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更新日:2023年12月15日
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富山県は、日本海沿岸特有の降雨・降雪の多い気候であるため、全国有数の降水地帯です。
とくに、冬期間の降雪が多く、山岳部での積雪は、雪のダムとなり、万年雪をいただく立山連峰からの水は、真夏でも冷たい飲料水を供給してくれる自然の大貯水池として、豊富な水資源のもとになっています。
この雪解け水は、山岳を一気に流れ落ちるため、全国の郡市と比べて水温差は著しく、夏でも15℃前後と、かなり低温になっています。
また、河川は、地形的にみても急流河川であり、しかも、海までの距離が短いので、淀むことのない清冽な水の流が特徴です。
この水温の低い豊富で清らかな流れこそ、おいしい水となる重要な要因の一つなのです。
富山県は、自然度の高い原生林的な植生区域の県土面積に占める割合は30.0%(1997年)と、全国平均19.0%よりもかなり高く、北海道・沖縄に次いで全国第3位、本州では第1位にランクされています。
とくに、山岳地の森林は、緑のダムとなり、樹木の枝葉や落葉落枝の堆積層へ降水を一時貯留したり、地下水を涵養する機能をもっています。しかも、河川への流入土砂をくいとめ、水の濁りを防ぎます。
緑のダムのもつ保水力と浄化作用---ここにもおいしい水の秘密が隠されています。
片貝川をはじめとした県内の代表的な7大河川は、全国の大河川と比較してみても、河床勾配が非常に大きいことが分かります。また、海外の有名な諸河川と比べると、全く比較にならないほどの急流河川です。
一方、水質の面からみると、急流河川であるために、途中で汚染される間がなく、酸素による新陳代謝も激しいため、川の水は極めて良質な状態で流れています。急流河川であるほど水はきれいである、という調査報告もあります。
「汚染のない、良質な水」、これがおいしい水の原点です。
大切な水資源となる降水も、梅雨期や台風期に集中するうえに、急流河川とあいまって、大量の水が有効に利用されないまま海に流出してしまいます。
そこで、新たな水需要に対して、広域的な視点に立った水源開発として、多目的ダムの建設が行われています。
本県にあって、それはまた、貴重なクリーンエネルギーをつくる大切な役割を果たしています。
富山県では、ダム建設のほとんどが、自然環境のよく保たれた、汚染の少ないところに建設されており、そのことが、年間を通じて良質な水の安定給水を可能にしています。
自然の恵みを、人工的に、安定してつくりだす水質のよいダムこそ、現代の「おいしい水」を支える最も重要な基盤といえるでしょう。
富山県の地質は、日本列島のひな型(模型)である、といわれます。それは、
という理由によります。
県内の部位別に、具体的に説明しますと、
このように、富山県の地質は、富山湾を中心に、同心円を描くように分布していることが分かります。県内の主要河川は、同じような地質状態をもった地帯を流れているわけです。
では、この富山県の特殊な地質は、水の味にどのような影響を与えているのでしょうか。
花崗岩は、化学的に安定した岩石であり、とくに、風化したものには、水に含まれる不純物を吸着し、ろ過する働きがあります。
新第三紀の地層や岩石、あるいは石灰質の岩石からは、水の「うまみ」を高める各種のミネラルが適当に溶けだしていると考えられます。
酒造りと良水の関係は、古くから言われていますが、これは、科学的にも根拠があります。
例えば、兵庫県灘の宮水は、花崗岩地帯の伏流水ですし、酒どころとして知られる東北の日本海側は、新第三紀の地層や岩石が分布するところです。
富山県は、その両方の地質を兼ね備えているという意味で、日本でただ一カ所の恵まれた場所といえるでしょう。
水道水の源になる河川水が清澄であり、適量の無機成分(ミネラル)が含まれていれば、浄化薬剤や殺菌用塩素の量がわずかで済みますから、おいしい水道水が得られます。
したがって、河川水中の無機成分の種類と量は極めて重要です。無機成分の種類としては、硬度、鉄分、塩素イオンおよび蒸発残留物などを挙げることができます。
いま、これらの成分について、世界、日本および本県の河川水の平均値を比較し、本県の水道水のおいしさの原因を探ってみることにします。
まず、水をおいしくする重要な成分である硬度は10-100mg/L、特に20-50mg/Lであることが望ましいわけですが、本県の河川水は31.2mg/Lを示し、望ましい状態にあります。一般に日本の河川水は、外国の河川水に比べ低硬度です。
この原因は、日本の山地は主として火成岩からできており、石灰岩が少ないからです。つぎに、水をまずくする代表的な成分である鉄分は1.0mg/L以下が望ましいわけです。鉄分が多いと渋味を感じ、さらにお茶の色、香り、味を悪くします。本県の河川水は0.06mg/Lと低濃度です。
塩素イオンは海水の影響や、生活排水ならびに産業排水の影響などを知るのに有効な成分です。本県の河川水は3.0mg/Lと極めて低い状態にあります。これは、水量が豊富で、かつ清浄であることを意味しています。
つぎに、蒸発残留物ですが、これは、水の中けにくに溶解および懸濁しているすべての成分の総量を表わしたもので、この値が30-200mg/L、特に40-100mg/Lであれば、その水は清澄でおいしいといえます。本県の河川水は56mg/Lです。
以上のように、本県の河川水は清澄で、かつ、おいしさの条件を備えております。
本県には、優れたいくつもの扇状地があります。すなわち、黒部川、片貝川、早月川、常願寺川および庄川の各扇状地です。それらは、主として花崗岩質の極めて透水性のよい砂礫層からなっているため、水量豊かな地下水盆となっています。そして、扇端部は海岸近くにあるというのが特徴的です。
そして、それら扇状地における地下水系統の概要はつぎのようです。すなわち、扇頂部において河川から浸透した水は、扇央部あたりから次第に発達しはじめる粘土層によって2分され、上部の水は自由地下水、下部の水は被圧地下水となって流下していきます。そして、自由地下水を採取しているのが普通の井戸、被圧地下水を採取しているのが自噴井です。
また、扇端部で自由地下水面と地表面とが交差したところで湧き出す地下水を湧水といっています。県内には、被圧度の高い自噴井や湧水を多くみることができます。
なお、地下水の涵養源は、河川水の直接浸透よりも、むしろ河川から分水し、綱目のように張りめぐらされた農業用水や、水田からの浸透の方が主役となっています。
日本の地下水と、本県の扇状地における水道用井戸水について、硬度、鉄分、塩素イオンおよび蒸発残留物の平均濃度を比較してみると、本県の井戸水は、いずれの成分も、日本の地下水に比べ、かなり低い値を示しています。したがって、浄水場で注入する殺菌用塩素量はわずかで済みますから、おいしい水道水になるわけです。
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