統計情報ライブラリー/生活・環境家計調査報告書
利用者のために

1 調査目的
 

 「家計調査」は、総務省統計局の所管として昭和21年7月から始められ、全国の世帯を対象として毎月の家計の収入や支出を調査するものである。
 この調査は、世帯で得た収入がどのようなものにいくら支出されたか、その支出の仕方が収入額や世帯人員・職業などによってどのように異なっているか、また地域別に支出がどのようになっているかなど、家計を通して国民生活の実態を明らかにし、経済政策や社会政策立案のための基礎資料を得るために行う調査である。


2 調査方法
 家計調査の対象となる世帯は、学生の単身世帯を除く全国の世帯である。しかし、全部の世帯を調査することは困難であり、その中から一部の世帯を抜き出して調査し、その結果から全国の家計収支を推定するという標本調査の方法を採用している。

(1)調査世帯の選び方
 調査世帯の抽出は、3段階に分けて行う。
 まず、全国の市町村の中から調査市町村を選び、次いでその市町村の中から調査単位区を選び、さらにその単位区に住んでいる世帯の中から無作為に調査世帯を抽出するという方法をとっている。調査世帯総数は全国8,821世帯(二人以上の世帯 8,076、単身世帯 745世帯)である。
 富山県においては、富山市(96世帯)、新湊市(24世帯)、小杉町(12世帯)の合計132世帯単身世帯について、冨山市(8世帯)、新湊市(2世帯)、小杉町(1世帯)の合計11世帯を対象として実施している。
 抽出された調査世帯は、世帯主の職業により次のように区分している。
  「勤労者世帯」とは、世帯主が会社、団体、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯をいう。ただし、世帯主が社長、取締役、理事など会社・団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」とする。「勤労者以外の世帯」とは、勤労者世帯以外のすべての世帯をいう。
 なお、平成11年7月から、二人以上の世帯に農林漁家世帯も含めて調査することとなり、さらに平成14年1月からは、これまで別途に調査されてきた単身世帯の家計収支の実態を把握する単身世帯収支調査、及び世帯の貯蓄と負債の現在高を明らかにする貯蓄動向調査が家計調査に統合された。
 農林漁家世帯、単身世帯については該当になった世帯が少ないことと、遡及的な時系列比較ができないので本書では二人以上の世帯のうちの農林漁家世帯を除く「全世帯」を中心に取り上げた。
 また、次項に述べるような標本誤差の影響を少しでも避けるため、項目別、品目別支出額等を全国あるいは他都市と比較する際には、できるだけ3年平均値を、時系列比較においては、3年移動平均を用いた。
(2)調査事項と調査期間

 調査世帯のうち、勤労者世帯及び無職世帯については家計上の収入と支出を、勤労者以外の世帯(無職世帯を除く)については家計上の支出のみを、それぞれ毎日品目別に「家計簿」に記入してもらう。
 また、記入開始後1か月目に記入開始月を含む過去1年間の収入を「年間収入調査票」に、3か月目には二人以上の世帯について、貯蓄や負債の現在高を「貯蓄等調査票」に、それぞれ記入してもらう。
 調査期間は、二人以上の世帯については6か月間、単身世帯については3か月となっている。
3 利用上の留意点
(1)この調査は標本調査であるので、本書の利用にあたっては、特に次の事項に注意されたい。
 @調査世帯は、標本数が少なく、かつ毎月逐次交替する世帯主の職業、年間収入階層についての変動が大きいこと。
  また、前年以前と比較する場合、調査世帯は別の世帯となっていること。
 A家計調査の標本世帯は全国すべての世帯の縮図となるように選ばれた世帯であるが、標本調査であるため、統計表の結果数値は国全体の世帯を全数調査して得られる数値とは必ずしも一致せず、「標本誤差」を伴うものであること。
 B富山市分については、標本世帯数が少ないため、標本誤差が大きいこと。
表2は、平成16年10月の1か月分のデータについて、標本誤差を示した結果であるが、年平均の場合では大体その1/3程度になることが見込まれる。
            
表1 平成16年家計調査集計世帯数
(非農林漁家世帯)
  富 山 市 全   国

全世帯

94 7,742
うち勤労者世帯 64 4,427

表2 標準誤差 (勤労者世帯・16年10月平均)         95%の信頼水準
        富 山 市 全  国
平均値(円) 標準誤差(円) 標準誤差率(%) 平均値(円) 標準誤差(円) 標準誤差率(%)
実収入  592,863  32,505 5.5 466,815 6,349 1.4
実支出  461,338 35,880 7.8 390,817 7,509 1.9
消費支出  382,929 32,494 8.5 324,273 6,830 2.1
うち食料 79,983 4,312 5.4 72,263 764 1.1


(2)本書の中で表示した数値は、その1桁下位を四捨五入しているので、内訳の合計は必ずしも計に一致しない。


※参 考

標本調査は母集団の一部だけを調べるため、多かれ少なかれ母集団との誤差が生じる。そのため、標本調査結果の精度を測定するために、その統計数字にどれだけの誤差を含んでいるかを把握する必要がある。
 具体的に例をあげると、平成16年10月の富山市の食料費の平均値が 79,983円で、その標準誤差(=標本平均の分布の標準偏差)は4,312円 となっている。この場合、富山市の母集団の食料費と標本調査の1世帯当たりの食料費の平均値79,983円との誤差は、その±4,312円の2倍 (8,624円)以下で、富山市のすべての世帯を調査した場合に得られる「 1世帯当たりの食料費」は71,359円から88,607円の範囲以内にあるということが95%の確率で言える。

(正規分布の場合、μ±σの範囲には度数の68%が含まれ、μ±2σの範囲には度数の95%が含まれる。)





4.用語の説明
・ 実収入 …… 税込み収入のことで、経常収入(勤め先収入、事業・内職収入、他の経常収入)、特別収入からなっている。
・ 実収入以外の収入 …… 預貯金引出、財産売却、保険取金、借入金など手元に現金が入るが、一方で資産の減少、負債の増加を生じるもので、分割払いや一括払いでの購入額も含む。
・ 実支出 …… 消費支出(生活費)と非消費支出(税金、社会保険料など)からなる。
・ 実支出以外の支出 …… 預貯金、財産購入、保険掛金、借金返済など手元から現金が支出されるが、一方で資産の増加又は負債の減少を生じるも のである。
 
 分割払いや一括払いでの購入は負債の増加であるため、まず、購入金額の全部を「実収入以外の収入」に分類し、同時に「消費支出」の該当項目に分類する。その後、分割払いをした場合やクレジットカードの利用額の銀行口座からの引き落としがあった場合には、「実支出以外の支出」に分類する。
・ 消費支出 …… 生活費のことで、食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、その他の消費支出の10大費目に大別され、商品やサービスの購入と一体となって徴収される消費税等も含む。
・ 非消費支出 …… 税金などのことで、これには勤労所得税、個人住民税、固定資産税などの直接税と社会保険料(国民年金、各種共済組合健康保険料など)等が含まれる。
・ 可処分所得 …… 実収入から税金、社会保険料などの非消費支出を差引いた額で、いわゆる手取り収入のことである。
    可処分所得=実収入−非消費支出

・ 平均消費性向 …… 可処分所得に対する消費支出の割合
    平均消費性向(%)=(消費支出÷可処分所得)×100
・ 黒字 …… 実収入と実支出との差でマイナスの場合は赤字を示す。
    黒字=実収入−実支出=可処分所得−消費支出
・ 黒字率 …… 可処分所得に対する黒字の割合
    黒字率(%)=(黒字÷可処分所得)×100
・ 貯蓄純増 …… 黒字のうち預貯金と保険の純増減を合わせたもの
    貯蓄純増=(預貯金−預貯金引き出し)+(保険掛金                −保険取得)
・ 平均貯蓄率 …… 可処分所得に対する貯蓄純増の割合
    平均貯蓄率(%)=(貯蓄純増÷可処分所得)×100
・ エンゲル係数 …… 消費支出に占める食料費の割合
    エンゲル係数(%)=(食料費÷消費支出) ×100
・ 持ち家の帰属家賃を除く総合の消費者物価指数 …… 住宅や土地の購入は、財産の取得であり消費支出ではないため、消費者物価指数には算入されていないが、持家の世帯も自分が所有する住宅からのサービスを現実に受けている。このサービスに相当する価値を見積もって、これを住宅費用とみなす考え方に基づいて、持家の住宅を借家とみなした場合に支払われるであろう家賃(持家の帰属家賃)を消費者物価指数に算入している。
しかし、家計調査では消費支出に「持家の帰属家賃」は含まれないため、それを除いた総合の消費者物価指数の変化率を用いて実収入、可処分所得及び消費支出を実質化している
・ 実質増減率 …… 名目増減率から消費者物価変動の要素を除いたもの。


参 考


5 収支の項目分類及び支出項目分類
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