更新日:2021年2月24日

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ALSOについて

富山県済生会高岡病院 産婦人科部長
吉本 英生

ALSOとは

ALSOとは Advanced Life Support in Obstetricsの頭文字を取った略語で、医師やその他の医療関係者が周産期救急に効果的に対処できる知識や能力を発展・維持するための教育コースです。1991年に米国で考案され、その後全米のみならず世界50カ国以上に普及していきました。2008年に金沢大学のグループが主体となって日本にも導入され、2015年3月までに全国27都道府県で150回以上の講習会が開催され4,000人以上が受講しています。グループの一員として導入時より活動してきた関係で、今回は私がALSOについてご紹介させていただきます。

妊娠って危険なの??

ALSOは周産期救急に対する教育コースとお伝えしましたが、医療先進国であるこの日本においても妊娠が非常に危険性の高いものであることを御存知ですか?自然流産は全妊娠の8〜15%、早産は約6%、異所性妊娠(子宮外妊娠)は1〜2%に発症します。妊娠中に血圧の高くなる妊娠高血圧症候群は全妊婦の3〜4%、分娩前に胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剥離は1,000分娩あたり約6件、妊婦死亡も妊婦20,000人に1人で起こると言われています。富山県の年間出生数が約8,000人ですから、件数を考えれば一般的には安全と言える妊娠ではありますが、20代女性のがん罹患率が0.5%、30代女性で1.5%などを考えると、妊娠中に突然の疾患に遭遇する可能性は非妊娠時と比較して高いと言えるのではないでしょうか。

話は変わりますが、救急車で搬送された方の情報に「妊婦」という項目がないため正確な数字が分からないのですが、我々が全国の消防署にアンケートを願いした調査では、全国で年間約1,000件の予期しない病院外分娩があると推測されました。

シミュレーション教育の必要性

妊娠、出産に関わる医療者と言えば産婦人科医や助産師がほとんどではありますが、先述の周産期救急は時と場所を選ばず発生しますし、昨今の産婦人科医不足から全国に産科医療過疎地が多く存在するようになっていますから、へき地の医療を担うプライマリーケア医や救急搬送に関わる救急医や救急隊といった医療スタッフも周産期救急に精通しておく必要があります。普段産科に関わりのない医療者にとって、シミュレーション教育は大変貴重な学習の場となります。また我々産婦人科医や助産師としても、滅多に遭遇しないけれども実際の現場では最高の医療が求められる妊婦死亡などの重篤な救急疾患に関しては、経験で対応することが困難なためシミュレーション教育としてトレーニングを重ねておく必要があります。

チーム医療

ALSOではチーム医療の重要性も伝えています。古くから産科医療は教育の難しい領域であり体系的な指導方法がなく、各施設で先輩から後輩へと閉鎖的に受け継がれてきた側面が大きかったのですが、シミュレーション教育を全国展開することで施設の垣根や産婦人科医と救急医あるいは医師と助産師といった職種の垣根を越えて、目の前の1人の患者さんに対して関わるすべての医療者が同じ考えのもと同じ目線で行動することが可能になってきました。これによってコミュニケーショントラブルにより発生する時間のロスや医療ミスを減少することが可能となり、緊急事態においてはより多くの患者さんを助けることができるようになります。

最後に

今回の話は一般の皆さんにはあまり関係のない内容だったかもしれませんが、全国の周産期医療に携わる医療者が、妊婦の皆さんとお腹の赤ちゃんのために日々努力しているということを少しでもお伝えできれば幸いです。

 

お問い合わせ

所属課室:厚生部健康対策室健康課 

〒930-8501 富山市新総曲輪1-7 県庁本館2階

電話番号:076-444-3222

ファックス番号:076-444-3496

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