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八 尾 正 治


氷見市の巻(その4)

 氷見のフレッシュなムード詞歌謡曲に、海の歌が目立って多い。まず「寒ブリのうた」は、昭和55年の発表。作詞は宮沢章二、作曲は富山出身の岩河三郎である。


ブリは大海だ 氷見の海

寒ブリのうた

しぐれて しぐれて 氷見の海
雪降る  雪降る  氷見の海
ぶんぶんブリ ぷるんぷるんブリ
氷見の海は  ブリの海だよ

真冬の暗い空に ブリ起こしのかみなりが
荒れて とどろいて ブリを呼ぶ
ぷんぷんブリ  ぶりんぶりんブリ
ブリたちが来る 群れをなして来る
来る 来る 来る

氷見の海原は ブリの通り道
押し合い へし合い ブリたちの大群が
寄せて来る 来る 来る 来る
海のいのちが あふれて
生きてる 跳ねてる 寒ブリ

こぼれる涙も あるだろうに
大きな目玉を 見開いて
力いっぱい  つめたい海を
泳いで育った 越の寒ブリ

ひえるよ ひえるよ 氷見の海
雪降る  雪降る  氷見の海
ぷんぷんブリ ぶりんぶりんブリ
氷見の海は  ブリの海だよ

鰤の海

(1)しぶき砕けて くり出す船の
   向こう 鰤綱 朝日が昇る
   おれも ヤブツも 櫓櫂を抱けば
   ソレ 早い潮路に 早い潮路に
   鰤が湧く

(2)おれも おやじも ご先祖さま
   浜で育って 海原暮らし
   どうせ漁師の 意気地をひいた
   ソレ 手繰る鰤綱 手繰る鰤綱
   男唄

(3)命綱張る 夜明けの沖で
   魚とるしか 知らないおれさ
   恋も未練も 忘れる息吹き
   ソレ 待つは鰤綱 待つは鰤綱
   男唄

 続いて同様、ブリを主題にした「鰤の海」は、昭和59年ごろに作られたもののようだ。平成5年に大々的に発表され、KNB興産の音楽映像事業部が製作に当たり、東芝から発売されている。作詞は地元の能坂利雄、作曲は三山敏、編曲は吉永豊で、山川豊が歌っている。

 

 同時発表された「灘浦慕情」は、「鰤の海」と作詞者、作曲者は同じ。ただし編曲が斉藤恒夫、歌手は八汐亞矢子である。発売も「鰤の海」と同じ系統である。


虹ガ島は、北方系と南方系の動植物の宝庫

灘浦慕情

(1)すぐに帰ると   いいながら
   ツママの下の   約束も
   遠い思い出    アイの風
   オリオン星座か  いか釣る舟か
   アー 暗い波間の 暗い波間の
   かもめ鳥

(2)小岩に咲いた   あの花は
   お前の髪に    似合うだろ
   あんなに燃やして おきながら
   あしたは能登か  佐渡沖あたり
   アー 灘浦おぼろ 灘浦おぼろ
   いぶし雨

(3)虻が島さえ 夫婦(みょうと)沖
   あきらめきれぬ 未練酒
   何故に別れる 指でかく
   霧もふるふる 沖ゆく汽笛
   アー 待つているよと 待つているよ
   つぶやく

望郷・氷見

海猫群れ飛ぶ    日本海
鰤のふるさと    鰤の海
氷見は魚の     都だよ
恋しさつのらす   富山湾

沖合い飾った    漁り火は
明日へ命を     灯す灯よ
祇園祭りは     懐かしい
帰るとも 帰るとも 望郷の町へ

その手に離すな   雨傘を
たとえ弁当     忘れても
氷見に生きてる   土地言葉
逢いたいあの娘の  顔も浮く

おやじと一緒の   漁船で
根性磨いて     見たいもの
白い立山      海が呼ぶ
帰るとも      帰るとも

望郷の町へ 仲間と渡った 中の橋
夢にも出てくる   虻が島
うまい地酒に    酔いたいさ
帰るとも 帰るとも 望郷の町へ

 海に歌によまれたツママは、氷見海岸に多いたぶの木のことである。 「望郷氷見」は、平成4年7月東芝から発売のカラオケ。荒川利雄作詞。作曲は新湊市出身の聖川湧。編曲は前田俊明である。窒まさのりが歌っている。
 「厳冬・富山湾」は、平成6年5月製作のもの。奥村和弘作詞、宮野晃一作曲、鳶○包編曲。海の歌をうたわせては天下一品の味を出す、鳥羽一郎が豪快に歌っている。

厳冬・富山湾

(1)能登の岬に   雷鳴れ
   船をくり出す  夜明け前
   雪のつぶての  頬たたかれて
   ヨイショ ヨイショで 網おこそ
   ブリでわきたつ ブリでわきたつ
   富山湾

(2)肌を突きさす  真冬の海も
   ブリが男を   熱くする 
   ねじりはちまき 掛け声たかく
   ヨイショ ヨイショで たぐる網
   氷見の港は   氷見の港は
   雪化粧

(3)よそへ嫁いだ  娘のもとへ
   おくるでつかい 出世魚
   海が荒れれば  みいりも多い
   ヨイショ ヨイショで ブリをとる
   寒さ厳しい   寒さ厳しい
   富山湾

氷見港

(1)呼べば切れそな 未練の糸が
   愛し切れない もどかしさ
   風が女を 風が女を
   灘の漁り火 氷見港
   泣けば 泣けば 浪の花闇に散る

(2)阿尾の城跡 あの日はふたり
   桜 舞い散る 朝日山(あさひやま)公園
   遠いあの日は もう夢ですか
   夢でないなら もう一度
   つれて つれて 来ておくれ 春の夜を

(3)能登の七尾で はぐれた恋を
   たぐり寄せれば 痛む胸
   おんな蛍火 命火燃えて
   波の花咲く 富山湾
   
泣いて 泣いて 砕け散る 虻が島

「氷見港」は、平成9年4月製作のもの。中島聖二(清次)作詞、日野谷龍一作曲、池多孝春編曲である。


祇園祭りのちょうちんや山草
(平成11年・北日本新聞提供)

 最後に「氷見旅情」は、ビクター・レコード吹込みのもので、鈴木貴一朗の作詞作曲である。なんといっても氷見の魅力は海、そして魚がブリのようだ。このように新作の歌謡曲は、富山市や高岡市に比べて目立って多い。

氷見慕情

(1)ささやく浪が 夕暮れをはこび
   かすむ岬に 入り日の影…
   たたずむひとよ あの夢の日々を
   偲んでいるのか 雨晴

(2)波止場に白く あわだち われて
   往く秋ひとつ 消えた恋…
   遠いあのひと この胸のうちを
   伝えてほしいの 氷見の海

(3)陽射しが波に たわむれ跳ねて
   やがて還るなら わたしは称ぶでしょう
   そして待ちます 阿尾の城

 

−おわり− (富山県郷土史会長)

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