特集

最近の雇用情勢と雇用施策について

富山県商工労働部労働雇用課

1 はじめに

本県の雇用情勢は、平成20年9月以降の世界同時不況の影響により、有効求人倍率が大きく落ち込み、一時は全国平均を下回ることもありましたが、平成21年7月、8月を底に全国を上回る勢いで上昇し、本年7月の有効求人倍率は0.88倍まで回復しています。

しかしながら、依然として1倍を下回っていることに加え、最近の円高の急速な進行による影響が懸念されることから、これまで以上に雇用の安定・確保にしっかりと取り組んでいく必要があると考えています。

今回は、近年の雇用情勢の動向と、現在、県や国が行っている雇用の安定に向けた具体的な取組みについて紹介します。

2 本県の雇用情勢の動向

(1)有効求人倍率
本県の近年の有効求人倍率は、平成20年5月に1倍台を下回った後も下降局面が続き、世界同時不況による雇用情勢の急激な悪化により大きく落ち込み、平成21年1月には0.62倍と全国平均の0.64倍を下回るなど、大変厳しい状況が続きました。特に、本県は製造業を主力産業とする「ものづくり産業」県であり、自動車部品や電子部品など輸出関連の部品を製造する事業所が多いことから、製造業を中心に求人が急激に落ち込むとともに、雇い止め等による離職者が急増しました。
このため、県として、経済・雇用対策にきめ細かく取り組んだことに加え、世界的な景気の回復に伴い、有効求人倍率は平成21年7月、8月を底に全国を上回る勢いで回復し、直近の本年7月の有効求人倍率は0.88倍(全国は0.64倍)と、リーマンショック(平成20年9月)以降で最も高い率となり、昨年12月から8か月連続で0.8倍台を維持しています。
(2)完全失業率
本県の近年の失業率をみると、平成20年は3.3%(全国は4.0%)、平成21年は4.0%(同5.1%)、平成22年は3.9%(同5.1%)、直近の平成23年4月~6月期平均は3.5%(同4.7%)となっており、いずれも全国平均と比べて低い水準となっています。

◇ 有効求人倍率の推移

出所:厚生労働省「職業安定業務統計」


◇ 完全失業率の推移

出所:総務省「労働力調査」

3 県の取組み

平成20年9月、米国の金融機関の破綻に端を発した世界的な金融危機により、我が国経済は、輸出や生産が大幅に減少するなど、急激な景気後退に見舞われ、全国的に、いわゆる雇い止めや人員整理等の雇用調整の動きが広がるなど、雇用情勢が大きく悪化しました。

このような雇用情勢を踏まえ、県では、(1)国の交付金を活用した、県及び市町村による雇用創出、(2)新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化、(3)離職者向け就職支援の強化など、雇用の安定に向けた支援を行ってきています。具体的には次のような取組みを行っています。

(1)県及び市町村による雇用創出
厳しい雇用情勢に対応するため、平成21年度から、国からの交付金を活用して、県及び市町村が直接雇用や民間企業等へ委託する形で、雇用機会を創出する事業に取り組んでいます。
これまで、国の数次にわたる経済対策により交付金の積み増しや制度改正・期間延長が行われており、今年度は以下の3つの雇用創出事業により4,300人、平成21年度から24年度までの4年間で12,300人の雇用を目指しています。さらに、この9月補正予算において、今年度新たに200人の雇用機会の創出を図っていくこととしています。
雇用期間が原則1年以上の安定的な雇用機会を創出する「ふるさと雇用再生基金事業」
雇用期間が6か月以内の臨時応急的な雇用機会を創出する「緊急雇用事業」
介護、農林水産、環境・エネルギーなど今後成長が見込まれる分野において1年以内の雇用機会を創出するとともに、地域 ニーズに応じた人材育成を行う「重点分野雇用創造事業」
   ※ 事業期間は、ふるさと雇用再生基金事業及び緊急雇用事業は平成23年度まで、重点分野雇用創造事業は平成24年度までとなっています。
 
◇ 雇用創出基金事業の事業規模及び雇用創出見込(目標)

【県、市町村あわせた雇用創出見込み】
平成21年度から24年度までの4年間で12,300人程度(9月補正で200人を追加予定)
平成23年度は4,300人程度(9月補正で200人を追加予定)

【雇用創出計画(目標)及び実績

※図をクリックすると別ウインドウで大きく表示します



◇ 平成23年度の主な事業

【ふるさと雇用再生基金事業
  • 新商品・新技術開発促進事業
     技術開発補助員を配置し、県委託研究事業等の研究成果の向上と技術開発人材の育成(90人)
  • とやまブランド伝統工芸人材育成事業
     伝統的工芸品産業における後継者の確保、技術・技法を継承するため、後継者育成のモデルを開発(41人)
  • 安全安心サポート事業
     活動員を配置し、駐輪場における施錠率調査、ATM周辺での警戒、呼びかけ活動による振り込め詐欺の被害防止等を実施(22人)
【緊急雇用事業】
  • がんばる授産施設販売促進事業
     障害者授産施設で営業・販売力を強化するため、営業・販売補助員を配置(25人)
  • 河川堤防草刈・伐木業務委託事業
     クマ対策等のため河川堤防の草刈及び伐木等を実施(100人)
  • 学校支援事業
     小・中学校、県立学校の外国語活動、情報教育、理数教育、外国人児童生徒の学習・生活を支援(306人)
【重点分野雇用創造事業】
  • 県内企業人材養成モデル開発事業
     新規学卒未内定者等を雇用する企業等に委託して、人材養成モデルを開発(50人)
  • 重点成長分野人材育成プログラム事業
     県内企業に委託して訓練付雇用(6か月以上1年以内)を実施(200人)
  • 介護サービス支援ステーション運営事業
     介護関係施設で働きながら、ホームヘルパー等の資格取得を目指すことにより、介護人材を確保(156人)
  • 就農者緊急育成事業
     農業法人等で働きながら農作業・農業経営に必要な知識・技能等を習得(40人)

◇市町村分を含めた具体的な事業計画(分野別、事業内容、開始時期、雇用人数、連絡先)は、県のホームページ(労働雇用課)で広 く公開しています。
(※ホームページのアドレス http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1303/kj00007989.html

(2)新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化等
本県は、若者の正規雇用者の割合が全国で最も高く、新卒者の就職後3年以内の早期離職率も低い水準にあるなど、若者が働きやすい安定した就業環境となっています。しかしながら、近年の新卒者を取り巻く就職環境は厳しく、若者の非正規雇用の割合も拡大傾向にあります。
人口が減少する中、本県の将来を担う若者が不安定な就労状況にあることは、未婚者の割合が増えて少子化を加速させることにつながりかねず、少子化を抑制する観点からも若者の雇用の安定を図っていくことが重要であることから、新規学卒者をはじめとする若者の就職支援の強化や正規雇用化の促進に取り組んでいます。
○ 平成23年度の主な取組み
【新規学卒者の就職支援】
合同企業説明会や各種セミナー等のきめ細かな開催
Uターンフェアインとやま、ヤングジョブとやま合同企業説明会 等
「元気とやま!就職セミナー」、ヤングジョブとやま就職支援セミナー 等
大学等の新規学卒者向け求人開拓員の配置
求人開拓員を2名配置し、県内外の大学等への求人情報の提供
未内定者(既卒3年以内の者を含む)向けの合同企業面接会の開催
高校就職支援アドバイザーの配置・拡充
県立高校に4名、私立高校に3名(平成23年度1名増員)配置
県と県教育委員会、労働局と連携した、経済団体への新規学卒者等の求人確保等の要請
学生と中小企業の雇用のミスマッチ解消に向けた取組み(県内中小企業人材マッチング促進事業)
中小企業の採用担当者を対象にした「人材確保力アップセミナー」の開催
学生向けの中小企業ガイドの作成・配布、中小企業の魅力発見セミナーの開催
新規学卒者等の採用を確保する「県内企業人材養成モデル開発事業」の拡充
新しく採用した人材の養成モデルの開発を県内企業に委託することにより、新規学卒未内定者等の採用を確保
※平成22年度31名、23年度38名採用。さらに9月補正において事業を拡充し、24年度採用枠40名として実施予定。

【若年者の就職支援】
「ヤングジョブとやま」におけるカウンセリングや定例合同企業説明会の開催など、フリーター等の若者に対する就業支援

※ヤングジョブとやま(富山県若者就業支援センター):平成16年4月設置 とやま自遊館2階

「若者サポートステーション」における通所型相談指導(勤トレ)の実施など、NPO等と連携したニート等の若者に対する自立支援

※富山県若者サポートステーション:平成18年8月設置 とやま自遊館2階

正社員登用制度を有する企業限定の両立支援企業合同説明会の開催
中途採用の導入や社員の能力開発などの人材確保・育成セミナーの開催など、企業経営者等への意識啓発

(3)離職者向け就職支援の強化
1職業訓練の充実
厳しい雇用情勢に対応するため、職業訓練を拡充し、離職者の再就職支援に取り組んでいます。詳細は、とやま経済月報今月号の特集記事「富山県の職業能力開発施策について(富山県商工労働部職業能力開発課)」をご覧ください。
2今後成長が期待される分野への円滑な労働移 動の推進
職業訓練に加え、雇用創出基金事業を活用して、介護、農林水産、ものづくりなど今後成長が見込まれる分野における新たな雇用 機会を創出するとともに、地域ニーズに応じた人材を育成し、雇用に結びつけるための事業を実施することにより、人材や担い手が不足している分野への円滑な労働移動を支援しています。(本稿3(1)③重点分野雇用創造事業及び平成23年度の主な事業参照)
3求職者向け相談体制の整備
世界同時不況の影響による全国的な雇用調整等の動きに伴い、仕事と同時に住居も失った方々等を支援していくため、平成21年7月からとやま自遊館に、生活相談と職業紹介を一体的に提供する「富山県非正規労働者等総合支援センター」を設置しています。このセンターでは、公営住宅などの住宅情報や、離職者のための貸付制度、職業訓練などの情報提供と職業相談、職業紹介や求人情報の提供など求職者からの相談について、労働局と連携して、 ワンストップサービスで行っています。
また、去る3月の東日本大震災により被災された方の就労を支援するため、ハローワークと連携し、県内経済団体等の協力を得て、4 月8日から県Uターン情報センターと県農林水産公社において、被災された方々への求人情報や住宅情報の提供、職業相談などを行っています。さらに、4月15 日には、被災された方が直接求人状況を検索・閲覧できるホームページ「とやま被災者就労支援窓口」を開設しています。
◇非正規労働者等総合支援センターの設置(平成21年7月1日開所
【設置場所】 とやま自遊館2階(富山市湊入船町9-1)
【相談時間】 10時30分~19時(月~金曜日)
【巡回相談】 各市町村庁舎等で巡回の生活・就労相談を実施(平成22年6月開始)
県東部・県西部の市町村で各2日/週
相談時間 13時30分~16時30分
       (黒部市のみ:9時30分~12時)

◇とやま被災者就労支援窓口の設置等
(平成23年4月8日求人情報提供・相談受付開始、4月15日ホームページ開設)

【相談窓口】
・一般 富山県Uターン情報センター
(富山市桜橋通り2-25 富山第一生命ビル3階)
・農林漁業関係 富山県農林水産公 社
(富山市舟橋北町4-19 富山県森林水産会館6階)
 
【相談時間】 平日 9時30分~17時
【ホームページ】 とやま被災者就労支援窓口
 http: //uturn.pref.toyama.lg.jp/shien/

4 国の取組み

国においても、平成20年10月以降、相次ぐ経済対策において、企業の雇用維持に対する助成金の拡充や雇用保険制度の拡充、新卒者雇用に関する緊急対策などの緊急雇用対策を順次大幅に拡充していきます。


◇企業の雇用維持に対する助成金(雇用調整助成金)の拡充(平成23年度)
事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用者を一時的に休業、教育訓練又は出向させた場合、休業手当等の一部を助成
 東日本大震災にかかる特例措置の拡充(H23.5.2~)
 取引先が電力使用制限の影響を受けたことにより事業活動が縮小し、それにより自社の事業活動が 縮小した場合に活用可(H23.7.1~)
 日額上限額の変更(H23.8.1~)

◇雇用保険制度の機能強化(平成23年度) 
非正規労働者に対するセーフティネット機能や離職者に対する再就職支援機能の強化
 失業者に対する「基本手当」の算定基礎となる「賃金日額」について、法定の下限額等を引上げ
 早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」について、給付率の更なる引上げ

◇新卒者雇用に関する緊急対策(平成22年9月・10月)
 キャリアカウンセラー等による相談支援の強化
 ジョブサポ-タ-の拡充等による採用意欲の高い中小企業と新卒者のマッチング 促進
 トライアル雇用・インターンシップの推進
 全都道府県労働局にワンストップで新卒者を支援する「新卒応援ハローワーク」 を設置
 既卒者の新卒枠での採用促進(「卒業後3年間は新卒扱い」)
 3年以内既卒者を採用する企業への奨励金創設
   など  

また、今年度から、新たに雇用を増やした企業に対する雇用促進税制が創設され、「雇用促進計画」をハローワークに提出し、1年間で5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、10%以上従業員数を増加させた企業については、一定の要件を満たせば従業員数の増加1人当たり20万円の税額控除 が受けられるようになりました。

さらに、本年10月から「求職者支援制度」がスタートします。この制度は、雇用保険を受給できない失業者に対し、無料の職業訓練(求職者支援訓練)を実施し、本人収入、世帯収入及び資産要件等、一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を容易にするための給付金を支給するとともに、ハローワークにおいて定期的な就職支援を実施するものです。また、本制度は、平成21年7月から本年9月までの時限措置として行われていた「緊急人材育成支援事業」の実施状況を踏まえ、恒久の制度として創設されたものです。

5 おわりに

県としては、雇用は県民生活の根幹であるとの認識のもと、今後とも、富山労働局や関係機関と連携し、雇用対策を迅速かつ着実に実施し、 雇用の安定が図られるよう万全を期してまいります。

とやま経済月報
平成23年9月号