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更新日:2024年6月17日

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富山の「食」のブランディングに向けて
~料理人や生産者を通じて見出される地域の魅力~

株式会社日本政策投資銀行 富山事務所長 田中 悟史
富山事務所副調査役 吉田 志穂

 (株)日本政策投資銀行(DBJ)富山事務所は2024年4月に(株)富山銀行と共同で、「富山の『食』のブランディングに向けて」と題した調査レポートを発行しました。
 近年、インバウンド需要の増加や「食」への関心の高まりを受け、ガストロノミーツーリズムなど、「食」の背景にある地域固有の資源や歴史文化に触れる体験を提供することで地域のブランド力を高め、継続的な誘客や関係人口の拡大に繋げる動きがみられます。
 当レポートでは、「食」のブランディングに向けて重要と考えられる、⓵食材・生産者、⓶シェフ・料理人、⓷地域特性(文化的、自然科学的な背景)の各要素について、富山県の優位性や課題を文献調査・ヒアリング等により確認し、「食」を通じた関係人口拡大に向けたブランディングの方策や今後必要となる取り組みについて考察しています。
 本稿では以下にその要旨を記します。

1. 観光動向と「食」への関心の高まり

 コロナ禍が収束し観光需要の着実な回復がみられる中、観光消費額に占める飲食関連の支出は2割程度と宿泊費に次ぐ支出項目となっている(図表1)。日本政府観光局が行った調査によると、外国人旅行者の旅行目的として「美食・ガストロノミー」を選択した回答は最も多く、5割超が旅行先で「その土地ならではの料理」を体験したいと答えており、「食体験」の優劣が旅行先の選別において重要な要素となっている。

図表1 日本人及び訪日外国人の旅行消費額の内訳(2023年)
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2. 富山県ならではの資源とそれに裏打ちされた豊かさの考察

 富山県の資源を分析するに当たっては、「食」のブランディングに深く関係する、⓵食材・生産者と⓶シェフ・料理人、さらにストーリー性を与える文化的、自然科学的な背景等の⓷地域特性の各要素を中心に考察を行った。

・文献調査:富山の食材

 富山県の食材は、海産物やジビエ等、高品質で多様な品目が比較的近距離の間に立地しており、また、昆布巻きやにしんの糀漬け等、食材を活かした伝統的な郷土料理を育んできた食文化にも、富山県ならではの特徴があると考えられる。
 しかしながら、多様な資源がある一方で、富山県の野菜の農業産出額は全都道府県中最下位である。そして、その大半は米が占め、米の生産額に応じて県全体の生産額も変動する状況にある。今後はその他の産品についても取り組みを進めることで、安定性を高めていくことも必要と考えられる。
 また、経営面については改善傾向が見られるものの、経営体当たりの生産額は全国値に比べ少ない。ブランディングの推進と併せて、県内農産物の付加価値向上を図るなど、取り組みを深化させることで、幅広い層への波及効果を高めていくことが期待される。

・ヒアリング調査(有識者・県内事業者):富山の豊かさの魅力・強み

 食材・生産者、シェフ・料理人、地域特性の各要素について、知見のある有識者や、県内事業者にヒアリング調査を実施した。調査はオンライン及び現地往訪により行っている。
 調査の結果、「食」に関わる富山の豊かさの魅力・強みは、⓵食材が新鮮でバリエーション豊かであること⓶優れた料理人の存在と料理人同士の連携やネットワーク⓷水が上質である事に加え、多様な精神風土や魅力ある食器等を生み出す伝統工芸との連携が、富山の「食」にストーリーを持たせ芸術性を高めていること、などがあげられる。そしてそれら3つの主要な要素が相互に連携しあい、誘客から経済効果につながると同時に、地域内部における価値の気づき・再発見につながることで、地域が活性化するという流れが出てきていることが確認できた(図表2)。

図表2 ヒアリング結果:「食」に関わる富山県の豊かさの魅力・強み

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・ヒアリング調査(有識者・県内事業者):富山の豊かさの課題

 「食」に関わる富山の豊かさは前述した魅力・強みがある一方で、⓵生産者、料理人の付加価値向上への意識の温度差やなり手不足、⓶シェフ・料理人の連携が個のネットワークによる側面が強いこと、⓷ジオストーリー等への意識のばらつき、後継者やストーリーテラーの不足、といった課題も確認された。また、3つの主要な要素による相互の連携は魅力・強みであるものの、富山ならではの魅力として認識されているものは「点」となってしまっており、継続性や富山県全体への面的な展開に課題があることも見えてきた(図表3)。
 また、地域がみずからの売りを意識するとともに、関係者が共有しながら、継続性をもって富山県全体への面的展開を図っていくことで、より多彩な富山の魅力が活かされていく可能性について、示唆を受けた。

図表3 ヒアリング結果:「食」に関わる富山県の豊かさの課題

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・具体的な取り組み検討に向けた事例調査

 富山県のブランディングに向けた今後の方策検討において参考となる具体的な取り組み等について示唆を得るため、全国の事例について調査を行った(図表4)。
 調査は文献調査を主として、臼杵市の取り組みについては現地でヒアリング調査も行っている。

図表4 事例調査対象地一覧

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 後述する方策と併せて、各事例における具体的な取り組みや想定される効果を整理すると以下の通りになる(図表5)。

図表5 事例調査:今後必要な取り組み、効果等

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3. 豊かさを活かしたブランディングへ向けた方策の検討

 文献調査及び、ヒアリング調査結果をもとに、内部環境(強み、弱み)及び外部環境(機会、脅威)をまとめると次のように表される(図表6)

図表6 富山県の「食」に係るSWOT分析

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 前述した分析に基づき、クロスSWOT分析を行い、今後に向けた4つの方策を抽出した(図表7)。

図表7 富山の「食」のブランディングに向けたクロスSWOT分析

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 また、事例調査等を踏まえ、4つの方策案別に具体的な取り組み例について検討を行った(図表8)。これらの取り組みは相互に関連するものであることから、一体的に取り組むことが望まれる。

図表8 方策案別の取り組み例

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 最後に、富山の「食」のブランディングに向けて、主体別の取り組み例を検討した(図表9)。4つの方策を推進していくためには、地域の主体がこれら方策を共有し、適切な役割分担の下に連携しつつそれぞれの取り組みを実施することが期待される。
 これらの結果として、県全体での一体的なブランディングが可能となり、誘客につながると共に、結果として地域文化の見直しや価値の再確認等、地域活性化につながると考えられる。
 また、ブランディングを誘客につなげるには、各主体の取り組みや富山の魅力等を多言語を含め分かりやすく伝えることも不可欠であり、各主体が積極的に情報発信にも取り組むことも期待される。

図表9 ブランディングを支える主体別の取り組み例

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  1. 本稿で示された意見は筆者のものであり、DBJの公式見解ではありません。
  2. レポート「富山の『食』のブランディングに向けて」の詳細はDBJのホームページをご参照ください。https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/f2bc76cb5e63abecff8632ad20d704bpdf
    (参考資料)他地域の事例https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/f1dc5c21b7429f17054b5d8af8780e09.pdf

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

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