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更新日:2021年7月26日
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日本銀行富山事務所長
小川万里絵
富山県の景気は、国内外の経済活動の回復に伴い、一部に下押し圧力が残るものの、製造業を中心に持ち直しています。
個人消費については、一部に下押し圧力が続いており、持ち直しのペースが鈍化しています。生産については、情報通信関連の好調や、国内外における経済活動の回復を受けた設備投資需要の回復等から、持ち直しています。こうした状況下、有効求人倍率は緩やかに上昇しているほか、企業の業況感も改善しています。
先行きについては、新型コロナの感染防止に関する不確実性は残るものの、緩やかな回復基調を辿ることが期待されます。
富山県の個人消費は、小売は家中需要が継続しているものの、業種により持ち直しのペースは鈍化しているほか、宿泊など対面型サービスでは、全国的な新型コロナ感染状況の影響を受け、下押し圧力が続いており、全体として持ち直しのペースは鈍化しています。
小売6業態の売上の前年比は、前年に新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言発出等の影響で大きく落ち込んだことから、足許プラスで推移しています(図表1)。業態別にみると、百貨店・スーパーでは、衣料品は回復していませんが、引き続き食料品は好調であり、高額商品の動きもよくなっています。ドラッグストア、ホームセンターは、前年比小幅のマイナスに転じていますが、これは前年が新型コロナ感染拡大の影響による衛生用品や家中需要の急拡大から高水準にあったためで、前前年比でみると好調といえます。家電専門店は前前年比並みとなっており、これまでの増勢が一服しています。コンビニエンスストアは、外出控えの影響等から、前前年比ではマイナスが続いています。
(図表1)富山県の小売6業態の売上高前年比推移
──21年4月は速報値
(出所)経済産業省商業動態統計
新車販売は、新型コロナ感染拡大の影響を受けて落ち込んだ前年対比でプラスが続いています(図表2)。前前年比ではマイナスですが、一部で半導体不足によるメーカーからの納車遅延の影響が出ているものの、受注ベースでは底堅いとの声が聞かれています。
(図表2)富山県の新車登録台数の前年比推移
(出所)富山運輸支局
一方、県内の延べ宿泊者数をみると、昨年3月以降大幅に落ち込んでおり、10-12月頃には前年比マイナス幅が縮小したものの、その後は全国的な新型コロナの感染再拡大や、それに伴う感染拡大防止措置の影響を受け、4月も前前年比では5割弱の宿泊者数となっています(図表3)。
(図表3)富山県の延べ宿泊者数
―2021年2月以降は前前年比を表示
(出所)観光庁
県内企業の設備投資について、短観[2](2021年6月調査)でみると、2020年度の実績は、これまでの高水準の投資の反動や新型コロナ感染拡大の影響による収益悪化を踏まえた不要不急の投資の先送り等から、製造業・非製造業ともに前年度比大幅なマイナスとなりました(全産業▲26.8%、製造業▲28.5%、非製造業▲25.3%)(図表4)。
2021年度の計画では、製造業では足許の業況改善を踏まえ先送りした案件を再開するとする先が多くみられており、前年度比+38.3%の大幅増加の計画となっているほか、非製造業は前年度並み(+2.4%)の計画となっており、全産業でも前年度比+19.0%の二桁増を見込んでいます。
(図表4)富山県の設備投資額の前年度比推移
―ソフトウェアを除くベース
(出所)日本銀行金沢支店
なお、設備投資の水準を2005年度=100とした水準でみると、とくに製造業の設備投資意欲回復のスピードは、リーマンショック時と比較して早いといえます(図表5)。
(図表5)富山県の設備投資額の推移(全産業、2005年度=100)
(出所)日本銀行金沢支店
企業の生産動向については、海外、国内の経済回復等に伴い、鉱工業生産指数(総合)の水準は、昨年夏頃をボトムに持ち直しています(図表6)。業種別にみると、電気機械が、スマートフォン向けや5G関連等の情報通信関連が好調であるほか、海外・国内の設備投資需要の回復により汎用・生産用・業務用機械が急回復しています。ウエイトの大きい医薬品も横ばい圏内にあります。
(図表6)富山県の鉱工業生産指数の推移(季節調整済、2015年=100)
(出所)富山県経営管理部統計調査課
県内の有効求人倍率(受理地ベース)は、新型コロナ感染拡大の影響から昨年4月以降急激に低下したのち、10・11月の1.15倍をボトムに上昇に転じています(図表7)。
(図表7)有効求人倍率(季節調整値)の推移
(出所)富山労働局
求人・求職者数の動きをみると、本年2月以降、求人数が回復する一方、新型コロナの影響で一時停止していた求職活動を再開する動きが出ています(図表8)。
(図表8)富山県の有効求人・求職数(原計数)の推移
(出所)富山労働局
企業の業況感を、短観(2021年6月調査)の業況判断DI(全産業)でみると、業況判断DI(全産業)は、国内外の経済活動の回復に伴い、前回調査に引き続き幅広い業種で改善したことから、「良い」「悪い」が同率の0となり、19年9月調査の+3以来7期振りに「悪い」超を脱しました(図表9)。業種別では、製造業は+4と、6期振りに「良い」超に転じたほか、非製造業も▲3と、「悪い」超幅を縮小しています。
先行き(全産業)については、製造業、非製造業とも先行きをやや慎重にみており、再び「悪い」超(▲7)となりました。
(図表9)業況判断DI(全産業)の推移
(出所)日本銀行金沢支店
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