材活用型の取組みである。また、こうした取組みを続けていくことで、二拠点居住や、将来的な移住が期待できることになる。

図表4 ワーケーションの意義(比較)

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図表5 富山が目指すべきワーケーション(イメージ)

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(3)富山型ワーケーションのあり方

 地域課題の解決はウェルビーイングの基盤強化につながるとともに、富山県における観光の高付加価値化に加え、富山県の地域経済の拡大にも寄与する。

 「幸せ人口1000万」を実現し、選ばれ続ける観光地となるためには、富山の良さだけでなく、課題や目指したい未来の姿を明らかにすることで人材シェアを進め、人と経済の好循環を生み出すようなワーケーションに取り組むことが重要である。

図表6 マズローの欲求5段階説と富山型ワーケーション(イメージ)

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  1. 本稿で示された意見は筆者のものであり、DBJの公式見解ではありません。
  2. 本稿で使用したデータは、DBJの地域別設備投資計画調査によるものです。詳細はDBJのホームページ(https://www.dbj.jp/investigate/equip/regional/detail.html)をご参照ください。
  3. DBJは、上記調査と同時に、資本金10億円以上の民間企業を対象とした全国設備投資計画調査も行っています。詳細はDBJのホームページ(https://www.dbj.jp/investigate/equip/national/detail.html)をご参照ください。
  4. レポート「富山型ワーケーションのあり方について~域外人材のナレッジを積極的に活用しよう~」の詳細はDBJのホームページ(https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/a8ba9303916b82b413f0f1edc5c9167c.pdf)をご参照ください。

 

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

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