過去5年間の患者報告数の推移

 ヘルパンギーナは、発熱とのどの炎症を特徴とする急性のウイルス性感染症で、初夏から秋にかけて毎年流行する夏かぜの一種です。
1 臨床症状
 突然の発熱(38-40℃)に続いて咽頭粘膜の発赤が著明となり、口腔内に小水疱が出現します。小水疱はやがて破れて浅い潰瘍を形成し、痛みを伴います。2-4日程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失します。発熱時に熱性けいれんを伴ったり、口腔内の痛みのため十分な飲食が出来ず、脱水状態となることがあります。
 しかし、通常は、合併症や後遺症もなく、一週間以内に治ります。稀に髄膜炎を合併することがあるため、発熱・頭痛・嘔吐がひどいときは早めに医療機関を受診しましょう。
2 病原体
 ヘルパンギーナは、エンテロウイルスの感染によりおこります。エンテロウイルスとは、ピコルナウイルス科に属する多数のRNAウイルスの総称であり、ポリオウイルス、A群コクサッキーウイルス(CA)、B群コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス(68-71)等が含まれます。
 ヘルパンギーナに関しては、CAが主な病因であり、2、3、4、5、6、10型などの血清型が分離されます(感染研IASR参照)。
 エンテロウイルス属の宿主はヒトだけであり、感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染 であり、急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強いが、エンテロウイルス感染としての性格上、回復後にも2-4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されます。
3 治療・予防方法
 通常は対症療法のみです。時には脱水に対する治療が必要なこともあります。無菌性髄 膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要です。
 感染は、患者ののどや鼻の分泌物あるいは便の中のウイルスが、手などによって、口や鼻の中に運ばれて感染します。のどや鼻の分泌物の中にあるウイルスによる感染は症状が出てから2、3日までが起こりやすく、また、患者の便には1ヶ月くらいウイルスが排出されている可能性があります。
予防のためには、患者やその周りの人たちも、よく手を洗うことです。特に、患児のおむつを替えた後は、よく手を洗いましょう。また、トイレの後や食事の前には必ず手を洗いましょう。
4 感染症法における取り扱い
 5類感染症。県内の発生状況については、29ヶ所の小児科定点から毎週報告されます。
(富山県感染症情報センター)