更新日:2023年3月3日

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所長挨拶

2019(令和元)年末に中国武漢市で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して約2年半が経過しました。富山県衛生研究所(富山衛研)では、県内の第1波からPCR検査診断に全所的な体制で取り組んできました。第2波以降には富山衛研は保健所・厚生センターの検査診断の導入を支援しました。さらに、医療機関や民間検査機関でのPCR検査、抗原診断も可能となりました。また、富山衛研は県内の医療機関ネットワークとの連携で臨床ウイルス学・臨床疫学研究を実施してきました。さらには県健康対策室との連携で保健所の疫学調査の解析を支援してきました。このような疫学調査活動の実績を背景に、2022(令和4)年4月には富山衛研及び県健康対策室から構成される「富山県疫学調査支援チーム」が発足し、県内のCOVID-19をはじめとする感染症アウトブレイクの調査研究の基盤が構築されています。

さて、2021(令和3)年12月末に南アフリカを起源とするオミクロン株の流行が始まりました。この変異株はスパイク蛋白質をコードする領域に30個のアミノ酸変異を持っており、その出現はその後のグローバルなCOVID-19長期流行の大きな節目となりました。オミクロン株BA.1系統の流行では今年2月上旬をピークにこれまでにない大きな感染の波(第6波)となり、ピーク時には全国の新規感染者は1日10万人を超えました。また、3〜4月中にオミクロン株のBA.1よりやや感染力が高いBA.2系統に置き換わりました。感染者の主体は小児〜若年成人であり、またその大半は軽症でした。

2022(令和4)年8月現在、オミクロン株の国内流行が始まって既に8ヶ月が経過し、国民のmRNAワクチンの3回目接種および4回目接種が進んでいる中でこの変異株は長期間居座り続けています。長引く流行の主要な原因として、オミクロン株が従来株に比較して、1.感染性が高いこと、2.ワクチン免疫から逃避することが考えられます。国内の追加接種(3回目接種)の割合は8月1日時点で60代以上は8〜9割であるのに対し、20〜40代では約5〜6割、12〜19歳では4割、5〜11歳では2割弱です。このため、ウイルスに対する抵抗力のない年齢層の中でオミクロン株の感染連鎖が維持されていると考えられます。

2022(令和4)年7月から新規感染者数は再び急激に増加し、1日20万人を超えた状態が7月末から少なくとも8月中旬まで続いています。この間、BA.2系統はより感染力が高いとされるBA.5系統にほぼ置き換わりました。mRNAワクチン追加接種後の免疫血清のBA.1とBA.2系統に対する中和活性はほぼ同等ですが、BA.5系統に対する中和活性は約1/3に低下するとされています。オミクロン株の系統ウイルスによる流行がいつまで続くのかは正確な予測は困難です。第7波の感染拡大が継続し、医療体制の逼迫が問題となれば、国も経済を止めて、行動制限を求めることも必要になると思われます。一方、政府はオミクロン株(BA.1系統)対応のmRNAワクチンを2022(令和4)年10月以降に国民への接種を開始する方針を示したことから、その効果が期待されるところです。

免疫の隙間に入り込む「したたかなウイルス」に打ち克つための切り札はやはりワクチンです。mRNAワクチンに限らず、国内で開発中の複数のモダリティーのワクチンを有効に活用することが今後もCOVID-19対策の柱となると考えられます。これに加えて、基礎疾患のない人にも投与できる経口抗ウイルス薬が国内承認されれば、ウイズコロナの生活が現実的となってきます。しかし、当面は基本となる感染対策も必要となるでしょう。引き続き県民が一丸となってCOVID-19に対峙することが求められています。

富山衛研はCOVID-19の検査診断・疫学情報だけでなく、健康危機管理全般についても情報還元し、県民の安心・安全に繋げて行く所存です。どうぞ、ご理解・ご支援のほどお願い申し上げます。

2022(令和4)年8月

富山県衛生研究所 所長 大石和徳

 

 

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