A群レンサ球菌咽頭炎情報


 子供がかかりやすい病気で、一般的に突然の発熱、全身倦怠感、咽頭炎を伴って発症する。
放置すると、心臓や関節などに炎症を起こすリウマチ熱や、腎炎を起こすことがあるので確実な診断と治療が必要とされる。

症 状

・ 咽頭炎:のどの痛みを感じる。最も一般的な症状である。
・ 発熱
・ 発疹:ごく細かい発疹で、からだが全体的に赤くみえることがある。
     首、わきの下、胸、腹部に出ることが多い。
・ 苺舌:舌が赤くザラザラしたイチゴ様になる。

病原体



写真1 血液寒天培地上に発育したA群レンサ球菌

  集落の周囲に透明な溶血環が認められる

 



写真2 A群レンサ球菌の顕微鏡写真(グラム染色)
1目盛りは1μm

 


診 断

 咽頭を綿棒でこすって培養検査を行い、菌を分離することが基本であるが、数分で結果の出る迅速診断キットも利用できる。

治 療

 第一選択薬であるペニシリン系抗生剤(アンピシリン、ペニシリンGなど)がよく効く。ペニシリン系にアレルギーがある場合はエリスロマイシンが勧められる。また、第一世代のセフェム系(セファゾリン等)も使用可能である。いずれの薬剤も、合併症(リウマチ熱、急性糸球体腎炎等)予防のため、1週間から10日間の内服が必要である。発症後2週間程度で一度尿検査を受け、腎炎の発症が無かったか確認する方がよい。

予 防

 患者との濃厚接触をさけ、うがいや手洗いなどが大切である。


表1 患者由来A群レンサ球菌分離株の年次別T血清型分布(富山県)
年次 T                          型 合計
11 12 13 18 22 25 28 B3264 lmp.19 5/27/44 14/49 型別不能
1990 14 - 1 26 8 - 1 3 22 - 1 - - 16 3 - - - 23 118
1991 20 - - 20 - 1 3 4 51 1 - - - 12 15 - - 2 9 138
1992 21 - 14 19 - 1 - 2 6 3 4 - - 4 15 - - - 13 102
1993 18 - 21 18 - 2 1 2 14 - - - - 6 6 - - - 9 97
1994 12 - 17 14 - 1 - 1 34 - 2 - - 7 3 - - - 6 97
1995 8 1 12 19 - - - - 9 - - - - 5 3 - - - 4 61
1996 7 31 2 4 - - 1 2 11 1 - - - 5 7 - - - 8 79
1997 32 18 - 4 9 - - 2 15 1 - - 2 9 2 - - - 6 100
1998 9 13 1 10 22 - - - 25 1 - - 3 5 1 - - - 5 95
1999 5 4 - 3 3 - 1 1 28 2 - - 3 5 3 - - - - 58
2000 18 1 - 9 - - - - 17 4 - - 7 8 10 - - - 3 77
2001 32 2 7 35 1 1 3 2 12 - 1 1 11 9 11 - 3 0 8 139
2002 10 1 31 20 1 - - - 5 2 - - 17 3 4 - 0 0 3 97
2003 20 3 22 6 1 - - 2 11 6 - - 11 7 5 2 3 - 10 109
2004 4 0 1 1 1 - - 1 15 2 - - 6 8 1 - - - 7 47
合計 230 74 129 208 46 6 10 22 275 23 8 1 60 109 89 2 6 2 114 1414

 1990〜2004年の間に富山県内2ヶ所の公立病院で患者から分離されたA群のT型別分布の変遷をみると、 T1、T4、T12型が長期間高い検出率を示していた。

平成16年度 溶血レンサ球菌感染症流行予測調査 (富山県)

 溶連菌による感染症の流行状況を把握し,将来の流行を予測することを目的として,患者から分離された溶連菌について血清型を調べるとともに,保育所園児の溶連菌保菌状況を調べた.その結果,以下の成績を得た.

 1.2004年(平成16年)に県内2病院において患者から分離された溶血レンサ球菌はA群47株,B群174株であった.A群で検出率が高いT型は,順にT12型(15株,31.9%),T28型(8株,17.0%),T25型(6株,12.8%),T1型(4株,8.5%)であった.前年(2003年)と比較して、T12型とT28型が増加し、T1型、T3型、T4型は減少していた。また,B群で検出率が高い型は,順にNT6型(29.9%)、Tb型(20.7%)、X型(12.6%)、JM9型(11.5%)、Ta型(9.2%)であった。近年、JM9型が減少傾向にある。

  2.2005年1〜2月に富山県内の東西2ケ所(黒部市,小矢部市)の保育所の園児の咽頭ぬぐい液について溶血レンサ球菌を検査した.小矢部市内の保育所では41名中2名(4.9%)が菌陽性で,検出菌はB群Tb型1株,C群1株であった.黒部市内の保育所では37名中3名(8.1%)が菌陽性で、検出菌は,A群T1型2株,A群T型別不能1株であった.

 

富山県衛生研究所は衛生微生物協議会溶血レンサ球菌レファレンスシステム 東海・北陸ブロック支部センターとなっております。A群レンサ球菌のT、M型別試験、および劇症型A群レンサ球菌感染症に関する情報についての窓口になっておりますので、お問合せをお願いします(担当:細菌部)。

平成15年度溶血レンサ球菌レファレンスセンター報告書は下記の国立感染症研究所のホームページからご覧下さい。

国立感染症研究所感染症情報センターホームページ(話題の感染症)
http://idsc.nih.go.jp/pathogen/index.html

担当 : 細菌部 田中 大祐

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