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更新日:2023年1月19日
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日本銀行富山事務所長
田中 英敬
富山県の景気は、基調としては持ち直しています。
個人消費については、新型コロナの感染予防と社会経済活動の両立が進むなかで、人流が増加していることから、小売や飲食・宿泊等の対面型サービスを中心に持ち直しの動きがみられています。設備投資は、能力増強、省力化・合理化、環境対応投資をしっかり行っていくスタンスが堅持されており、増加しています。生産については、依然として内外の供給制約の影響が残存しており、業種によって区々ですが、全体としてはこれまでの持ち直しの動きが一服しています。この間、企業の業況感は、達観すれば横這い圏内の動きとなっています。有効求人倍率は引き続き緩やかに回復しています。
先行きは、新型コロナ感染症が人流に及ぼす影響が和らぐとともに、内外の供給制約が緩和するものとみられ、全体として持ち直しの動きが広がっていくものと見込まれます。もっとも、世界経済の成長鈍化が予想されていることや、既往の原材料・燃料費価格上昇の影響が今後顕現化する可能性があり、引き続き情勢を注視する必要があります。
富山県の個人消費は、引き続き持ち直しの動きがみられています。3月に公衆衛生上の措置が解除されてから、外出・旅行する人が増え、人の流れが増加しています。夏には新型コロナ感染の第7波や大雨等の被害の影響もありましたが、基本的には人流の回復傾向が続いています。年末年始の帰省客も前年を上回りました。このため、小売や飲食・宿泊等の対面型サービスでは持ち直しの動きが広がっています。
小売6業態(百貨店、スーパー、コンビニ、家電専門店、ドラッグストア、ホームセンター)の売上げ(前年比)をみると、引き続き持ち直しの動きがみられます。百貨店・スーパーの売上げは、催事が好調で客足が増加していることから、全体として持ち直しの動きが続いています。日用品を中心に消費者物価の上昇から節約志向が強まったとの声も一部で聞かれますが、全体として一段と消費を下押しする様子はみられないようです。家電販売は、全体として横這いの動きが続いていますが、節電効果の高いエアコンや冷蔵庫等で動意がみられています。ドラッグストアは、新規出店効果から前年比プラスが続いています。
新車販売は、昨年前半は前年比マイナスが続いていましたが、9月以降、前年比プラスで推移しています。低水準だった前年の反動が主因ですが、自動車メーカーの減産が緩和されつつあることから納車の遅れが改善していることも寄与しています。この間、消費者の需要は引き続き旺盛で、受注残も多く、今後は生産の回復とともに登録台数の持ち直しが続くことが見込まれます。
県内の延べ宿泊者数は、昨年10月に全国旅行支援が開始した効果もあって、持ち直しています。県内の観光施設への入り込みも例年並みにまで持ち直しています。今後、全国旅行支援の効果が続くと見込まれることから、持ち直しが続くものと見込まれます。
設備投資は、増加しています。県内企業の2022年度の設備投資(全産業)は、2年連続のプラスの計画となっています。能力増強、省力化・合理化、環境対応投資をしっかり行っていくスタンスが堅持されています。
企業の生産動向については、持ち直しの動きが一服しています。業種別にみると、汎用・生産用・業務用機械は、受注が順調にも拘わらず、これまで部品調達が滞って生産を抑制せざるを得ない状況でしたが、このところこうした制約が緩和していることから、生産は増加しています。電気機械は、車載向け、スマートフォン向け部品が内外の供給制約の影響もあってやや弱めの動きとなっています。医薬品は横這い圏内の動きとなっています。
県内の有効求人倍率(受理地ベース)は、引き続き緩やかに回復しています。
短観(2022年12月調査)の富山県分の集計結果(https://www3.boj.or.jp/toyama/pdf/2212tankan.pdf)をみると、企業活動の全体感を示す業況判断DI(富山県・全産業)は、前回9月調査の▲4から▲3へと改善しました。先行きは横這いとなる見通しです。
このうち製造業は、前回調査の+4から▲12に悪化しました。既往の原材料コスト高の価格転嫁が実現したと好感する先が一部にみられる一方、期待ほどの転嫁が難しく採算が悪化していると訴える声が多く聞かれました。先行きも価格転嫁進捗への期待と懸念が入り混じり、業況改善の重石となっています。この間、足元は、自動車生産の回復が後ずれしていることから、関連需要の下振れによる業況悪化を指摘する先がみられますが、先行きは改善する見通しです。
非製造業は、前回調査の▲10から+5に改善しました。新型コロナ感染にかかる行動制限が緩和していることから、小売、宿泊・飲食、不動産などで需要が持ち直していることや、サプライチェーンの混乱による製商品の納期遅延が一部解消していることが、業況改善につながりました。先行きは、引き続き需要の回復が続くとの見通しから判断を改善させる先がみられる一方、海外情勢の不透明感等から判断を悪化させる先が少なくなく、全体では悪化する見通しです。
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