国勢調査からのメッセージ
第4回 世帯の単身化と施設への依存

とやま国際センター研究員  浜松 誠二


世帯の機能の喪失
 前回は、世帯の規模の縮小について述べた。これは各世帯がこれまで持っていた多様な機能を失っていることでもある。
 今回は、この点について、国勢調査から得られる情報を検討してみたい。

単身化
 まず世帯の形態の変化に触れておく。
 図1は、世帯の形態を(1)核家族世帯、(2)三代同居などのその他の親族家族世帯及び(3)単身あるいは非親族の同居世帯の3つの類型に分け、その構成比の推移を見たものである。三角グラフについては、前回紹介したが、今回は経年変化を折れ線で表現している。

 世帯規模の縮小については、核家族世帯の増加が見られ、一般に「核家族化」と呼ばれている。しかし、世帯数の構成比の変化では、「単身化」といった方が適切な状態が続いている。
 富山県では、1990年代後半において核家族世帯の構成比が若干増加しているが、これは前回も触れたように団塊ジュニア世代の家族形成期にあったためで、今後再び、核家族世帯の構成比は減少するだろう。
 単身世帯は、形としては、家族の支え合いの機能を持たないものであり、自立できなくなった際には、いずれかの親族あるいは公的施策などに支援を求める必要がでてくる。

 なお、世帯類型別世帯人員数別世帯数を立体グラフ化したものが図2である。これにより、世帯の構成の実態をイメージとして捉えることができる。
 実は、この図では、既に、単身世帯が最も多い世帯となっている。

 この作図は、Excelなどの表計算ソフトにごく一般的についている機能であり、色々と分かり易い表現ができる。
 ただし、データがどの項目(升目)にもあるような統計ではかえって煩雑で理解し難い図となるおそれがある。また、後方の重要な事項の柱が前方の柱に隠されていることがないか、十分に注意して描く必要がある。
 また、イメージがはっきりするために、かえって誤解を招く可能性も高い。例えば、この図2の例では、世帯規模別に展開することによって、分割されない単身世帯が強調されている。なお、世帯人員数でなく世帯数で表現していることも、単身世帯を際立たせている。



施設依存への転換
 それでは、介護が必要な人を支える機能はどこに求められているか。
 国勢調査では、一般の世帯ではなく、施設世帯に暮らす人の統計も集計されている。
 ここでの施設とは 寮、自衛隊営舎、病院・療養所、社会施設、矯正施設などが含まれる。このため、高齢者を支える機能以外の要素も混ざっている。しかし、太宗は病院・療養所、社会施設に住む高齢者であり、以下の検討は、大まかな傾向として捉えていただきたい。

 全国・都道府県別に、総人口に占める、施設世帯に暮らす人の比率の推移を見たものが図3である。
 かつて富山県は、この割合が、全国でも特に低い県であった。しかし、1970年代、'80年代を通じて急速に高くなっている。
 これは、社会福祉施設等の整備とともに、高齢者の支援を世帯内の機能から外部の機能へと、急速に委ね始めたことを意味している。この間に富山県民の家族についての意識も大きく変化し、施設依存に拍車を掛けたものと見られる。
 ちなみに、福井県も富山県と似た推移をたどっている。なお、この図も富山県の特徴を現す、「なで斬りグラフ」の一つと言えよう。



医療・療養施設の選好
 さらに、高齢者の支援を主体とする病院・療養所及び社会施設に住む人のうち、病院・療養所に住む人の割合を見たものが図4である。
 富山県は、病院・療養所に住む人の割合が全国でも最も高い。これは、病人が多いというより県民の選好と施設整備の結果と考える方がより適切であろう。
 ここでは、制度等の議論には立ち入らないが、違和感を感じる向きもあるのではなかろうか。

 なお、地図による描写は、Excelなどでもできるが、フリーソフトも流布している。従来、簡単に図化しようとすれば棒グラフを使っていたところであるが、地図化することによって、地域の分布パターンを捉えることが容易になっている。ただし、モノクロでの表現の場合、段階区分をあまり細かくできないといった限界がある。


 富山県民は、従来、家族が持っていた機能を、他県以上に急速に、外部化した。しかし、こうした機能を行政等に委ねながら、自らも共に地域社会を支える気概、例えばボランタリィな活動への参画などは育っていないといった統計が散見される。
 国勢調査では把握できない生活の実態については、5年毎の「社会生活基本調査」で調査されており、平成13年調査の結果は、本年9月には発表される予定となっている。この調査により、こうした側面の理解が深まることが期待される。


平成14年7月号