特集

鉱工業指数から富山県の景気回復をみる

統計調査課 嶋 なつ来


はじめに


2006年の日本経済はいざなぎ景気を越え、戦後最長の景気拡大になったという意味で、一つの節目の年であったように思います。

そして現在も、政府が発表した12月の月例経済報告では「消費に弱さが見られるものの回復している」と基調判断を維持し、今回の景気回復局面は平成18年12月時点で59ヶ月と戦後最長を更新しています。その他、企業関連の経済指標が軒並み好調を維持しており、米国経済の減退や原材料の高騰など、懸念材料はあるものの、今後も緩やかに景気拡大が続くと予想されています。

全国的な景気回復が報じられる中、北陸の経済も緩やかな回復をたどりました。富山県も例外ではなく新聞や県内ニュースでは県内企業の好調さが伝えられ、海外進出を追い風に企業業績がのび、大型投資も呼び込みました。特に2006年は自動車関連の設備投資が活発で、富山県でも関係分野での生産がこれまでになく活発であったようです。

本稿では、毎月富山県が公表している「富山県鉱工業生産の動き」の鉱工業指数を使って、ここまでの景気回復の経過を振り返りたいと思います。

注:本稿は12月末までの発表や公表を参考としています。


1 鉱工業指数とは


鉱工業指数とは、製造業の品目ごとに集計される指標で、ある時の生産数量(在庫数量)を基準にしてどれだけ増えたかあるいは減ったかを比率で表したものです。その基準とした「ある時」のことを基準時、もしくは基準年といいます。現在の基準年は2000年(平成12年)で、その年の生産量を100(*1)としています。


※1 基準時を鉱工業指数では一般に、2000年(H12)=100と表します。

この指数という表し方には、比較しやすいというメリットがあります。鉱工業指数の場合、指数化することで計測単位の異なる複数の品目が比較しやすくなるというだけでなく、統合しやすくなり、多様な分類での比較が可能になります。現在では全国、各都道府県で作成し公表され、業種ごと、地域ごとの比較分析には欠かせない指標となっています。

また、次のような2つの特徴から、鉱工業指数は景気とかかわりが深いものになっています。

まずひとつは、景気に敏感な指標であるということです。次のグラフをみてください(図1)。



注:鉱工業指数年報平成17年版(経済産業省)及び平成17年度国民経済計算確報(内閣府)より作成。生産指数、経済成長率(実質)ともに暦年集計を使用。また、生産指数(年平均)は原指数。

これはGDP(国内総生産)(*2)の伸び率を示す経済成長率(実質、暦年)と全国の鉱工業生産指数(年平均)の対前年比を、同じグラフに表したものです。生産指数がGDPの動向を増幅したような動きになっていることがわかります。

この理由としては、製造業がGDPに占める割合が高いことがあげられます。ちなみに、全国のGDPではおよそ2割、富山県の県内総生産では3割を製造業が占めていることから、富山県では他の地域に比べ、鉱工業指数が景気により敏感な指標と考えることができます。


※2 GDP(国内総生産)…日本国内で個人や企業、政府が生産したモノやサービスの付加価値額を合計した金額のことで、重要な景気判断材料となる指標。

もうひとつは、速報性が高いということです。

GDP(国内総生産)や県内総生産は、地域全体の経済活動を総合的に取りまとめた重要な統計ですが、膨大な統計や資料を取りまとめるため、公表には1年あまりの期間を要します。一方、鉱工業指数では、翌月に全国の速報が、富山県では翌々月に確報が公表されています(*3)。このように鉱工業指数は、いち早く行える景気判断の材料として注目されており、特に全国の生産指数は、内閣府の景気動向指数の一致系列*4として採用され、経済指標の中でも重要度の高い指標となっています。


※3 富山県では確報のみ公表していますが、全国では速報と確報があり、速報がより注目されています。

※4 景気動向指数には、景気に先立って動く先行系列、景気と同時に動く一致系列、景気にやや遅れ動く遅行系列があります。全国の生産指数は11指標ある一致系列のうちの一指標です。
参考:指数の利用と作成(経済産業省経済産業政策局調査統計部)、経済指標のかんどころ(富山県統計協会)


2 富山県と全国の生産指数


@) 富山県の生産指数

それでは、富山県の鉱工業指数を紹介しましょう。

富山県では、「富山県鉱工業生産の動き」と題し、毎月の県内製造業の生産指数、在庫指数を作成し公表しています。以下、生産指数に絞って話を進めていきます。時系列で動きに注目する場合、細かい動きに左右されないよう四半期のグラフを用いることが多いので、ここではグラフを使用するとき、四半期のグラフに統一し、その期間は平成10年第T四半期(*5)〜平成18年第V四半期までとします。


※5 現行基準(H12=100)において遡及計算されているのは平成10年分までのためです。なお、平成9年以前の指数も利用する場合は接続するための係数を掛けます。

直近の四半期は、平成18年第V四半期(7月〜9月)*6)で
総合生産指数 109.0(季節調整済 H12=100)、前期比では3.5%上昇
と、なっています。(図2)




富山県の総合生産指数を全国の総合生産指数と同じグラフに表すと、その動向は、全国を上回る水準で類似した動きをしており、基準年の平成12年以降、平成13年W期を底(*7)とした上昇傾向であることがわかります。全国も、富山県も長期景気回復を裏付けるような着実な上昇傾向を示しています。

また、富山県において平成18年第V四半期の109.0という指数は、現行基準(H12=100)において過去最高値(*8)でした。さらに、全国の平成18年第V四半期の105.9という指数も過去最高値(*8)でした。


※6 第V四半期(7月〜9月)…四半期の生産指数は単純に3ヶ月の生産指数を平均しています。
※7 政府の発表している景気の谷は平成14年1月で、今回の回復局面は平成14年の2月から数えて平成18年12月時点で59ヶ月目となります。
※8 月別の生産指数で見ると富山では平成18年8月と10月の111.2、全国では10月の107.8がそれぞれ過去最高となっています。(12月末までの確報を参考)

それでは、どのような業種がそれぞれの地域の総合生産指数を上昇に導いているのでしょうか。まずは全国の生産指数の動きからその背景を探り、鉱工業指数にみる景気回復への道のりをたどってみましょう。



A) 全国の業種別動向

次に示すのは、全国の総合生産指数と主要5業種の生産指数のグラフです(図3)。


※図をクリックすると大きく表示されます。


直近の生産指数でみると、輸送機械が125.9と最も高く、電気機械(旧分類)122.7、一般機械が113.5と、かなり高い水準の指数が3業種あることがわかります。

また、それらの業種は基準年の平成12年以降、平成13年W期を底として、その後上昇傾向にあり、総合生産指数を上昇へと導くために少なからず、一役かっていると考えられます。

ここでは話を進める便宜上、
@平成14年〜平成15年
A平成16年〜平成17年
B平成18年
  と、3つの期間に分けてみていきます。
@ 平成14年〜平成15年

ひときわ大きく右肩上がりとなっているグラフが電気機械です。これはいわゆる『デジタル景気』(*9)を背景としています。デジタル景気とは、新三種の神器と言われる薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラなどの急激な普及を背景に、集積回路などの部品や素材を生産・提供する企業にも波及し、同時に設備投資も活発になるという好循環がうまれた状況をいいます。

その他、輸送機械が自動車産業の好調を背景に上昇し始め、一般機械も低水準ながらも緩やかに上昇し始めていることがわかります。


※9 平成15年の途中から使われるようになった表現で、平成16年の半ばに電子部品デバイス関連で在庫調整が起こるまでの期間でよく用いられた言葉です。

A 平成16年〜平成17年

平成16年に入ると、電子部品デバイス関連の品目での在庫の積み上がりを背景に、生産調整が行われ、デジタル景気は踊り場に入ったと言われました。電気機械の生産指数では、平成16年U期には107.9まで上昇し、10期連続で上昇を続けていましたが、V期にはついに低下となります。平成17年T期で上昇には転じたものの、平成17年前期は大きな上昇はなく、生産調整が行われていると考えられます。

しかし、この頃には、一般機械がかなり高い水準まで上昇していました。平成16年W期、一時的に停滞している電気機械を抜いて、一般機械が上昇していることに注目して下さい。平成16年の終わりから平成17年は一般機械や輸送機械のなかでも輸出向けの生産が活発になったようです。


B 平成18年

その後、平成18年はトリノオリンピックにむけたプラズマテレビなどの消費を見込んで、大型TV向けの生産が活発化したことを背景に、電気機械が再び上昇し始めます。また自動車産業は輸出を中心に好調さを増し、輸送機械や一般機械だけでなく、カーナビ向けの電子デバイス関連の需要が伸びてきたことなどを背景に、電気機械へも波及していると言われています。

輸送機械、電気機械、一般機械の3つの高水準により、全国の生産指数では11月の速報値で、またもや最高値を更新する勢いであることがわかっています。


参考:経済産業省産業活動分析(トピックス:今次景気回復における鉱工業の特徴)、各新聞経済面等

このように全国の生産指数は、いざなぎ景気越えを裏付けるように堅調に推移し、企業の生産は活発であるようです。では、富山県の業種別動向も、同様にたどってみましょう。



B) 富山県の業種別動向

次に示すのは、富山県の総合生産指数と主要5業種の生産指数のグラフです(図4)。


※図をクリックすると大きく表示されます。


直近の生産指数をみると、電気機械が140.6とかなり高い水準に位置しています。また、続いて一般機械が134.1、非鉄金属が124.5と、これもかなり高い水準に位置しています。

その他、化学も100を超える水準にあり、総合生産指数が四半期として過去最高値を更新した平成18年の第V四半期は各業種が好調だったことがわかります。


@ 平成14年〜平成15年

全国的なデジタル景気を背景に、富山県ではいち早く電気機械が上昇しました。全国の電気機械の底は平成13年W期と景気の谷と同じですが、富山県の電気機械の底は平成13年U期と、一足先に上昇に転じています(図5)。また、その平成13年U期の指数は92.3とそれほど低い水準ではなく、平成13年V期には既に100.0を越え、平成15年T期には144.9を記録しています。これは全国をはるかに上回る勢いの上昇でした。


A 平成16年〜平成17年

しかし、平成16年にはデジタル景気が踊り場にはいったことを背景に、電気機械は平成16年V期には▲7.4%、W期は▲11.9%低下の117.4となり、10期ぶりに120を切る指数となっています。一方、この時期には、富山県でも全国的な自動車産業の好調を受けて一般機械が上昇を続けており、全国と同じ平成16年W期に119.3と電気機械を越える水準となりました。

全国同様、富山県でもこのデジタル景気の踊り場を下支えしたのは一般機械だったと考えられます。


B 平成18年

その後、一般機械は、再び上昇し始めた電気機械とほぼ同じ水準で推移しており、富山県の総合生産指数を上昇に牽引する必要不可欠な業種となっていると考えられます。


以上のことから、冒頭で紹介した、全国と富山県の総合生産指数の動きが示すとおり(図2)、長期景気回復の背景は、全国も富山県もおおむね重なっているようです。参考に、全国でも富山県でも高水準となっている電気機械、一般機械の2業種の生産指数を以下に表しました(図5)。


※図をクリックすると大きく表示されます。


図5に表れているとおり、ここでも主要な2業種の動きが全国、富山県ともに、おおむね同じ傾向を示していることがよくわかります。



3 採用品目とウェイトから見る富山県の生産指数


ここで、富山県の生産指数をさらに探っていくためにも、知っておくと便利ないくつかの鉱工業指数用語を説明します。


用語@ 採用品目

鉱工業指数は、多数にわたる鉱工業製品全てにおいて調査をすることは不可能なので、できるだけ少ない品目数で鉱工業活動全体の動きを表せるように品目を選定しています。それを採用品目といいます。

生産指数において、採用品目数は以下のとおりです。


表1
採用品目 全国 富山県
521 207

生産指数を作成したい地域が広ければ広いほど、当然生産されている品目の種類が多くなるので、全国の採用品目数は富山県の採用品目数に比べると2倍以上となっています。

そのため、県の生産指数に比べ、採用品目の多い全国の生産指数のグラフでは、一品目の特異な動きがあっても他の品目の動きに紛れて緩和されやすく、グラフの凹凸は均されやすくなります。



用語A ウェイト

採用品目は、それぞれウェイト付けされています。

ウェイトとは、品目ごとの重要度を表しており、指数を統合する際の計算に用いられます。つまり、より実際の経済活動が反映されるよう、あらかじめ品目の影響具合を評価した一定の数値ということです。

また、業種ごとのウェイトはその業種を構成している品目毎のウェイトの合計となっています。例えば、富山県の一般機械の生産指数で見ると次の表2のようになります。


表2
注:一般機械工業(21)は、表の7品目のさらに細かい採用品目内訳数を示しています。

さらに、鉱工業指数の業種ごとのウェイトは、工業統計が表す業種構造に対応しています。なお、工業統計は、製造業の実態を明らかにするため、全国の製造事業所を対象に毎年実施されている基礎的な統計で、製造品出荷額や付加価値額、従業者数などを業種構造別に把握することが出来ます。


@) 業種ウェイトによる比較

では、富山県と全国、そして石川県の業種ウェイトを比較してみましょう。

鉱工業指数のウェイトは、全国は全国の全品目で、富山県は富山県の全品目で10000.0となる構成比で表されています。


以下の表をご覧ください(表3)。

先ほど、図3図4に示した主要5業種とは、全国と富山県におけるウェイトの高い5業種のことです。(表3では黄色に着色している)


表3
注:斜体の青字は「その他の業種」の中に含んでいるものです。

各地域によってウェイトのつけ方は異なり、表3からはその地域の特色を見ることができます。例えば、ウェイト上位3位の業種のみで比較してみると、次のようになっています(表4)。


表4
  全国 46.3% 富山 54.9% 石川 55.4%
 1位  電気機械工業,旧分類(2189.4) 化学工業(1946.3) 一般機械工業(2321.5)
 2位  一般機械工業(1270.5) 金属製品工業(1911.2) 電気機械工業(1708.8)
 3位  輸送機械工業(1229.2) 電気機械工業(1631.2) 繊維工業(1506.4)
注:右上の(%)は上位3位の業種が全体(10000.0)に占める割合。

富山県は「化学」から『くすりの富山』や、「金属製品」から『アルミ産業』、「電気機械」から豊富な水資源による『IT産業』を想像できます。石川県には3位に「繊維」がありますが、友禅染めや織物などの伝統産業を思い浮かべることができると思います。


また、その構成比をみていくと、富山県と石川県の場合、上位3業種で構成比の半分以上を占めるのに対し、全国では、5割に達していません。石川県の一般機械は一業種で2割を超えるウェイト、富山県では化学、金属のそれぞれの業種で2割近いウェイトを持っており、各県の主要業種のウェイトが高いことがわかります。全国の電気機械は比較の便宜上3業種をまとめた旧分類のため、2割を超えるウェイトとなっています(*10)。


つまり、都道府県単位の生産指数では、その地域の特色や独特の業種でウェイトが高いことが多く、その影響をうけやすいことがわかります。


※10 電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業…富山県でいう電気機械工業に含む業種。鉱工業生産指数は業種分類を日本標準産業分類に準じた分類としている。平成14年に日本標準産業分類が改定され、電気機械器具製造業(鉱工業指数では電気機械工業に相当)が、電気機械器具製造業、情報通信器具製造業、電子部品・デバイス工業に3分割された。全国の鉱工業指数ではこの分類に平成12年基準より準拠しているが、富山県や石川県では3つに分けるとウェイトが小さくなりすぎるので従来のまま電気機械工業として採用している。このため、本稿では全国を電気機械工業(旧分類)として比較している。


A) 富山県の業種別動向と寄与度

それでは、ウェイトもふまえたうえで富山県の生産指数における景気回復を探ってみましょう。


用語B 寄与度

寄与度とは各部分の変化が全体の変化に対してどの程度影響を与えているかを示すもので、鉱工業指数では、総合生産指数の動向に対して各業種や品目がどれだけ影響したかを見るときに用います。


直近の平成18年V期(7月〜9月)生産指数  109.0(季節調整済 H12=100)、前期比3.5%上昇について、寄与度順(影響が大きかった順位)に業種を並べると次のようになります(表5)。




平成18年V期の総合生産指数上昇への影響の大きさ(上位3業種)をみると、表5のとおり、

1位 化学 寄与度2.25(ウェイト1946.3)
2位 電気機械 0.62(1631.2)
3位 金属製品0.16(1911.2)

となっており、ウェイトの高い3業種が1〜3位を占めています。特に化学は富山県では最もウェイトが高い業種で、寄与度も高く、今回の総合生産指数の上昇に大きな影響を与えていることがわかります。一見、化学はとりたてて目立つほど高水準の生産指数ではありませんが、富山県では総合生産指数に大きな影響を持っており、非常に重要な業種だといえます。以下は、参考に、ア.前期比、イ.生産指数の高さ、で上位3業種を並べたものです。

ア.前期比の上昇の大きさ(上位3業種)
  業種名 前期比 ウェイト
 1位  化学工業 12.6% 1946.3
 2位  輸送機械工業 9.1% 142.9
 3位  鉄鋼業 4.3% 255.4

イ.生産指数の高さ(上位3業種)
  業種名 季調済 ウェイト
 1位  電気機械工業 140.6 1631.2
 2位  一般機械工業 134.1 819.7
 3位  非鉄金属工業 124.5 527.4

ア.イ.では寄与度順で並べた場合と、順位がほとんど異なっており、単純に前期比が大きい業種や、生産指数が高い業種が総合生産指数の上昇を導いているわけではないことがわかります。

次に、長期的な動向について寄与度をみてみましょう。長期的な動向でみると、各業種の寄与度にはどのような違いがあるでしょうか。

次の表は平成16年の年平均指数、平成17年の年平均指数においての寄与度です(表6、表7)。



平成16年の総合生産指数は105.6で前年比2.3%の上昇


平成17年の総合生産指数は106.3で前年比0.7%の上昇


2年連続で総合生産指数の上昇に影響を与えている業種は、以下の5業種でした。

・一般機械(819.7)
・プラスチック製品(520.3)
・鉄鋼(255.4)
・非鉄金属(527.4)
・パルプ・紙・紙加工品(526.5)

まず、この5業種にはウェイトの高い業種(化学、金属、電気機械)が含まれていないことがわかります。

では、5業種に含まれている一般機械、非鉄金属の動向を図4図5から、動向をもう一度観察してみましょう。上昇と低下を繰り返しながらも、しっかりと右肩上がりになっていることがわかります。

一般機械や非鉄金属はウェイトがそれほど高くないため、月々の動きでは総合生産指数の動向に大きな影響力はありません。しかし、長期的にみると上昇を続けている業種であり、表6や表7から総合生産指数の上昇に十分影響を与えているといえます。

つまり、富山県の総合生産指数が長期的に上昇している背景には、ウェイトの高い主要業種以外にも堅実な上昇を続けている業種の支えがあり、製造業では広い分野での生産が活発になってきていると考えられます。


ここでは平成16年、17年の寄与度にのみに注目しましたが、鉱工業指数年報では平成10年以降の寄与業種を見ることができます。



おわりに


県では、この鉱工業指数を昭和24年から50年以上にわたり公表してきました。本稿では、採用品目やウェイトといった普段の公表では説明できない基本的な用語を補足しながら、生産指数を使って景気回復をたどってみました。

鉱工業指数は毎月公表される動態統計のため、月々の微妙な動きに惑わされがちですが、寄与した業種やそのウェイトを意識しながら、中長期的な動きをみると、全国的な景気上昇の背景に加えて、富山県独自の動きが隠れていることがご理解いただけたかと思います。

なお、本稿では触れておりませんが、「季節調整」という考え方も鉱工業指数にとっては重要な用語です。詳しくは以下の「とやま経済月報」をご覧下さい。


最後に、本稿が掲載される頃には、11月分の「富山県鉱工業生産の動き」が公表されていると思いますので、是非ご覧ください。本稿での知識が少しでもお役に立てば幸いです。



とやま経済月報
平成19年2月号