特集

とやまのグリーン・ツーリズム
―滞在型の農山漁村体験へ―

富山県 農林水産部 農村環境課



1 はじめに


本県では、平成15年3月に全国初となる「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」を制定し、条例に基づき指定された重点地域における都市農山漁村交流への活動支援、都市住民を対象とした田舎暮らし体験講座「とやま帰農塾」の開催など、緑豊かな農山漁村に滞在し、農林漁業体験をはじめ、自然、文化、人々との交流を楽しみながら、「ゆとりある休暇」を過ごすグリーン・ツーリズムの推進に取り組んでいます。



2 グリーン・ツーリズムの現状


直売所・活性化施設への来訪者、農山漁村への田舎暮らしを体感する都市住民など、グリーン・ツーリズム関連の入込数は徐々に増加しており、平成19年度は21万人増の約730万人となっています。

一般旅行者とGT関連入込み数
調査項目別交流人数の推移


3 グリーン・ツーリズムの推進

●体験交流施設

農山漁村の自然や伝統文化に触れたり、農作業を楽しむ体験スポットが県内各地に広がっています。

◇農山漁村交流施設 114か所
(なないろKAN、グリーンパーク吉峰など)
◇農林漁業体験民宿   6か所
(民宿なかや、弥次兵衛など)
◇農林漁業レストラン 39か所
(清水そばそば峠、アグリピア高岡など)
◇市民農園      19か所
市民農園開設状況一覧(H20.3末時点)

農産物・農産加工品を新鮮・安心・安価に提供し、消費者との交流による地域を活性化する農産物の直売所も各地で設置され、多くの買い物客で賑わっています。

農業の発展と地域振興へ貢献している団体に贈られる富山県農村文化賞に、砺波市の「せんだん山特産の店」(H19受賞)に引き続き、平成20年度は、魚津市の「松倉もちより市」が受賞されました。

せんだん山特産の店(砺波市)
せんだん山特産の店(砺波市)
松倉もちより市(魚津市)
松倉もちより市(魚津市)

●農産物のオーナー事業

中山間地域の棚田を保全し地域農業の活性化につなげていこうと、県内11地域で棚田オーナー事業に取り組んでいます。

集落では、都市住民のオーナーへの作業指導や集落ぐるみでのイベント支援など、都市住民との交流も深めています。

田植え(富山市八尾町河西)
田植え(富山市八尾町河西)
稲刈り(氷見市長坂)
稲刈り(氷見市長坂)
※画像をクリックすると拡大します。
棚田地域のオーナー事業

棚田保全活動の一環として、地域特産品のブランド化にも取り組んでいます。

◎ハトムギ(氷見市)◎世界遺産米、赤かぶ(南砺市)など

●定住・半定住

団塊や若者世代など、農村地域への定住や二地域居住(半定住)、就農へのきっかけづくりとして、県内5か所で「とやま帰農塾」を開講しており、農林業体験や農山村の伝統文化の体験講座を通じて、都市住民との交流を深めています。

平成20年度は、県内外から昨年度を上回る64名の方が受講されました。

魚津市松倉塾舎では、木材加工体験や地域の伝統文化・風土を学ぶとともに、耕作放棄地の草刈り、リンゴの摘み取りなど農林業もお手伝いしました。

とやま帰農塾
間伐材の加工体験
間伐材の加工体験
耕作放棄地の草刈り
耕作放棄地の草刈り
リンゴ摘み取り体験
リンゴ摘み取り体験

朝日町大家庄塾舎では、地元産大豆による豆腐づくりやハンバーグづくりに挑戦するとともに、野菜の収穫から選別・袋詰め、朝市販売まで取り組みました。

朝市用の里芋掘り
朝市用の里芋掘り
柿やネギの選別、袋詰め
柿やネギの選別、袋詰め
直売所(なないろKAN)での対面販売
直売所(なないろKAN)での対面販売

●都市農山漁村交流

「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」に基づき、指定された重点地域に活動支援しています。 平成20年度までに県内28地域が重点地域に指定され、体験活動を通じて都市と農山漁村の交流に取り組んでおり、ここでは、いくつかの重点地域の取組みを紹介します。

重点地域指定位置図

「穴の谷霊水」としても有名な上市町黒川地域は、平成19年度に炭焼き窯を設置し、間伐材を活用した炭焼きづくりのほか、里山・史跡を巡る歩こう会や炭俵づくり講習会など実施し、都会の人たちとの交流拡大や地域の活性化、里山再生につなげています。

「穴の谷霊水」及び周辺施設の管理・運営や炭焼き窯を使ってのグリーン・ツーリズムの活動が評価され、平成20年度地域づくり総務大臣表彰を受賞されています。

炭焼窯「はなおか窯」
炭焼窯「はなおか窯」

氷見市赤毛地域は、廃校となった旧赤毛小学校(赤毛コミュニティセンター)を活用して、地域の自然豊かな里山や田園を生かした体験講座を実施、都市住民と地域住民の交流に取り組んでいます。

平成21年2月には、「雪と遊ぼう赤毛フェスタ」が開催され、裏山での竹スキーや雪山散策など、中山間地の冬の遊びを満喫しました。

また、赤毛コミュニティセンターは、織物や陶芸の講習会や体験教室も開催され、地域の憩いの場としても賑わっています。

赤毛コミュニティーセンター
赤毛コミュニティセンター

南砺市小瀬・菅沼地域は、世界遺産に登録されている菅沼合掌集落内の耕作放棄地を復旧し、都市農村交流と地域特産品の再発掘活動に取り組んでいます。

平成20年度は、南砺市菅沼集落内の休耕田に、五箇山地区で古くから栽培されてきた「五箇山かぶら」の作付けを計画、赤かぶオーナーや農作業ボランティアなど総勢130名が、種まき・間引き・草取り・収穫作業に汗を流し、新たな五箇山ブランドの確立を目指した取組みを始めました。

五箇山かぶら種まき〜収穫(南砺市菅沼)

●子ども農山漁村交流プロジェクト

平成20年度より始まった「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、総務省・農林水産省・文部科学省の連携により、将来的に全国約120万人(1学年規模)の小学生が農山漁村に訪れ、1週間程度の宿泊体験活動を行う教育活動です。

今年度、南砺市が受入モデル地域に指定され、東京都武蔵野市立小学校5年生(85名)を受け入れています。

武蔵野市立小学校の受け入れ(南砺市利賀)
武蔵野市立小学校の受け入れ(南砺市利賀)
受け入れのノウハウを学ぶ研修会(長野県飯山市)
受け入れのノウハウを学ぶ研修会(長野県飯山市)

県では、他地域への受け入れ拡大を目指し、地域リーダーの育成や体験学習プログラムの開発、安全対策など受け入れのノウハウを学ぶ実地研修を実施しています。

※画像をクリックすると拡大します。
子ども農山漁村交流プロジェクト
農林水産省資料

●全国グリーン・ツーリズムネットワーク富山大会

10月1日(水)〜2日(木)の2日間、全国でグリーン・ツーリズムを実践している仲間を富山に迎え、“とやまから(ikke)友だち”を合い言葉に「第7回全国グリーン・ツーリズムネットワーク富山大会」を開催しました。

1日目は、富山県朝日町をはじめ県内5市町7会場で地域分科会を開催し、学生ボランティアを含め県外から約110名の参加者と地域スタッフ約90名が、ワークショップや農山漁村体験、ikke友だち交流会を行いました。

2日目は、富山市の「とやま自遊館ホール」において、県内外のグリーン・ツーリズム関係者など約350名が参加し、基調講演や記念講演に続き、ボランティアとして参加した学生の皆さんからの地域分科会報告、グリーン・ツーリズム実践者によるパネルディスカッション「地域の特性をグリーン・ツーリズムに活かす。〜その手法と課題、そしてこれから〜」をテーマに意見交換を行いました。

基調講演:
「日本型グリーン・ツーリズムの展開」
講師:
日本グリーンツーリズム・ネットワークセンター代表理事の青木辰司氏
記念講演:
日本の「農」とやまの「農」
-新たな「水・土地・人の連鎖」を求めて-
講師:
富山大学長の西頭コ三氏
バタバタ茶会と水墨画鑑賞(朝日町)
バタバタ茶会と水墨画鑑賞(朝日町)
城端小学校児童たちと意見交換会(南砺市)
城端小学校児童たちと意見交換会(南砺市)
学生たちの地域分科会報告
学生たちの地域分科会報告


おわりに


条例制定から5年が経過し、県内グリーン・ツーリズムの取組みは活発化しているものの、単独・単発的な活動にとどまっていることが課題となっています。

今後は、県が指定している「交流地域活性化センター」(NPO法人グリーンツーリズムとやま)と連携し、全国大会で開催した地域分科会(7会場)を基点とした広域的なグリーン・ツーリズムのネットワーク化を図るとともに、とやま帰農塾の開催や子ども農山漁村交流プロジェクトによる受け入れ体制の整備、重点地域への支援による地域住民の主体的な取組みの推進など、農林漁業や自然に親しんでいただく機会をこれまで以上に提供していくこととしています。

都市と農山漁村の交流が持続的なものとなるよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えていますので、ぜひ富山県のグリーン・ツーリズムを体験してみて下さい。



とやまのグリーン・ツーリズムの情報はとやまG・Tナビゲーターでご覧ください。

都市農山漁村交流

グリーン・ツーリズムに関するお問い合わせ先

富山県農林水産部農村環境課 (076-444-9011、Fax076-444-4427)




とやま経済月報
平成21年3月号