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更新日:2021年2月24日

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妊婦・授乳婦とくすり(医薬品添付文書とガイドライン)

国立病院機構大阪南医療センター 成育医療センター部長
神田隆善

すべての妊婦・授乳婦にとっての不安といえば、自分が飲む薬が赤ちゃんにとって安全かどうかです。薬剤の安全性情報は正確に患者さんに伝えなくてはいけません。そこで、医薬品添付文章(以下添付文書)と最新の産婦人科診療ガイドライン(産科編2014年)について説明します。

医薬品添付文書とは

妊婦・授乳婦に対する医薬品の情報源として、医薬品添付文書は唯一薬事法に法的根拠を持ち、日本では最も重要な資料です。添付文書は製薬会社が記載要領に基づき作成します。薬剤を使用し副作用が認められた場合、医師あるいは医療機関は報告することが求められています。このようにして集められた副作用報告は、本当の副作用かどうかが評価され、これが一定数蓄積すると添付文書を改訂すべきか検討されます。この作業は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行っています。

医薬品添付文書に従わないと

平成8年の最高裁判所の判決では、医師の注意義務の基準として、当時の医療水準を掲げつつ、その判断要素として添付文書の記載を重視しました。つまり、添付文章に従わない使用法で医療事故が発生した場合、医療機関側に従わなかったことについて、「特別な合理的理由」の存在を証明すべき責任があるとされました。この判決が医師・薬剤師に非常に大きな負担を与えることになり、添付文書の記載に従わない使用法は禁止と考えられるようになりました。

例えば、オキシトシンやプロスタグランジンは、産科にとって重要な陣痛促進剤ですが、作用が強力であるため、使用法を誤ると事故につながります。例えば、胎児死亡、脳性麻痺、子宮破裂など大事故で裁判になる例も多くみられます。そのため、添付文書は繰り返し改訂されてきました。最初は投与速度に関して、その後は、両剤の併用禁止、使用時の分娩監視装置の義務化、既往帝王切開例への慎重投与など、使用法に次々に縛りが加えられてきました。もし裁判で医師の責任が問われた場合、事故が起こった時点での添付文書の注意に違反した使用法であれば、罰せられることになります。

妊産婦への投与

多くの薬剤の添付文書では「妊娠中の投与に関する安全性については確立していないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」という記載が大部分です。これでは、「投与してよいのか?いけないのか?」という最も知りたい点について判断ができません。これは記載要領に明言されたものですが、実際に投与できると判断できる医師は少ないのが現状です。
「有益性投与」は問題が多く、新しい基準が必要です。

授乳婦への投与

授乳中に使用する薬剤の添付文書の記載の多くは、「母乳への移行が報告されている」ので、投与中は「授乳を中止すること」ないしは「授乳を避けさせること」とされて、日本では75%の薬剤が禁止になります。欧米で禁止とされるのはわずか3%です(下図)。薬剤は母乳に移行しますが、ほとんどが1%以下です。まったく問題はありません。日本では医学的な実証に立脚した判断ではなく、母乳に移行する薬剤はすべて授乳を禁止させるという哲学で添付文書は記載されています。このことは母乳育児を考えているお母さん方に多大な負担を与えます。

妊娠と薬情報センター

このような、妊婦・授乳婦への薬剤投与の臨床現場の混乱から、厚生労働省も妊娠・授乳中の薬剤使用に関する情報の提供、疫学データの構築の必要性を認識し、「妊娠と薬情報センター」設立を決定しました。2005年には国立成育医療研究センター内にオープンし、その後は全国規模のネットワークも構築されました。センターのホームページ(http://(外部サイトへリンク)www.ncchd.go.jp/index.php(外部サイトへリンク))から「妊娠と薬情報センター」にアクセスすれば薬剤投与の可否が検索できます。

産婦人科診療ガイドライン(産科編2014)

診療ガイドラインは、専門医の集まりである学会が検討を重ねて作成したものです。一番新しい信頼のおける研究結果に基づいて,患者さんに最も効果的な診療上の目安が書かれています。これを守ることで,医師のや経験によるばらつきを解消し,いつでもどこでも標準的な治療を受けられるようになります。

日本産科婦人科学会の最新のガイドラインでは、ヒトで催奇形性・胎児毒性を示す明らかな証拠があるものが、妊娠初期14種、妊娠中・後期5種、妊娠後期1種となり、数はかなり減りました(推奨B※表参照)。さらに、添付文書では禁止でも、特定の状況下では妊娠中であっても投与が推奨されるものが3種類示されました。妊娠高血圧腎症で使用できる降圧薬も増えました。

※表 推奨レベルは3段階(A、B、C)で示される。

  • A (実施すること等が)強く勧められる
  • B (実施すること等が)勧められる
  • C (実施すること等が)考慮される
    (考慮の対象となるが、必ずしも実施が勧められているわけではない)

驚くべきは「例外(抗がん剤、放射性ヨード)はあるが、授乳婦が服用している薬物が児に大きな悪影響を及ぼすことを示すエビデンスはないと説明する」(推奨B)とされたことです。75%の添付文書の授乳禁止はどうなったのか?コペルニクス的大転換が示された。
この最新情報を多くの医療関係者は知りません。

妊娠と授乳の薬剤安全性は情報が少ないこともあり、とにかく誤解が多い。特に授乳の分野では、母乳の医学的利点が患者さんはともかく、医師・助産師・薬剤師などの医療従事者の間でもはっきり認識されていないので、これがよくある「この薬を飲むなら母乳は止めましょう」の指導につながります。
添付文書とガイドラインの内容が一致しないものが見られるのが現状です。
妊娠・授乳中の薬については、信頼できる医師・医療機関で最新の情報を得てください。

お問い合わせ

所属課室:厚生部健康対策室健康課 

〒930-8501 富山市新総曲輪1-7 県庁本館2階

電話番号:076-444-3222

ファックス番号:076-444-3496

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