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更新日:2025年9月16日

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DBJ設備投資計画調査からみた富山県経済の状況(特別調査)企業行動に関する北陸企業の意識調査

株式会社日本政策投資銀行 富山事務所長 田中 悟史
富山事務所 遠藤 由梨奈

1.DBJ設備投資計画調査について

 株式会社日本政策投資銀行(DBJ)は、わが国、民間企業の設備投資動向を把握することを目的に、原則として、資本金1億円以上の民間企業(金融保険業などを除く)を対象に、設備投資額の実績、計画に関するアンケート調査を毎年実施している。
 本調査における設備投資額は、自社の有形固定資産に対する国内投資額であり、原則として建設仮勘定を含む有形固定資産の新規計上額(工事ベース)である。業種別では、原則として主業基準分類(企業の主たる事業に基づき分類)で集計している。なお、分析に際しては、地域特性をより明らかにすべく、投資額の大きい電力を除いて行った。
 また本調査は、本社所在地を問わず投資地点で集計している「属地主義」に特徴がある。すなわち、本調査における富山県の設備投資額とは、富山県に本社がある企業(県内企業)と富山県以外に本社がある企業(県外企業)を問わず、富山県へ投資があると回答のあった金額の合計値である。
 今回調査(2025年7月3日を期日)は、2024年度実績および2025年度計画などについて、全国5,238社から回答をいただいた(回答率57.3%)。うち本社所在地が富山県の企業は158社、富山県へ投資があると回答のあった企業は217社であった。
 以下では、全国と北陸地域(富山県、石川県、福井県)、富山県の順で調査結果を整理し、設備投資動向からみた富山県経済の状況について述べることとしたい。

2.全国と北陸地域の設備投資動向

(1)全国の2025年度計画

 全産業(除く電力)は、全国は4年連続の増加(15.0%増)となる。地域別では、全国10地域のうち北陸(53.6%増)を含む9地域が増加となり、1地域が減少となる。
 製造業は、全国は5年連続の増加(21.4%増)となる。全国10地域のうち北陸(59.5%増)を含む9地域が増加となり、1地域が減少となる。
 非製造業(除く電力)は、全国は4年連続の増加(11.3%増)となる。全国10地域のうち北陸(34.0%増)を含む9地域が増加となり、1地域が減少となる。

 なお、当年度中の計画値は、計画の見直しや精査、工期の遅れなどがあるため、実績に向けて下方修正される傾向がある。直近の修正パターンを踏まえると、2025年度は最終的に2~3%程度の伸びとなり、インフレの影響を除いた実質でも、コロナ前の2019年度の水準を上回って緩やかな増加が続くことが予想される。

(2)北陸地域の2025年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比53.6%増と増加に転じる。
 製造業は、59.5%増と増加に転じる。業種別にみると、省力化投資があった「鉄鋼」(18.5%減)などが減少するものの、複数の業種で前年度に予定していた設備投資が今年度見込まれており、半導体関連を中心に設備合理化に向けた投資が増加した「電気機械」(127.1%増)、自動車関連をはじめ工場新設等の能力増強投資が進む「金属製品」(63.1%増)、新技術獲得へ向けた研究開発投資や増産・合理化投資が進む「その他製造業」(58.4%増)などが増加する。
 非製造業(除く電力)は、34.0%増と増加に転じる。業種別にみると、システム導入等の設備投資剥落により「建設」(13.8%減)が減少するものの、環境関連の投資が継続する「サービス」(53.2%増)、物流拠点やインフラ設備への投資が進む「運輸」(28.3%増)、倉庫新設や店舗新装等がある「卸売・小売」(25.7%増)などが増加する。

図表1 全国と北陸地域の設備投資動向(2025年度計画)

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3.富山県の設備投資動向

(1)富山県の2024年度実績

 全産業(除く電力)は、前年度比5.1%減と3年ぶりの減少となった。
 製造業は、20.0%減と3年ぶりの減少となった。業種別にみると、省力化に向けた投資があった「電気機械」(25.3%増)などが増加したものの、一部本社機能移転にともなう投資が剥落した「金属製品」(48.0%減)、自動車部品向け能力増強投資が一服した「一般機械」(30.8%減)、設備投資の後ろ倒しがみられる医薬品分野を中心に「化学」(23.9%減)などが減少した。
 非製造業(除く電力)は、79.2%増と3年連続の増加となった。業種別にみると、前年度に放送設備の更新があった「通信・情報」(24.9%減)などが減少したものの、環境関連の設備投資がみられた「サービス」(167.5%増)、新店舗開業があった「卸売・小売」(244.8%増)などが増加した。

(2)富山県の2025年度計画

 全産業(除く電力)は、前年度比34.9%増と増加に転じる。
 製造業は、34.7%増と増加に転じる。業種別にみると、前年度に工場新設があった「非鉄金属」(54.3%減)、生産能力増強投資が一服する「輸送用機械」(52.1%減)などが減少するものの、自動車向け部品を中心に前年度後ろ倒しとなった能力増強投資がある「金属製品」(61.4%増)及び「一般機械」(69.6%増)、設備集約に向け生産合理化投資が進む「その他製造業」(40.8%増)などが増加する。
 非製造業(除く電力)は、35.3%増と4年連続の増加となる。業種別にみると、前年度に新店舗出店があった「卸売・小売」(17.7%減)が減少するものの、環境関連の投資が継続する「サービス」(62.9%増)、新車両の導入等が進む「運輸」(42.6%増)などが増加する。

 富山県の2025年度計画は、製造業では計画の後ろ倒しにより新工場建設が続く「金属製品」、「一般機械」等における自動車向け関連投資が増加を牽引しており、非製造業では環境関連投資が継続し、全産業(除く電力)は、増加に転じる。
 一方、2.(1)で述べたように、計画の見直しや精査、工期の遅れなどで、実績は計画を下回るケースが多い。米国の関税強化など不確実性が高まる中、マクロ経済の影響については、今後の動向に注視が必要である。

図表2 富山県の設備投資動向(2024年度実績、2025年度計画)

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4.富山県の設備投資の特徴

 富山県は日本海側有数の工業集積を誇り、富山県の2024年度設備投資実績に占める製造業のウエイトは85.0%と、全国(37.6%)を大きく上回っている。
 そこで、2016年度以降の10年間における富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移をみると、年度によって顔ぶれに違いはあるものの、化学(含む医薬品)や一般機械、金属製品、非鉄金属、電気機械など、歴史的に富山県で集積が進んだ業種を中心に、堅調な需要を背景とする能力増強などの活発な投資が行われ、全体の伸びを牽引してきたと言えよう。
 2018年度は電気機械の大幅反動減を主因に5年ぶりの減少となったが、2019年度は輸送用機械や食品の大型投資が寄与し増加に転じた。2020年度はコロナ禍による投資の先送りなどにより幅広い業種で減少となり、2021年度はコロナ禍の長期化や原油価格高騰など情勢の不透明感が影響し2年連続の減少となった。2022年度以降は投資の再開などにより増加に転じ、2024年度には前年度までの投資の剥落や一服、後ろ倒しなどにより3年ぶりの減少となった。2025年度計画では自動車向け関連投資に牽引されるほか、幅広い業種でも能力増強や自動化・省力化投資が進み増加に転じる。全国では、半導体や電動化(電気自動車、ハイブリッド車などを含む)関連を中心に、素材業種や自動車などで増設・拡張投資が継続しており、それらに対応する部材等の生産を富山県など北陸地域の企業や生産拠点が支えていると考えられる。

図表3 富山県の設備投資(製造業)の寄与度推移

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5.(特別調査)企業行動に関する北陸企業の意識調査

 本調査では、現下の経済・社会状況を踏まえ、民間企業の行動に関する意識を調査することを目的に、「企業行動に関する意識調査」(特別調査)も、合わせて実施している。特別調査には、全国3,482社より回答をいただき、うち北陸本社企業は145社(製造業60社、非製造業85社)であった。
 以下では、北陸本社企業の調査結果を紹介する。

(1)事業リスクと国内投資、物価上昇

 事業上の影響が大きいリスクとして、北陸では「物価上昇」、「人手・後継者不足」、「人件費上昇」の回答が多く、特に「物価上昇」は最も影響が大きい要因となっている。
 前年度国内設備投資実績の押し下げ要因は、投資内容精査や工期の遅れといった要因が多く、特に北陸地域の製造業においては、全国と比べて「当初計画を下回らず」と回答する企業の割合が低い結果となっている。

図表4 事業への影響が大きいリスク要因

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図表5 2024年度国内設備投資実績の押し下げ要因

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(2)人的投資

 北陸では製造業、非製造業ともに全国同様、様々な職種の人材が不足しており、なかでも北陸では、「技術職・エンジニア」との回答が最多となっている。
 また、全国・北陸ともに多くの企業が人材獲得に向け「新卒採用の強化」や「中途採用の強化」を進めるほか、「賃金引上げ」を実施するなど、各社が採用力強化を図っている。

図表6 不足している人材の種類

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図表7 人材獲得のために取り組む施策

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(3)米国関税

 全国、北陸とも「特に影響なし」との回答が約4割を占め、「影響精査中」がこれに続いており、現時点において米国関税強化の影響は顕在化していない。
 また、全国、北陸とも製造業では「影響精査中」が「特に影響なし」を上回っているが、具体的な調達先や生産・輸出拠点変更等の動きは限定的と考えられる。

図表8 米国関税強化による影響と対応

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(4)その他(カーボンニュートラル・AI活用)

 北陸では、全産業においてカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めることで、「設備入れ替えの契機」になると考える企業が多い一方で、その課題として多くの企業が「技術的な問題」と回答している。
 北陸では、AI活用について、「活用している」または「活用を検討している」との回答が製造業、非製造業とも前年度を大きく上回っており、地域や業種を問わずAIの活用が進んでいる。

図表9 カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの影響

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図表10 カーボンニュートラル実現に向けた課題

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図表11 AIの活用状況

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  1. 本稿で示された意見は筆者のものであり、DBJの公式見解ではありません。
  2. 本稿で使用したデータは、DBJの設備投資計画調査によるものです。詳細はDBJのホームページをご参照ください。

(地域別設備投資計画調査)

https://www.dbj.jp/investigate/equip/regional/detail.html

(全国設備投資計画調査)

https://www.dbj.jp/investigate/equip/national/detail.html

(2024・2025・2026年度北陸地域設備投資計画調査 特別調査 企業行動に関する北陸企業の意識調査)https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/23c84b29f4c704735eadbdd58e5a88d9.pdf

 

お問い合わせ

所属課室:経営管理部統計調査課経済動態係

〒930-0005 富山市新桜町5-3 第2富山電気ビルディング

電話番号:076-444-3191

ファックス番号:076-444-3490

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