ツキノワグマによる人身被害についてのQ&A
Q1 クマに対する県の対応方針はありますか
A1
県内では、ツキノワグマ(以下、クマという。)による民家近くでの人身被害の発生や、そのおそれがある事態が多発していることから、クマによる人身被害を防止するために、県として次のとおり対応しています。
県民の生命、身体の安全を守ることを基本として対応しますが、一方、富山県内に生息するクマについては、科学的・計画的な管理を実施することにより、本県のクマの地域個体群の長期にわたる安定的な維持及び人身被害の防止並びに農林業被害の軽減を図り、緊張状態のある共存関係を構築することを目的としています。
Q2 クマが絶滅するのではないか心配だ
A2
クマは人身被害などの発生が大きな問題となる一方で、イノシシなど、そのほかの野生動物と比べて繁殖力が弱く、個体数が減少しやすい野生動物です。富山県では「被害防除」、「生息環境管理」、「個体数管理」を実施することにより、本県のクマの長期にわたる安定的な維持を図っています。そのため、クマを絶滅させるほど捕獲することはありません。
Q3 クマは危険だから全部駆除してもいいのでは
A3
県内のクマが全部いなくなっても、すぐに私たちの生活が困るわけではありません。
しかし、人間を含めた生物同士の関係は、食物連鎖のようなわかりやすい関係もあれば、全く研究の及んでいない生態系が安定した自然界のバランスを支えていることもあります。したがって、突然の種の絶滅は、これまで長い時間をかけて微妙なバランスを保ってきた生態系に悪影響を及ぼしかねないとの危惧があります。
この生態系の「環(わ)」や「鎖」を壊さないことは、私たち人間を含めた全ての生物にとっての必須の条件となります。(参考:生物多様性キーワード事典)
また、クマを「猛獣」だと思ってらっしゃる人もいますが、本来は、大変臆病で温厚な動物です。過度に恐れることは決してありませんが、とにかく、人とクマとの遭遇を少なくすることが、結果的には被害の防止になると考えます。
Q4 クマを引き寄せないためには、どうしたらよいのですか
A4
- (1)人家のまわりに生ゴミなどを無造作に捨てたり、置いたりしないでください。
- (2)キャンプ場などでは、ゴミの管理を徹底してください。
- (3)キャンプや登山、渓流釣りなどで出たゴミは必ず持ち帰ってください。
- (4)人家のまわりで収穫の予定のない柿等の実は撤去又は木を伐採するようにしてください。
- (5)山野にある墓地の供え物等は持ち帰るようにしてください。
Q5 クマと遭遇しないためには、どうしたらよいのですか
A5
- (1)クマに自分の存在を知らせてください。
クマは、嗅覚や聴覚が人間より優れ、人の接近をいち早く察知し、人を避けます。
ラジオや鈴などで音を出して行動してください。
風や雨、川の音などで人の気配を察知できないことがあるので、過信は禁物です。
- (2)クマのいるところで行動しないでください。
クマは、明るい場所を避けます。見通しのよい明るい場所で行動してください。
クマの糞や足跡などを見つけたら、迂回するか、引き返してください。
- (3)早朝や夕方の外出は注意が必要です。
クマは、人里近くへは、夕方に出てきて朝方に帰ることが多いので、この時間帯はできるだけ外出しないようにしてください。
この時間帯に外出する場合には、単独での行動は避けてください。特に、クマの出没や痕跡がある場所での行動は危険です。
Q6 それでも、クマに遭遇してしまったら、どうしたらよいのですか
A6
- (1)子グマに出会った時は、そっと立ち去ってください。
見えなくても、親グマが近くにいます。
- (2)とにかく落ち着いてください。
- ア クマまで距離があるようなら、そっと立ち去ってください。
- イ 急に大声を出さないでください。
大声を出したり、ものを投げつけたりすると、クマは興奮します。
- ウ 静かに退避してください。
クマから目を離さないようにして、できるだけゆっくりと後退してください。
持ち物や帽子、衣類などを静かに地面に置いて、クマの注意をそらしてください。
クマとの間に立木などの障害物をおける位置に移動できれば、突進を防ぐこともできます。
- エ 人家周辺でも細心の注意を。
- 人家周辺での出没もあり得ることから、決して、よそ事などと思わず、常に周囲に細心の注意を払うよう心がけてください。
- (3)走って逃げないでください。
クマは、「逃げるものを追う」習性があるといわれています。背中を見せて逃げるなど、不要な刺激を与えることは危険です。
- (4)急所を守ってください。
万が一、クマが襲ってきた場合には反撃することも考えられますが、力(走ることや木に登ることにおいても)ではクマの方が勝っています。
確実な防御方法はありませんが、ダメージを最小限にするために、自分の首を両手でしっかり抱えてうずくまり、クマの攻撃をしのぐ方法が有効だともいわれています。
Q7 クマを見つけたらすぐに殺すのですか
A7
県では、クマによる人身被害の防止対策の一つとして、市町村の捕獲隊によるクマの捕獲を許可しています。
市町村では、人身被害のおそれがある場合に、捕獲隊へ捕獲を依頼します。
依頼を受けた捕獲隊から、県へ捕獲許可申請が提出されますが、その審査にあたっては、パトロール等による追い払い状況や被害状況等を確認することとしており、無条件での捕獲が行われないような仕組みになっています。
Q8 麻酔銃を使って捕獲して、山へ返すことはできないのですか
A8
麻酔銃の使用は、かなり限定した状況下ではじめて可能になります。
麻酔が効くためには、15~30分の時間を要し、この間、クマが興奮して暴れて危険な状態になるのでクマの動きが封じられていることが必要になります。また、麻酔銃の性能では至近距離からの発射が条件となるため、通常の状況下においての使用は不可能なのです。