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更新日:2024年5月16日

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米国オレゴン州の経済状況について

富山県オレゴン州派遣職員 村上 理沙

1 はじめに

 富山県の友好提携先であるオレゴン州は、アメリカ合衆国北西部に位置し、北はワシントン州、南はカリフォルニア州及びネバダ州、東はアイダホ州と接し、西は太平洋に臨んでいます。人口は約424万人(2022年)、面積は、富山県の約60倍の254,805㎢で海も山も砂漠地帯もあり、非常に自然豊かで変化に富んだ美しい景観に恵まれた地域となっています。
 本稿では、オレゴン州経済について触れた後、実際に現地で生活してみての肌感覚での現地情報を紹介したいと思います。

2 オレゴン州経済概要

 2023年のオレゴン州の名目GDP(速報値)は2,601億ドルで、アメリカ合衆国の名目GDP(22兆3,769億ドル)の1.16%に相当し、全米50州の中で中位に位置します。1人当たり個人所得は6万1,596ドルで、全米平均の6万4,143ドルよりわずかに低く、25位となっています。失業率はパンデミックによる景気後退により7人に1人の雇用が2カ月で失われ、2020年4月に過去最高の13.3%を記録したものの、その後の急速な雇用回復及び労働力人口が過去最高水準に成長し、労働参加率が上昇するにつれて、失業率は改善し2023年11月では3.6%と過去最低に近い水準になっています。

3 オレゴン州の産業

 オレゴン州は、森林面積が州面積の約半分を占めることもあり、伝統的に林業が盛んです。州の木材(特に針葉樹)生産高は全米の約2割を占めており、その中でもクリスマスツリーの生産高は全米1位となっています。ほかにも、大自然や気候的な条件に恵まれているため、小麦、野菜、果実、牧草種子、花卉などの農業や畜産が盛んに行われ、林業に次ぐ重要産業となっています。オレゴン州が生産高で全米上位を占める農産物には、ヘーゼルナッツ、ブラックベリー・ブルーベリーなどベリー類、洋ナシ、牧草などの種子、クリスマスツリー、タマネギ、ジャガイモ、ワイン用ブドウ、ホップなどがあります。
 製造業では、かつては林業関連の製材や紙パルプなどが主流でしたが、1980年代より半導体を中心とするハイテク関連産業が急成長し、ポートランド市西方のヒルズボロ市とその周辺の地域には、世界的な半導体メーカーのインテルが最大の研究・開発拠点を有し、関連分野の新興企業群とも合わせてシリコンフォレストと呼ばれる一大ハイテク産業集積拠点を形成しています。シリコンフォレスト全体の半導体関連労働者人口は約4万人(うち、半数以上がインテル雇用)で、現在、ハイテク産業はオレゴンの輸出総額の3分の1を占める州内最大の産業となっています。最近ではバイデン政権によるCHIPS法※(正式名称:CHIPS and Science Act)可決により、米国内における半導体製造に対する歴史的な資金投入が行われていますが、オレゴン州も最重点地域の一つに選定され、昨年よりOregon CHIPS Fund(半導体製造企業に対するオレゴン州の新しい研究開発税額控除のプログラム)が開始され、新規事業投資に対する固定資産税控除や所得税の払い戻しなどの大幅な優遇措置が実施されています。また、インテルがCHIPS法の支援に基づき、オレゴン州にある技術開発施設を拡張する大規模投資計画を発表し、この投資により州内では数千人の新規常用雇用および建設雇用を創出する見込みといわれており、今後ハイテク産業がますます活性化することが予想されます。
 このほか、ナイキ、アディダスの北米本社、コロンビアスポーツウェア、KEENなど複数の世界的なスポーツメーカーがオレゴン州に世界本社を構えており、アウトドア・スポーツギア/アパレルもオレゴン州の主要産業となっています。

※CHIPS法:アメリカの半導体産業の発展を促進し、国内での半導体生産の拡大を支援することを目的として成立した法律。地政学的リスクや半導体不足によるサプライチェーン寸断に備えることを目指している。

4 日本とオレゴン州の経済でのつながり

<貿易>

 オレゴン州は、全米内で最も貿易に依存している州の一つで、日本はオレゴン州にとって輸出では第6位、輸入では第2位の重要な貿易相手国です。2023年のオレゴン州からの対日輸出額は約12億ドルで、主な対日輸出産品は、農林水産物(主に小麦)が最大で、機械類、化学製品が次いでいます。農産品輸出については20%が日本向けで、カナダ向け(18%)や中国向け(9%)を引き離して最大となっています。
 2023年の日本からオレゴン州への輸入額は32億ドルで、おもな輸入産品は輸送機器(主に自動車)、機械類で、特にオレゴンへの輸送機器の輸入額の60%を占めています。
 貿易港の話をすると、オレゴン州のポートランド港は対日輸出の面からは、州内外で生産された小麦が集積され、日本の小麦消費量の約4割(輸入麦だと約5割)を輸出(船積み)する重要な拠点となっています。また、対日輸入の面からは、日本からの自動車(部品含む)陸揚げ港として、米国内では、ロサンゼルス港(カリフォルニア州)、ジャクソンビル港(フロリダ州)、ニューアーク港(ニュージャージー州)に次ぐ規模となっています。

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<日系進出企業>

 オレゴン州における最大の直接投資国は日本で、州内には、約160社の日系企業が進出しており、約1万人の現地雇用に貢献しています。戦後1950年代より小麦や木材輸出業務のために日本の商社が進出し、1980年代中頃以降にはインテルがオレゴンに最大の研究・開発拠点を有していることから、半導体関連企業等も多く進出をはじめ、さらには、米国西海岸他州に比べ優良で安価な電力・水・労働力を求め、食品関係企業も進出しています。業種別割合をみると、製造業(Ex.日立、東京エレクトロン、味の素、ヤマサ、明治、カルビー、St.Cousairなど)が37%、商業(Ex.双日、丸紅、伊藤忠など)が30%、サービス業・運送業・その他(Ex.ヤマト、無印良品など)が33%となっています。

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5 オレゴン州ポートランドでの生活情報

 アメリカに住んで僅か1年、また現地の企業で雇用されているわけでもないため、私自身がアメリカ経済の堅調な成長を実際に感じているかというと、そうではないのが実情です。ここからは一般生活者としての目線からのオレゴン州(特にポートランド市)で気づくことについて記載したいと思います。

<ローカルファースト>

 ポートランド市は人口当たりのレストラン数が多く、そのジャンルもアメリカ、アジア、地中海、アフリカなど多岐に渡ることからfoodie(食通)の街とよばれています。しかし、飲食店が多いにもかかわらず、マクドナルドやバーガーキングなどのチェーン店やファストフード店がほとんどありません。住民の多くが、地元の作り手が分かる食材を調理し、美味しく家族や友人と一緒に心地よく食べることがポートランドでは文化として広く根付いているからです。シェフたちも地元の生産者と連携し、新鮮かつ安全で美味しい食材を届ける体制を構築しています。また、オレゴンのキーワードとしてよく聞かれるのが「クラフトビール」や「コーヒー」。ポートランド市内でもそれぞれ70以上ものブリュワリーやカフェがあり、オレゴン州内ともなるとその数は数百にも及びます。それぞれが個性的で情熱をもって自分たちの納得いくものを作り出しているわけですが、お互い敵対するのではなく、設備やレシピを共有しているという話を伺い驚いたのを覚えています。一見ライバルと思える関係でも、そうではなく一緒に業界のマスを拡げる共存共栄文化があるようです。
 レストラン、ブリュワリー、カフェを例に出しましたが、オレゴン州は個人経営の地元密着型事業が多く、スモールビジネスが80%を占めています。そういう土壌もあり買い手、作り手のそれぞれに「地産地消」「ローカルファースト」の考えが根付いており、地元のものだったら応援したい!と地元で生産されたものを積極的に買い、地元の食材を使った店に足を運びます。他にも、街のあちこちでファーマーズマーケットやアートマーケットが開催されており、小さなローカルビジネスオーナーと消費者をつなげるサポートとなっています。このようにコミュニティの生業を維持する好循環システムが機能しているのがオレゴンの特徴の一つだったのですが、近年はパンデミック、物価高騰、人手不足のため残念ながらクローズを余儀なくされるビジネスも多く見受けられます。

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<物価高>

 米国労働省が4月10日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比3.5%となかなか物価上昇が落ち着きません。一般的な価格帯のスーパーで、卵1パック(12個入り)がセール価格で5.49ドル~9.99ドル、シリアルが5ドルもします。
 外食となるとカフェでコーヒー(ラテ)をたのむと一番小さいサイズ(約350ml)で5ドル、レストランでは、ディナーだとサラダが15ドル、パスタが20ドルを超えている状態で、こちらにチップ(チップもミニマム18%~に値上げしています)がつくのでさらに20%くらい高くなります。
 イギリスの経済専門誌「The Economist」が発表した2024年1月時点でのビッグマック指数によると、アメリカのビッグマックは1個$5.69=900円です(※4/26時点 1ドル=158円)。日本のビッグマック価格は450円となっており、アメリカが日本の2倍となっています。
 高くて外食は控えているという方もたくさんいる一方、不思議なことに、レストランは常に満席で予約をしないと入れないところもたくさんあります。物価上昇に伴いアメリカ人の所得も上がっているため、こちらの方々は生活に苦しんでいるのか、はたまたバブルなのかよくわからない状態です。

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<街の様子(ポートランドダウンタウン)>

 「アメリカで最も住みたい街」「サステナブルな街」などランキングの常連だったポートランドですが、パンデミックやBlack Lives Matterによる暴動の打撃が今も爪痕を残しているのが現状です。ダウンタウンで働いていると、お昼時にランチに行くオフィスワーカーが少ないなと感じます。また、オフィスが入居するビルの空室が多いことに驚かされます。パンデミックで多くの企業がリモートワークやハイブリッド(週に2~3日の出社、あとは在宅勤務)に切り替えたため、小さいオフィスへの移転や、オフィス自体を売却してしまう企業も多く、コロナ前のようなレベルまでオフィスワーカーがもう戻らないのです。
 不動産会社コリアーズのレポートによると、ポートランドの中央ビジネス地区のオフィス空室率は、2023年末までに30.2%に達し、国内の50のダウンタウンのオフィス市場の中で最悪のオフィス空室率を記録しました。その結果、レストランや小売店の顧客が減少し、店の売り上げも減り、営業を続けることが難しくなった店舗も多く、街には「For Lease(借主募集)」と書かれた空き店舗が目立ちます。
 また、小売店の撤退のもうひとつの大きな理由として、治安の悪化が挙げられます。万引き、落書きのほか、数回にわたる店舗のガラスの損壊などのため、ベニヤ板で養生を行っている跡が今でも多数見受けられます。
 ダウンタウンへの人の流れの減少・治安悪化→店舗のクローズ→街の活気の消失→さらなる人の減少、という負のループに陥っているのが現在のポートランドダウンタウンの状態です。
 最近は、中心部の再生のために様々なイベントが企画され、以前と比べると人が増えているようですし、観光客も少しずつ戻ってきています。とはいえ、ポートランドの中心部がかつての賑わいを取り戻すにはまだまだ時間がかかりそうです。

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6 おわりに

 本稿ではオレゴン州の経済概況と筆者が一般生活者目線で気づくことについて紹介させていただきました。オレゴン州全体でみると、経済は多様な産業に支えられており、特に伝統的な農業や林業に加え、最近ではテック企業などの技術産業の台頭も見られ、持続可能な成長が期待されています。一方、身近な生活圏の話をすると、パンデミックによる影響や、社会的不安定要素の増加、インフレなどの社会情勢などが複合的に作用し、ダウンタウンの賑わい低下や治安悪化などの問題も抱えています。オレゴン州がこれまでにも様々な困難を乗り越えてきたように、地域社会の連帯と協力により、今後どのように課題解決し、発展していくのか、これからも注視していきたいと思います。

<参考資料・ウェブサイト>

・オレゴン州政府Oregon Blue Book
https://sos.oregon.gov/blue-book/Pages/facts-economy.aspx

・州別GDP / U.S. Bureau of Economic Analysis
GDP by State U.S. Bureau of Economic Analysis (BEA)

・1人当たり個人所得 / State of Oregon Employment Department
Per Capita Personal Income in Oregon’s Counties - Per Capita Personal Income in Oregon’s Counties - QualityInfo

・失業率 / USA facts
オレゴン州経済の統計とデータ動向:GDPランキング、失業率、経済成長率USAファクト (usafacts.org)

・農業統計 / Oregon Department of Agriculture
facts_and_figures.pdf (usda.gov)

・インテルによる大規模投資計画について / Business Oregon
Intel and U.S. Department of Commerce Announce Unprecedented Investment in Oregon.pdf

・Oregon CHIPS Fund / Business Oregon
ビジネスオレゴン州 : Oregon Semiconductor and the CHIPs Act : Oregon Semiconductor and the CHIPS Act : オレゴン州

・オレゴン州コンピューター・エレクトロニクス産業概要 / Greater Portland
Computers and Electronics in Greater Portland (greaterportlandinc.com)

・国際貿易額 / International Trade Administration
TradeStats Express - State Trade by Product

・海外直接投資 / Select USA U.S. Department of Commerce
Foreign Direct Investment: Oregon (trade.gov)

・米国消費者物価指数上昇率 / JETRO
3月の米消費者物価指数、上昇率の伸び加速、利下げの後ずれ可能性高まる(米国)ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

・ダウンタウンオフィス空室率 / The Oregonian
Downtown Portland’s office vacancy rate is highest in the nation, report says - oregonlive.com

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

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