トップページ > 県政の情報 > 広報・情報公開 > 報道発表 > 2023年 > 11月 > 「低温鍛接法によるリチウムイオンバッテリー用Cu/Al複合電極端子の開発」が第39回素形材産業技術賞表彰委員会特別賞を受賞

更新日:2023年11月6日

ここから本文です。

富山県 News Release MAKE TOYAMA STYLE

「低温鍛接法によるリチウムイオンバッテリー用Cu/Al複合電極端子の開発」が第39回素形材産業技術賞表彰委員会特別賞を受賞

発表日 2023年11月6日(月曜日)

ファインネクス株式会社(舟橋村)と県産業技術研究開発センター(高岡市)が共同研究により実施した「低温鍛接法によるリチウムイオンバッテリー用Cu/Al複合電極端子の開発」が、第39回素形材産業技術賞において素形材産業技術表彰委員会特別賞を受賞しました(令和5年11月2日付)。

県が開発、特許を権利化した異種金属接合技術(低温鍛接法)と当該企業の高精度複動金型技術を組み合わせ、リチウムイオンバッテリー用の電極端子として革新的なマルチマテリアル製品を世界に先駆けて開発しました。

銅(Cu)とアルミニウム(Al)の異なる金属材料(Cu/Al)をプレス加工により成形と同時に接合したもので、従来製品に対して性能面のみならずコスト的にも圧倒的に優れています。世界で急速に普及が進む電気自動車での活用が強く期待されますので、ここに紹介します。

1.受賞内容

(1)受賞件名

「低温鍛接法によるリチウムイオンバッテリー用Cu/Al複合電極端子の開発」

(2)受賞者

  • 北嶋 一郎(きたじま いちろう):ファインネクス株式会社 圧造設計部 部長
  • 江尻 雄一(えじり ゆういち):ファインネクス株式会社 圧造技術課 課長代理
  • 段 一輝(だん かずき):ファインネクス株式会社 圧造技術課
  • 山岸 英樹(やまぎし ひでき):富山県産業技術研究開発センター 副主幹研究員

(3)素形材産業技術表彰について

表彰事業名:第39回素形材産業技術賞

主催:一般財団法人素形材センター

趣旨:素形材産業技術賞は、一般財団法人素形材センターが1985年度に創設した歴史ある表彰制度で、優秀な素形材産業技術の開発により、わが国素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術の開発者を表彰し、もってわが国素形材産業の振興に資することを目的とする。

2.開発の内容

(1)概要

電気自動車に用いられるリチウムイオンバッテリー(LIB)では、モジュール(組電池)となるセル(LIBセル)を多数電気的に接続する必要があります。この電極端子間の接続には低コストかつ軽量なアルミニウム(Al)のバスバー(導体板)で接続することが望ましいのですが、通常LIBセルの正極(+)端子はAl、負極(-)端子が銅(Cu)で構成されるため、端子接続に要求される信頼性を得ることできません。この理由は、Cuの負極端子とAlバスバーを溶融溶接(溶かす溶接)しようとすると、接合部に脆弱な金属間化合物(IMC)を形成してしまいとても弱い接合になってしまうためです。このため、これらLIBセルの端子間の接続には、電極端子とバスバーの接合部が同種の組合せとなるように、CuとAlが異材接合されたCu/Alクラッドバスバーが一般に用いられています。しかしながら、これはその製造工程からとても高価なものとなっており、また接合界面に生じているIMCも一般に脆弱性の目安とされる1μmよりも相当厚く、接合強度(耐久性)のほかその機能性(導電性)にも懸念があります。

本開発では、問題となるIMCの厚みを1μmよりも十分に薄く抑え込みその脆弱性を無害化、実質IMCフリー化を実現する低温鍛接法(県有特許)を、当該企業が長年培ってきた優れた高精度複動金型技術と組み合わせることで、Cu/Alクラッドバスバーを不要にする革新的なCu/Al複合電極端子を世界に先駆けて開発しました(Cu負極端子の一部をAl化することでAlバスバーとの理想的な接続を実現)。本製品は、接合界面にナノメートルオーダーの高品質な反応拡散層(CuとAlの接合面で互いの原子をわずかに染み込ませた化学反応層)をプレス加工により成形とともに一瞬で創成(異材接合)、機能性、耐久性に優れるCu/Al複合電極端子を極めて低コストで製造する技術を確立しました。

本開発製品は、従来のCu/Alクラッドバスバーに対して約1/10の単価であり、性能面のみならず価格競争力においても決定的に優れています。また素材を100%使い切り、捨てるところがありません(クラッド材はプレスで打ち抜くため残材が発生)。電気自動車1台当たりでは、本電極端子が数十個~100個程度用いられるため、電気自動車の全世界的な需要の高まりにおいては、環境負荷の高い従来製法・製品に対し、本製品を用いることでSDGsへの貢献が相当大きくなることも期待されます。

(2)これまでの関連実績

<本開発に関する発明>

PCT/JP2023/027017「複合電極端子の製造方法」

<本開発に関する学術講演>

一般社団法人溶接学会 2023年度 秋季全国大会(9月)

「低温鍛接法によるリチウムイオンバッテリー用Cu/Al複合電極端子の開発」

(3)用語解説

リチウムイオンバッテリー(LIB)

正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う二次電池。エネルギー密度が高く自動車など様々な用途に用いられる。

マルチマテリアル

異なる複数の材料を組み合わせることによって、高機能化あるいはコストや重量の削減を実現する技術

金属間化合物(IMC)

2種類以上の金属により構成される化合物で、一般に硬く脆い。またその成長の過程で微小なき裂や孔などの欠陥が生じることなどからも、溶接部に金属間化合物が生成すると十分な接合強度が得られなくなる。

クラッド材

異なる金属の複合材(板材や箔の重ね接合材)のことで、複合化したい材料を重ねて圧延後(一体化)、熱処理により接合界面で冶金的に反応させ製造。

低温鍛接法(CFWCold Forge-Welding)

接合したい金属材料を溶かさずにプレス加工により一瞬で接合する技術(県有特許)。接合面に大変形を導入するほどより低温で接合ができる。低温のため異材接合においては接合界面に生じる金属間化合物(IMC)を非常に薄く抑え込むことができ、その悪影響を無害化、生産性の高い高強度異材接合を実現する。

複動金型技術

一体化された金型の中で、複数の金型が独立駆動することにより成形を行う金型技術。複雑形状を高精度にプレス加工することが可能になる。

SDGs

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標(2015年国連サミットで採択)。17のゴール・169のターゲットから構成される。様々な課題に対し「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標。

3.その他

表彰式は、11月2日に機械振興会館(東京都港区)にて開催されました。

受賞技術の紹介として、11月8日から11月27日の間、経済産業省(東京都千代田区)のエントランスホールにおいてサンプルが展示されます。

本開発に関する解説は、一般財団法人素形材センター月刊誌「素形材」2023年12月号に掲載予定です。

4.関連ファイル

参考資料(PDF:1,308KB)

お問い合わせ先

部局・担当名

電話番号

担当者

商工労働部 産業技術研究開発センター

0766-21-2121

上野(本受賞に関すること)

商工労働部 産業技術研究開発センター

0766-21-2121

山岸(研究内容に関すること)