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ライム病について

  1. 概要
    ライム病は、1975年に米国コネチカット州のライム地方で見つかったマダニ媒介感染症である。
    ライム病はわが国の感染症法上の四類全数把握疾患となっており、医師はライム病を診断した場合には、届出を直ちに行わなければならない。

  2. 病原体
    ライム病の病原体はBorrelia属細菌(スピロヘータ)で、野鼠や小鳥などを保菌動物とし、Ixodes属のマダニによって媒介される。
    米国では B.burgdorferi、欧州では B. burgdorferi, B.garinii, B. afzelii が主要な病原体となっている。日本では B.garinii, B. afzelii が主要な病原体である。

  3. 疫学
    日本では1987年に長野県で第1例が見つかった。国内では年間5〜30例程度の報告がある(図)。
    ライム病を媒介するシュルツェマダニは、北海道では全域に生息しているのに対して、本州では標高の高い地域(概ね標高1,000m以上)にのみ生息している。
    このため、国内症例は北海道からの報告が多い。富山県内では2001年と2006年に各1症例が報告されている。
    2001年に報告された症例は、右上肢内側のダニ咬傷から7日後に刺咬部周囲に紅斑が出現した典型的な皮膚所見を呈していたとされている(加治ら.皮膚臨床45(2):113〜116, 2003)。
    富山県の標高の高い地域で採取したシュルツェマダニの B.garinii / B. afzelii の陽性率は、2003年には12%(5/43)、2017年には8%(3/37)であった。

    ※届出症例数のデータは、国立感染症研究所HPから引用

  4. 臨床症状
    1. 感染初期:マダニ咬傷から数日〜数週の潜伏期を経て、咬傷部を中心として特徴的な遊走性紅斑を形成、数日から数週で消退する。発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹等がみられる。
    2. 播種期:数週〜数ヶ月後に病原体が全身に播種し、神経症状(脳神経症状など)、眼症状(ぶどう膜炎など)、心疾患(不整脈等)等の症状がみられる。
    3. 慢性期:数週〜数年にわたり、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎など慢性症状がみられる。

  5. 診断
    1. 本症を疑う要件:本症の地理的分布、好発時期(5〜7月)、発症前の行動(山歩きなど)、ダニ咬傷の有無、特徴的な遊走性紅斑等の皮膚所見(紅斑を欠く症例もあるので注意が必要)等。
    2. 検査室診断:紅斑部の皮膚生検からボレリアを分離培養(BSH-H培地)またはPCR法にて検出する。
      または、蛍光抗体法、酵素抗体法、ウエスタンブロット法により血清中の特異抗体を検出する。

  6. 治療と予防
    ドキシサイクリンを含むテトラサイクリン系薬、ペニシリン系薬、マクロライド系薬が有効とされている。
    髄膜症状を伴うライム病では、髄液移行のよいセフトリアキソンが選択される。
    予防については、マダニ棲息地域に入る場合には、ダニ付着阻止用の長袖、長ズボンを着用する。



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