臨 床 症 状


 カンピロバクター腸炎の主な症状は下痢、腹痛、発熱、嘔吐、頭痛等でサルモネラ感染症腸炎のそれと似ています。特に下痢は80%以上にみられ、多くは水様便ですが粘血便を呈する場合もあります。一般に良好な経過をとりますが、時にギラン・バレー症候群という自己免疫性末梢神経疾患を併発することがあり注意が必要です。


 

 病 原 体


 Campylobacter属は17菌種に分類されていますが、ヒトに食中毒を起こすのは90%以上がCampylobater jejuniです。このCampylobacter属の菌は、らせん状または湾曲した形をし、1本の鞭毛を持ち、コルクスクリュー様の螺旋運動をします。また、3〜15%の酸素を含む微好気条件でのみ発育し、培養には2〜3日かかります。本菌のヒトに対する発症機序には複数の病原因子が関与しているといわれていますが、現在のところ完全には解明されていません。


 

発生時期と病原媒介物


 細菌性食中毒は一般に夏季に多く発生しますが、カンピロバクター食中毒は5〜6月にもっとも多く発生し、7〜8月はやや減少し、9〜10月に再び上昇する傾向にあります。この季節変動は欧米においても同様の傾向にあります。 本食中毒において感染源を特定することは極めて困難とされています。それは、本食中毒の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が2〜7日と長いため、食品残品が廃棄されている事例が多いためです。また、本菌が死滅しやすいことも菌の検出を困難にしています。 原因と断定された食品、また推定される原因食品として多いのが食肉、特に鶏肉です。市販の鶏肉を検査したところ4〜6割の鶏肉からカンピロバクターが検出されたという報告もあり、かなり高率に汚染されています。また、牛生レバーが原因の食中毒例もあります。牛レバー内部の胆汁もカンピロバクターに汚染されているという報告もあります。


 

治療と対策


 患者の多くは自然治癒し予後も良好で、特別治療を必要としない場合が多いようです。しかし、重篤な症状の場合には対症療法や化学療法が必要です。 本菌食中毒に対する予防は基本的には他の細菌性食中毒と同様ですが、特に食肉の調理時の十分な加熱と、生野菜などへの二次汚染防止に対する注意が重要です。また、牛レバーを生で食べるのは避けましょう。 ペットから感染した事例報告もあることから、接触する機会の多い小児等においては手洗いの励行などに注意し、ペットを衛生的に管理することも大切です。

 

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