ウエストナイル熱(脳炎)とは?

臨床症状
 ヒトにおける潜伏期間は3〜15日間。感染例の80%は不顕性感染(つまり、症状が現れないこと)で終わります。発症者の多くは急性の熱性疾患(発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振)で、約1週間のうちに回復します。
 重篤な症状として、頭痛、高熱および方向感覚の欠如、麻痺、昏睡、震え、痙攣などの髄膜炎・脳炎症状が挙げられますが、これは感染者の約1%と言われています。
 これら重篤な症状は、主に高齢者でみられ、致命率は重症患者の3〜15%とされています。
病原体
 ウエストナイル熱(脳炎)はフラビウイルス属のウエストナイルウイルス(West Nile virus)の感染で起こります。このウイルス名は、1937年アフリカのウガンダ(West Nile地方)で発熱患者からウイルスが初めて分離されたことにちなんでつけられました。このウイルスは、日本脳炎ウイルスとも近い関係(同じ属)にあります。
感染経路
 ウイルスの感染環は鳥と蚊によって維持されています。人や馬への感染は、ウイルスを持った蚊に刺されることにより起こることがほとんどで、それ以外には、輸血や臓器移植での感染も若干数報告されています。
 ウイルスは感染した鳥の血液中に多量に存在しますが、人の血液中にはそれほど多く存在しません。ですから、蚊が媒介する人-人感染の起こる可能性は極めて低いといえます。
 ちなみに、蚊が吸血するのは成熟期の雌だけで、雄は吸血しません。
治療・予防方法
 特異的な治療方法はなく、対症療法のみです。日本のように未だ発生の無い地域では、初期の段階でウイルス検査を迅速に行うとともに、死亡カラス等鳥類の把握により、ウイルスの侵入を早期に把握し、感染拡大を最小限にとどめることが重要です。また、海外旅行で流行地へ行く場合は、蚊に刺されないような対策を取る事も必要です。
感染症法による取り扱い
 4類感染症で全数報告。届出基準に合致するウエストナイル熱(脳炎)の患者及び無症状病原体保有者を診断した医師は、直ちに最寄りの厚生センター ・保健所へ届けて下さい。届出基準についてはこちら
富山県感染症情報センター