消費生活相談の現状と対策について
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はじめに近年、消費者トラブルが急増し、また、その内容も多様化・複雑化するなど、消費者を取り巻く社会環境は大きく変化しています。 県消費生活センターに寄せられた平成19年度の消費生活相談件数は、10,037件でした。(対前年度比94.0%、架空請求音声ガイダンス1,070件含む) 平成17年度以降、相談件数は減少傾向にあるものの、依然として1万件を超える高い水準で推移しています。 消費者の安心・安全なくらしを実現することは大変重要であり、本稿では、消費生活相談の現状と課題について考えながら、県が実施している消費者トラブル防止のための施策を紹介します。 |
T 消費生活相談の現状と課題1 消費生活相談の推移(平成9年度〜19年度)(1) 年度別相談件数の推移![]() 平成15〜16年度に、はがきや封書などで、一方的に身に覚えのない有料情報利用料などを請求する「架空請求」の相談が、全国的に激増しました。 国や県で対策を講じたことなどから、平成17年度以降、架空・不当請求が沈静化し、それに伴って相談件数全体の減少傾向が続いています。しかし、5年連続1万件を超える高水準が続いています。 また、公的機関を名乗る還付金詐欺や、携帯電話の無料メールを悪用した架空請求など、新たな手口の出現や、商品・サービスの多様化などに伴い、相談内容が多様化・複雑化する傾向(*1)が続いています。
(*1) 多様化・複雑化傾向の例としては、次々販売商法(*2)の相談の増加(平成18年度103件、平成19年度140件) や、インターネット関連サービスにおける決済システムの複雑化などがあげられます。 (*2) 次々販売商法:高額な商品を買わされるなど一度被害に遭った消費者に対し、業者が次々と商品等を販売する行為を繰り返し、消費者の被害がどんどん拡大していく商法。
(2) 年代別相談件数の推移![]() 年代別の相談件数を10年前と比較すると、高齢者の相談が大きく増加しています。(60歳代1.8倍、70歳以上3.3倍) ![]() 年代別の構成割合をみると、平成9年度は、20歳代の相談件数が全体の25%、70歳以上の相談件数が全体の5%でしたが、平成19年度は、20歳未満を除き、どの年代の相談件数も全体の11%〜21%であり、各年代の相談件数が平準化傾向にあります。
(3) 販売形態別相談件数の推移![]() 平成9年度と平成19年度の相談を、主な販売形態で比較すると、「通信販売(*4)」の相談は5.8倍も増加しています。 「訪問販売」と「電話勧誘販売」は増減が少なく、この10年間コンスタントに相談が寄せられています。
(*3) ネガティブオプションとは、注文をしていないにもかかわらず、商品を一方的に送りつけ、購入しなければならないものと勘違いをさせて支払わせることを狙った商法。 (*4) 通信販売には、インターネット関連の不当請求・架空請求や、インターネットショッピングやオークションに関する相談などが含まれます。 |
2 消費者トラブルの特徴消費者トラブルは、年齢など消費者の特性ごとに特徴が見られますが、特に、若者・高齢者・障害者に深刻な被害が目立ちます。
(1) 若者(10代・20代)の消費者トラブル携帯電話やパソコンの急激な普及に伴い、インターネット関連の相談が最も多く、次に消費者金融の相談が多くなっています。
若者の相談事例には、次のようなものがあります。
○インターネット関連の相談
○会員権の二次被害の相談
○消費者金融関連の相談
(2) 高齢者の消費者トラブル架空請求の沈静化に伴う相談件数の減少傾向は、高齢者の相談件数についても同様です。しかし、65歳以上の高齢者の相談件数を、架空請求を除いた件数で見てみると、高止まりの状態が続いていることが分ります。 ![]() 高齢者の消費者トラブルの特徴として、@被害に遭ったことに気づきにくい、A被害に遭っても相談しないという点があげられます。こうした特徴があるため、被害が深刻化してしまう傾向があります。 たとえば、次々販売の相談(対前年度比104.4%)や、判断能力不十分者の相談(同167.5%)が増加しています。 また、判断能力不十分者が次々販売の被害に遭うという、非常に深刻な相談は、平成18年度17件、19年度25件と増加し、中でも、70歳以上の相談は、平成18年度10件、19年度21件と、2倍以上増加しています。
高齢者の相談事例には、次のようなものがあります。
○次々販売の相談
○催眠商法(SF商法)の相談
○結婚相手紹介サービス契約の相談
○投資の相談
(3) 障害者の消費者トラブル障害者の消費者トラブルの特徴として、@情報が不十分であることなどから、未然防止や問題解決が難しいことが多い、A判断に支援が必要な場合、だまされていることに気づきにくい、B全般に、被害に遭っても相談しない、などの傾向があり、深刻な被害拡大に繋がっています。
障害者の相談事例では、「会員になれば高額の配当を得られる」と勧誘され、CD―ROM購入名目で現金を騙し取られる被害が、全国で発生しました。 これは、障害者を狙ったマルチ商法の被害で、聴覚障害者同士のつながりや信用を逆手に取ったものです。相談されたのは少数でしたが、実際は、もっと被害者がいると思われるケースでした。
このような消費者トラブルをくい止めるためには、情報提供と関係機関の連携が重要です。特に高齢者や障害者の場合は、本人への情報提供を十分に行うとともに、家族やまわりの方々に日頃から本人の様子を気にかけていただき、地域の機関と連携して見守っていくことが大切です。
(4) 消費者金融に関する相談平成19年度の消費者金融に関する相談件数は、1,304件(対前年度比82.6%)でした。 借入金の使途別では、「生活費」と「遊興費」が全体の約7割を占めています。 相談内容では、多重債務の整理方法についての相談が最も多く、貸金業法等の改正に伴って、法的知識に関する相談も多くなっています。 ![]() ○多重債務問題の深刻化
○多重債務は、法律専門家につなぐことが大切
センターでは、相談員が相談者の債務状況の聞き取りをした上で、直接、法律専門家に予約を入れる方法をとっています。 |
U 消費者トラブル防止のための対応策こうした消費者トラブルの現状から、
このため、当センターでは消費者トラブルの防止のため、次の対応方針で臨んでいます。
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1 関係機関の連携の強化 |
2 消費者啓発の充実消費者被害の未然防止と早期救済のために、各年代を対象に、次のような啓発事業を行っています。特に、高齢者の消費者トラブル防止のために、平成20年度から重点的に、「老人クラブ悪質商法撃退教室」を実施しています。
(1) 出前講座の実施富山県消費生活推進リーダー(*5)等による「消費生活出前講座」や「老人クラブ悪質商法撃退教室」、「高校生等のための消費生活講座」
(*5) 富山県消費生活推進リーダー:出前講座の講師として、県民からの公募による富山県消費生活推進リーダー(現在20名、知事委嘱、任期2年)が活躍しています。最近では悪質商法の寸劇や替え歌など、より親しみやすい講座の工夫に努めています。
(2) 夏休み子ども生活・科学教室小学生を対象に、金銭感覚や科学的な目を養うための実験実習教室
(3) 商品テストの実施苦情相談のあった商品の原因究明を行う苦情テスト(19年度は13件)や、日常生活用品の安全性などに関する商品試買テスト(19年度は「非常持ち出し袋」を北陸三県共同で実施) |
3 不当取引事業者の指導強化消費者被害から県民のくらしを守るためには、相談の充実や広報啓発による未然防止とともに、事業者の不当取引行為を適正化していくことが大切です。 県民からの相談を聴取し、不適正な取引行為が見られた場合に、事業者への指導(年間100件程度)を行っています。 また、禁止する不当取引行為の対象を拡大し、調査規定等を新設するなど、「富山県民の消費生活の安定及び向上に関する条例」を改正し、これまでに、行政処分を2件実施しました。
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おわりに消費者トラブルに遭っても、実際に相談窓口に相談する人は5%程度にしかすぎないという、国民生活センターの調査があります。 昨今の消費者トラブルは、誰でも被害に遭ってしまう、恒常的に生じる社会現象であるとも言えます。 県民の皆さんには、被害に遭ったら、自分に落ち度があったなどと思わず、早めに、気軽に、相談窓口へ相談していただきたいと思います。 消費生活センターのホームページでは、県内で直近に起こった消費者トラブルと対処法を掲載していますので、参考にしてください。 |
富山県消費生活センターホームページ |