特集

商業統計(小売業)からみた富山の姿(2)

総合県税事務所自動車税センター(前統計調査課)山1信治

 4月号では、産業分類別及び商品分類別により小売業の動向をみてきましたが、本号では産業分類別と業態分類別との関係により、小売業の動向をみてみます。

IV 業態別の動向〜増加が続くドラッグストア〜

業態分類表(PDF)はこちらです。

1 金物・荒物小売業とホームセンターとの関係

 金物・荒物小売業の事業所数は、平成19年121事業所で、平成14年の209事業所と比較すると、約4割(▲88事業所減、▲42.1%減)減少しています。

 昭和40年代後半に誕生したホームセンターは、主に住宅を改修する工具、建築資材、住宅設備品、園芸用品、作業着などを販売、昭和50年代からはさらに日用雑貨、インテリア、アウトドア用品など生活関連商品を取り扱うようになりました。

 富山県のホームセンターの事業所数を規模別にみると、売場面積1,000m²以上が平成19年は31事業所で全体の56.4%(平成16年は42.9%)を占め、従業者数20人以上が平成19年は21事業所で38.2%(平成16年は35.7%)を占めています。

 また、事業所数は平成14年の66事業所から平成19年の55事業所へと▲16.7%減少していますが、1事業所当たりの売場面積は平成14年の1,695.8m²から平成19年の2,184.2m²へと28.8%増加しており、集約化・大型店化が進んでいます。(表4-1、表4-1a、図4-1、図4-1a)

 なお、富山県のホームセンターの世帯当たり事業所数は、全国第12位(平成19年)と高くなっており、4月号のIで前述した持ち家比率が全国第1位と高いことなど、家へのこだわりが窺えます。

表4-1 金物・荒物小売業の事業所数等の状況
表4-1a ホームセンターの事業所数等の状況

(注)ホームセンターとは、住関連スーパー(売場面積250m²以上で、セルフ方式を採用している住(自動車・自転車小売業、家具・じゅう器・機械器具小売業、その他の小売業)に格付けされたもの)のうち、金物小売業+荒物小売業+苗・種子小売業が0%を超え70%未満のものをいう。

図4-1 産業分類別金物・荒物小売業と業態分類別ホームセンターの事業所数の推移(H14=100)

(注)平成14年から業態分類にホームセンターが新設された。

図4-1a 金物・荒物小売業とホームセンターの事業所数の推移(富山県)

2 医薬品小売業(調剤薬局を除く)とドラッグストアとの関係

 平成11年調査以降、無店舗販売(医薬品配置販売業・行商等)が調査対象に加えられたため、医薬品小売業は平成11年に大幅に増加しています。その後、医薬品小売業は減少し続けていますが、平成14年に産業分類に新設された調剤薬局は大幅に増加しています。

 医薬品小売業の事業所数は、平成19年は767事業所で、平成14年の1,189事業所と比較すると、約4割弱(▲422事業所減、▲35.5%減)減少しています。

 一方、ドラッグストアは昭和62年に誕生し、医薬品、化粧品、日用雑貨などを割安価格で販売して急成長していたことから、平成14年以降業態分類別に統計をとり始めています。

 平成19年の富山県のドラッグストアの事業所数は、売場面積250m²以上が103事業所で全体の75.7%(平成16年41.6%)を占め、従業者数10人以上が74事業所で54.4%(平成16年64.0%)を占めています。

 また、1事業所当たりの売場面積は、平成14年の329.8m²から平成19年の607.7m²へと84.3%増加しており、大型化が進んでいます。

 平成19年の事業所数は、富山県が増加(対平成14年比20.4%増)、全国は減少(同▲13.4%減)しており、富山県と全国とは異なる動きとなっています。(表4-2、表4-2a、図4-2、図4-2a、図4-2b)

 ところで、平成21年6月1日から改正薬事法の施行により、一般用医薬品(大衆薬)の販売方法が変わりました。一般用医薬品は副作用リスクの高い順から第1〜3類に分類され、リスクが比較的低い第2、第3類は登録販売者も店頭で販売できるようになる一方、第1類は安全性確保のため引き続き薬剤師しか扱えないこととなりました。

 これにより、“売薬さん”も新たに配置販売業の許可を受ける際は、薬剤師又は登録販売者の資格が必要となりました。

 最近では、ホームセンター・スーパー・コンビニエンスストア・家電量販店などが登録販売者を活用して一般用医薬品の販売に本格参入してきており、これまで同業者だけだった競争相手の様相が変化してきました。迎え撃つドラッグストア業界は、調剤薬局の強化、在宅医療・介護分野への進出、大規模小売店化、深夜営業又は24時間販売など多様な対応をみせています。

 なお、富山県のドラッグストアの人口当たり事業所数は、全国第8位(平成19年)となっており、4月号のIで前述した医薬品関連同様、「薬都とやま」を物語っています。

表4-2 医薬品小売業(調剤薬局を除く)の事業所数等の状況
表4-2a ドラッグストアの事業所数等の状況

注1:ドラッグストアとは、産業分類医薬品・化粧品小売業に格付けされた事業所でセルフ方式を採用しており、医薬品小売業を扱っているものをいう。

注2:平成14年から業態分類にドラッグストアが新設されたとともに、産業分類の旧医薬品小売業は医薬品小売業(調剤薬局を除く)と調剤薬局に分割された。

図4-2 産業分類別医薬品小売業、調剤薬局及び業態分類別ドラッグストアの事業所数の推移(H14=100)
図4-2a 医薬品小売業とドラッグストアの事業所数の推移(富山県)
図4-2b 医薬品小売業とドラッグストアの事業所数の推移(全国)

3 小規模小売店とコンビニエンスストアとの関係

 小売業の従業者数4人以下の事業所数は、富山県、全国ともに減少傾向にあるのに対し、コンビニエンスストアは富山県が平成14年以降ほぼ横ばい(対平成14年比▲1.7%減)、全国は増加(同4.6%増)しています。

 終日営業店をみると、平成9年以降、富山県(対平成9年比172.7%増)及び全国(同79.2%増)ともに増加が続いています。(表4-3、図4-3、図4-3a、図4-3b)

 コンビニエンスストアは、家や職場の近くにある「立地」、長時間営業、年中無休という「時間」、1箇所で必要な物を買うことができる「ワンストップ」といった消費者ニーズに応えた利便さを武器に、店舗網を拡大してきました。

 また、DPEや宅配便の取り扱い、各種チケットの販売から、公共料金の収納代行までも行うようになり、さらに利便性が高まっています。

 しかしながら、最近はコンビニエンスストア市場の飽和感が高まり、再編の波が押し寄せようとしているなか、24時間営業のスーパーも出現するなど状況は甘くありません。今後は、ドラッグストアや地方自治体との提携、地域や立地に合わせた販売促進など、商品やサービスの面でいかに他店との差異化を図るかが生き残りのカギとなりそうです。

 なお、富山県のコンビニエンスストアの人口当たり事業所数は、平成19年調査では全国第8位、平成21年には、新たに大手のコンビニエンスストアチェーンが富山県に進出・初出店しています。

表4-3 コンビニエンスストアの事業所数等の状況
表4-3a 業態分類によるコンビニエンスストアの定義
図4-3 産業分類別従業者数4人以下の小売店と業態分類別コンビニエンスストアの事業所数の推移(H9=100)
図4-3a 従業者数4人以下の小売店とコンビニエンスストアの事業所数の推移(富山県)

↓

図4-3b コンビニエンスストアの事業所数の推移(富山県)

4 その他

 1事業所当たりの売場面積が大きく増加している書籍・雑誌小売業と電気機械器具小売業の動向をみてみます。

(1)書店の大型店化

 書籍・雑誌小売業の従業者規模別事業所数の推移をみると、4人以下の事業所は平成3年以降減少、5〜19人の事業所は平成9年以降減少していますが、20人以上の事業所は平成9年以降大幅な増加となっています。

 また、書籍・雑誌小売業の事業所数は減少しているものの、1事業所当たり売場面積が昭和63年の83.6m²から平成19年の341.6m²へと大幅に増加しており、集約化・大型店化への移行がみてとれます。特に、20人以上の事業所の大半は売場面積500m²以上となっています。(表4-4-(1)、表4-4-(1)a、図4-4-(1)、図4-4-(1)a、図4-4-(1)b)

 県内大手書店は、大型店化による豊富な品揃えで顧客の取り込みを図っており、広い売場を活かしてビデオやDVDのレンタル、文具販売などを展開するケースが多くなっています。

 さらに、最近は高齢者や出勤前のビジネスマンなどをターゲットに開店時間を繰り上げ、カフェと併せて早朝7時から開店し、店頭へ顧客を呼び込む書店もあります。

表4-4-(1) 書籍・雑誌小売業の事業所数等の状況
表4-4-(1)a 書籍・雑誌小売業の従業者規模別及び経営組織別事業所数の状況
図4-4-(1) 産業分類別書籍・雑誌小売業の従業者規模別事業所数の推移(S63=100)
図4-4-(1)a 産業分類別書籍・雑誌小売業の従業者規模別事業所数の推移(富山県)
図4-4-(1)b 産業分類別書籍・雑誌小売業の従業者規模別事業所数の推移(富山県)

(2)家電量販店

 電気機械器具小売業の従業者規模別事業所数の推移をみると、4人以下の事業所は減少、5〜19人の事業所は減少傾向、20人以上の事業所は大幅な増加となっています。

 また、電気機械器具小売業の事業所数は減少しているのに対し、1事業所当たり売場面積は昭和63年の55.4m²から平成19年の138.2m²へと大幅に増加しており、大型店への移行がみてとれます。特に、20人以上の事業所の大半は売場面積1,000m²以上となっています。(表4-4-(2)、表4-4-(2)a、図4-4-(2)、図4-4-(2)a、図4-4-(2)b)

 従業者数4人以下の事業所の多くは個人経営の電器店と思われ、特定のメーカーを主に取り扱う「取次店」であり、地域密着型のアフターサービスの親切さ・きめ細かさをセールスポイントとしてきました。しかし、製品の高度化に伴い、新製品への対応も難しくなり電器店では修理が困難となるなど「街の電器屋さん」の魅力を欠いてきました。この結果、店主の高齢化・後継者難・売り上げ減などを理由に閉店するケースが続発し、国内の家電店はピーク時の約半分にまで減っています。

 一方、従業者数20人以上の多くは家電量販店(家電メーカーから家電製品を大量に仕入れて安く売る大型小売店)であり、増加傾向となっています。大型店の出店競争は激化の一途をたどるとともに、大型量販店同士の低価格競争が常態化しており、今後、過当競争が一層進むと予想されます。

 また、最近の家電量販店は、電化製品以外に食料品、日用雑貨や大衆薬なども揃え、取扱分野を広げることで日常的な買い物の場としての「百貨店」志向を強めています。

表4-4-(2) 電気機械器具小売業の事業所数等の状況
表4-4-(2)a 電気機械器具小売業の従業者規模別及び経営組織別事業所数の状況
図4-4-(2) 産業分類別電気機械器具小売業 の従業者規模別事業所数の推移(S63=100)
図4-4-(2)a 電気機械器具小売業の従業者規模別事業所数の推移(富山県)
図4-4-(2)b 産業分類別電気機械器具小売業の従業者規模別事業所数の推移(富山県)

おわりに

 平成20年9月、米国発の金融危機を発端に、日本でも生産・輸出・設備投資などの急激な落ち込みにより、企業収益は大幅な減少となりました。この結果、雇用情勢は急速に悪化し、所得の減少・雇用不安等による消費者の節約志向を反映した販売価格の下落が、あらゆる企業の収益を圧迫しています。

 また、不況の影響で消費者の価値観が激変するなか、値下げによる集客にも限界がみえ、百貨店・スーパーも構造転換を迫られています。従業員を減らす、店舗を閉鎖するなどのリストラを余儀なくされている企業も少なくありません。

 こうした中、全国の百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの平成22年1月の売上げは、いずれも前年割れ(商業販売統計確報 経済産業省)したとの報道がありました。

 富山県関係の百貨店では、平成18年3月に西武百貨店富山店が撤退、平成21年10月には大和が店舗縮小等の経営再生計画を発表しています。

 これからの小売店は、地域の消費者ニーズ(顧客の要望する商品の品揃え、よい商品が安く買える割安感のある商品など)に応え、サービス向上をはかる事業展開が不可欠であると考えられます。

 例えば、買い物難民(これまであった商店の店じまいで、その商店を利用していた高齢者などが買い物に困難をきたす)に応える宅配サービスなどのニッチ(すきま)産業への進出、電話・インターネット注文により、近隣の店舗から即日商品を自宅に届けるなどの店舗を生かしたネット販売などが生き残り戦略の一つなのかもしれません。

 少子高齢化、人口減少がこれまで経験したことのないスピードで進行しています。消費者のニーズや社会環境の変化に迅速に対応していくだけでなく、富山の魅力ある商業空間の形成や地域の活性化につながる中長期的な視野での小売業のさらなる取り組みに期待しています。

とやま経済月報
平成22年5月号