更新日:2023年9月15日

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富山県の景気動向について

日本銀行富山事務所長

田中 英敬

1.はじめに

 富山県の景気は、持ち直しています。
 個人消費については、新型コロナ感染症の感染症法上の区分が5類に変更されたことなどから、外出・旅行する人は着実に増えており、飲食・宿泊等の対面型サービスを中心に着実に持ち直しています。もっとも、販売価格上昇等を背景にした消費者の生活防衛的な動きの強まりを指摘する声も一部に聞かれています。設備投資は、能力増強、省力化・合理化投資が計画されているほか、環境関連の投資意欲も旺盛であり、増加しています。生産については、中国の景気減速や世界的なIT関連財の在庫調整の影響などから、弱含んでいます。この間、企業の業況感は、改善しています。有効求人倍率は、高水準で推移しています。

 先行きは、半導体などの供給制約が緩和しつつあることや、人流の回復が続く中で個人消費を中心に需要の持ち直し傾向が続いていることから、昨年春から続く持ち直しの地合いが続くと見込まれます。もっとも、中国を始め世界経済の成長が鈍化していることや、物価上昇が続くなかでの個人消費への影響、各所で指摘されている人手不足の影響など、引き続き情勢を注視する必要があります。

2.主要項目の動き

(1)個人消費

 富山県の個人消費は、着実に持ち直しています。今年の春から新型コロナ感染症の感染症法上の区分が5類に変更されたことなどから、外出・旅行する人は着実に増えており、飲食・宿泊等の対面型サービスを中心に着実に持ち直しています。もっとも、販売価格上昇等を背景にした消費者の生活防衛的な動きの強まりを指摘する声が一部に聞かれています。

(小売6業態の売上高)

 小売6業態(百貨店、スーパー、コンビニ、家電専門店、ドラッグストア、ホームセンター)の売上げ(前年比)は、全体では着実に持ち直しています。百貨店・スーパーの売上げは、人の流れの回復や今夏の猛暑に伴う関連商品の需要増加を背景に、衣料品や身の回り品、雑貨の売上が増加しているほか、食料品や日用品についても値上げによる客単価の上昇等もあって増加しています。もっとも、値上げや猛暑によって来店客数や買上げ点数が減少しているとの声が一部に聞かれています。家電販売は、全体として横這いの動きが続いていましたが、足もと、今夏の猛暑によってエアコンの買い替え需要が増加しており、前年比プラスに転じています。ドラッグストアは、新規出店効果から前年比プラスが続いています。

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(新車販売)

 乗用車の新車販売は、昨年9月以降、前年比プラスが続いています。半導体不足などの供給制約の緩和を背景に、自動車生産が増加していることから、これまでの受注残を解消する形で、新車販売が押し上げられています。先行きは、高水準の受注残を抱えていることから、新車販売の回復が続く見通しです。

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(宿泊者数)

 県内の延べ宿泊者数は、新型コロナ感染症による行動制限が解除されてから、全国旅行支援の押し上げ効果もあって、着実に持ち直しています。直近(2023/4-6月)の宿泊者数は月当たり34.3万人と、コロナ前の同期間の水準(33.9万人)をわずかですが上回りました。今夏は帰省客・個人客を中心に好調な入れ込みがみられたようですが、全国旅行支援の規模が縮小していることや大雨や台風の影響もあって予想を下回ったとの声も聞かれています。この間、インバウンド観光客は着実に増加しており、宿泊者数全体の伸びに貢献しています。

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(2)設備投資

 設備投資は、増加しています。県内企業の設備投資計画は、内外需要の見通しや採算状況の不透明感から、投資の実行タイミングを慎重に判断するとの企業があり、全体に投資実行が後ずれ気味になっています。この結果、2022年度の設備投資は、当初の増加計画が下方修正された結果、前年比▲8.6%のマイナスとなりました。ただし、引き続き能増・省力化投資が計画されているほか、EV(電気自動車)向けの新規投資に踏み切る先が増えているなど、脱炭素・環境対応の投資意欲は旺盛です。このため、2023年度の設備投資は前年比+16.9%の増加計画となっています。

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(3)生産

 企業の生産動向については、弱含んでいます。業種別にみると、電気機械は、スマートフォン・PC向けの需要が弱く、低水準で横這い圏内の動きとなっています。汎用・生産用・業務用機械は、中国の景気減速や世界的なメモリ分野の在庫調整の影響を受けて、このところ増勢が鈍化しています。金属製品は、住宅着工の減少を背景に需要が減少しており、弱めの動きとなっています。医薬品を中心とする化学は、横ばい圏内の動きとなっています。

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3.その他経済指標の動向

(1)労働需給

 県内の有効求人倍率(受理地ベース)は、製造業を中心に新規求人の減少等からこのところやや低下していますが、全体としては高水準で推移しています。

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(2)企業の業況感

 短観(2023年6月調査)の富山県分の集計結果
https://www3.boj.or.jp/toyama/pdf/2306tankan.pdf)をみると、企業活動の全体感を示す業況判断DI(富山県・全産業)は、前回調査の▲2から0に改善しました(3期連続の改善)。製造業では、自動車生産の上振れや価格転嫁の進捗を理由に判断を好転させる先がみられます。非製造業でも、経済活動の正常化が進むにつれて個人消費や派生需要の恩恵を受ける先が増えています。
 なお、短観の次回調査(2023年9月)は10月2日に公表します。

業況判断(短観〈富山県分〉)

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(出所)日本銀行金沢支店、富山事務所

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

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