T 消費生活相談の現状
富山県消費生活センター(以下、当センターという)に寄せられた平成25年度の消費生活相談件数は、6,279件(架空請求音声ガイダンス1,060件含む)で対前年度比は105.4%と9年ぶりに増加に転じました。
1 消費生活相談の推移(平成16〜25年度)
- ○年度別相談件数(図1参照)
- 平成15〜16年度に、はがきや封書などで、身に覚えのない有料情報利用料などを一方的に請求する「架空請求」の相談が全国的に激増し、相談件数は16年度には21,964件でピークとなりました。
- その後、官民一体となった被害撲滅に向けての取り組みにより平成17年度以降、架空・不当請求が沈静化し、それに伴い全体の相談件数は減少傾向にありましたが、平成25年度は9年ぶりに増加に転じました。
- また、65歳以上の高齢者の相談件数は、平成17年度をピークとして、以降毎年減少していましたが、平成24年度から増加に転じ、平成25年度では1,530件で全体の約4分の1を占め、前年度に比べ255件増加しており、全体の相談件数が増加した要因となっています。
- 2 商品、役務(サービス)別相談状況(平成25年度)(表1参照)
- 平成25年度において相談の対象となった商品と役務(サービス)の件数は、商品に関するものが、2,153件(全体の41.3%)、役務に関するものが2,808件(同53.8%)で、情報通信の発達に伴い役務に関する相談件数が、商品に関する相談件数を上回る傾向が続いています。
- 商品及び役務(サービス)に関する相談の状況は次のとおりです。
- (1) 商品に関する相談の主な事例には、次のようなものがあります。
- 1)食料品
- 心当たりのない業者から突然、「以前、注文された健康食品を届ける」と電話があり、「注文していない」と断ったにもかかわらず、強引に代金引換で送付するなどという健康食品の送りつけに関する相談や、冷凍食品の自主回収に関する問い合わせなどで、平成25年度では件数が大幅に増えました。
- 2)教養娯楽品
- 訪問販売で、新聞購読を強引に勧誘されたので解約したいという相談など。
- 3)商品一般
- 商品の種類が特定できず、何の代金として請求されているか不明であったり、身に覚えのないはがきや電子メールによる架空請求の相談などで、平成25年度では件数が大幅に増えました。
- (2) 役務(サービス)に関する相談の主な事例には、次のようなものがあります。
- 1)運輸・通信サービス
- インターネットでアダルト情報サイトや出会い系サイトにアクセスしてしまい、多額の料金を請求されたという不当請求や架空請求に関する相談、電話勧誘で強引に契約させられた光回線の解約に関する相談など。
- 2)金融・保険サービス
- 多重債務に陥った本人や家族からの債務整理の相談、投資(社債・未公開株等)に関する相談など。
- 3)他の役務
- 結婚相手紹介サービスに関する解約や信用性に関する相談、新聞・雑誌への広告掲載の強引な電話勧誘や契約・解約に関する相談など。
- (3) 消費者金融について
- 商品・役務に関する主な相談内容のうち、金融・保険サービス欄の「フリーローン・サラ金」に関する相談は254件(対前年度比73.2%)でした。
- 貸金業法等の改正(*)に伴い、多重債務の相談は減少傾向にあります。そのうち、借入金の整理方法に関する相談が102件と最も多くなっています(全体の29.4%)。
図2 金融相談件数の推移(平成16〜25年度)
※図をクリックすると大きく表示されます
- 多重債務の相談は、法律専門家につなぐことが大切であり、当センターでは、相談員が相談者の債務状況の聞き取りをした上で、直接、法律専門家に予約を入れる方法をとっています。
- (*)
- 多重債務に対応するため、多重債務の原因となる高金利の是正や、借り過ぎ防止のための総量規制の導入を柱とした法改正が行われました。(平成18年公布、平成22年6月22日全面施行)
- 3 販売購入形態別相談件数(平成25年度)
- 商品などの販売購入形態別相談数を「店舗購入」と「店舗外販売」でみると、「店舗購入」が1,416件で対前年度比102.2%、「店舗外販売」は2,759件で対前年度比117.3%となり、内訳は以下のとおりです。
- 「電話勧誘販売」の増加の要因は健康食品の送りつけに関する相談が急増したためです。
- (*1)
- 「訪問購入」とは、購入業者が消費者の自宅等の営業所等以外の場所において、売買契約を締結し物品等を購入しようとする取引形態。平成25年2月の法改正により統計を取り始めているため、前年度比較はしない。
- (*2)
- 「ネガティブ・オプション」とは、注文をしていないにも関わらず商品を一方的に送りつけ、購入しなければならないものと勘違いさせて支払わせることを狙った商法。
- 4 年代別相談件数の比較(平成16、25年度)
- 年代別の構成割合(図3参照)をみてみると、平成16年度では39歳以下の相談件数が全体の49.7%と約半分を占め、60歳以上の相談件数は15.1%でしたが、平成25年度では、39歳以下が25.3%に減少し、一方、60歳代以上が44.3%となり、全体に占める割合が大きくなっています。
図3 相談件数の年代構成(H16年度とH25年度の比較)
- (*)
- それぞれの年度の件数には、音声ガイダンスと年齢不明の件数は含まれていない
- 5 高齢者(65歳以上)の相談について
- 消費者トラブルは、年齢など消費者の特性ごとに特徴が見られますが、近年高齢者からの消費者トラブルは、相談件数で大きな割合を占めるようになっています。(図1参照)
- ここでは、65歳以上の高齢者の消費者トラブルについて見ていきます。
- 平成25年度の65歳以上の相談件数が増加した要因としては、健康食品の送りつけに関する相談が大幅に増えたことによりますが、この他にも、「未公開株や怪しい社債・権利、事業への投資、ダイヤモンドや金などの購入をもちかける電話があり、勧誘に応じて多額のお金を支払ったが、支払後に業者と連絡が取れなくなってしまった。(電話と前後してパンフレット等が送付されます。)」といった、いわゆる怪しい投資に関する『劇場型の電話勧誘』による詐欺的手口で多くの高齢者が狙われています。
- また、インターネットを利用して無料のアダルトサイトを開いたところ、高額な登録料を請求されたなどの不当請求に関する相談も多く寄せられました。
- 高齢者の消費者トラブルが増加している背景として、高齢者はだまされたことに気付きにくく、また被害にあっても誰にも相談しないといった特徴があります。
- さらに、高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの大きな不安を持っていると言われており、そういった不安に悪質業者がつけ込んでくるケースが多く見受けられます。
- 中でも、一人住まいの高齢者は、情報量が不十分であったり相談相手が身近にいないなど、被害が深刻になる傾向があります。
- このため、高齢者の消費者トラブルの未然防止・拡大防止のための対策が重要となってきています。
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