結 核 情 報


 結核は結核菌による感染症です。結核菌は、結核患者の咳やくしゃみで空気中に飛沫と共に飛び、別の人の肺に吸い込まれることによって感染します。お年寄りや免疫力の弱まっている人が感染すると発病する危険性が高いです。
 厚生省(当時)が取りまとめた結核の統計によれば、1997年から1999年まで3年連続で結核の罹患率が上昇しています(富山県の統計は後に表示)。厚生省(当時)は、1999年7月に「結核非常事態宣言」を発令し、国民、関係機関に対策の充実・強化について協力を求めています。

症 状

 ・最初のうちはかぜとよく似た症状です。咳や痰が止まらず、微熱が続き、だるさ、寝汗、胸の痛みなどの症状が出ます。ひどい場合は血痰がでたり、喀血したりします。結核菌の増殖で肺に空洞ができ、それがどんどん大きくなり、最後は呼吸困難で死亡することになります。
 ・肺にできた病巣から結核菌が移行し、髄膜炎、腹膜炎、腎結核、骨間接結核などの肺外結核を起こす場合もあります。結核の90%が肺結核で、残り10%が肺外結核です。 
 ・結核は通常比較的ゆっくり進行しますが、抵抗力のない乳幼児が多量の結核菌を吸い込むと、あっという間に重症化することがあります。 

病原体

        

診 断

 抗酸菌感染症の診断、さらに結核症と非結核性(非定型)抗酸菌症の鑑別を早期にすることは、治療法の選択と予後の推測に極めて重要です。患者の基礎疾患、臨床症状、あるいは種々の画像診断や、臨床医の判断によってある程度は鑑別が可能ですが、最終的には起因菌を検出し、その細菌学的な同定により診断が確定します。迅速な起因菌の決定のために、従来からの検体の塗沫・培養・同定検査に加え、最近では遺伝子検査が適用されています。

・ 塗沫検査(チール・ネルゼン法等)

喀痰などの臨床材料を塗沫し、抗酸性染色を行い顕微鏡で観察することが抗酸菌を検出するうえで最も簡便で迅速な方法です。排菌の有無ないしその程度を知ることは、患者管理や治療効果の判定で重要です。

・ 分離培養法(小川培地、MGIT等)

分離培養法は、検体からの抗酸菌の検出感度が塗沫染色法よりも高く、また分離菌を用いて菌種の鑑別・同定や薬剤感受性試験なども行うことができます。

・抗酸菌の同定 

培養可能な抗酸菌は結核菌群と非結核性(非定型)抗酸菌に分けられます。結核菌群のうち主要なものは結核菌でヒトからヒトへの強い感染性を有します。一方、非結核性抗酸菌のうち主要な 菌種は、M.avium,M.intrancellulare, およびM.kansasiiですが、結核菌に比べるとはるかに弱毒で、ヒトからヒトへの感染性はないとされています。

・ 核酸増幅法

 結核菌は培養に長期間を要するので核酸増幅法を用いた新しい迅速診断技法が開発されてきました。内容的には結核菌のDNAを増幅する方法とRNAを増幅する方法の2つに分けられます。

治 療

結核の治療は、化学療法を中心とする内科的療法が基本であり、外科療法の適応は多剤耐性例、慢性膿胸例などで全身状態が手術に耐えられる例に限られます。病巣内の結核菌の排除のためには長期(標準的には6〜9ヶ月)にわたる抗結核薬による治療が必要です。耐性菌の発生を防ぐために複数の薬剤による併用療法が取られています。

B C G

BCGは結核の重症化を防ぐためのワクチンで、毒性を弱くした牛型結核菌を用いています。肺結核の50%を防ぎ、また、特に重篤な結核症である髄膜炎や粟粒結核を80%以上防ぐと言われています。生後できるだけ早い乳幼児時期にBCG接種が望まれます。

富山県における新登録者と罹患率の年次推移

 
年次 新登録患者数 罹患率
平成10年 350 31.1
平成11年 354 31.5
平成12年 323 28.7
平成13年 272 24.3
平成14年 264 23.6
平成15年 212 19.0
平成16年 217 19.4

  罹患率は人口10万人対。平成16年は概数。




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