統計情報ライブラリー/生活・環境家計調査報告書

 

全国から見た富山市の特徴(全世帯)


 −進む食事の中食化、低い教育費、住居費の割合、家計に重い仕送り金−

1ヶ月の消費支出金額・・・全国1位
 富山市の1世帯当たり1か月の消費支出額を全国と比較すると、平成11年は407,929円で全国1位となった。近年の動きをみると、平成8年は全国7位、平成9年は全国4位、平成10年は全国2位と、いずれも高い水準にある。
 消費支出金額の内訳を、平成9年、10年、11年の3か年の平均値で全国と比べると、こづかいと諸雑費を含む「その他」が全国を大きく上回っている。
 また支出割合で比較すると、「仕送り金」の支出割合が高く、「教育費」、「住居費」の割合が全国より低くなっている。「住居費」が低いのは、持ち家率が高く地代家賃が少ないため、「教育費」が低く「仕送り金」が高いのは、県外大学などへの遊学費用が仕送り金に分類され、教育費には含まれないためと考えられる。また、「その他」の割合が高いのは、1世帯当たりの有業人員1.77人(全国1.49人)と多く、個人裁量のこづかいが多いことが特徴である。(図 4−1、4−2)
図4−1 消費支出金額の内訳(9,10,11年平均図4−2 消費支出割合(富山市・全国比較)
1 食 料 費

 ア 米は緩やかながら減少傾向が続いている
 食料費は、エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)が緩やかに低下を続けている中で、食料費に占める米の割合も確実に低下している。平成6年(前年の冷夏による国産米不足騒動)におこった急激ともいえる米離れの傾向は、いまだ回復の気配が見えないままである。
富山市で昭和45年には食料費のうち米への割合は14.1%を占めていたが、平成11年には4.8%にまで落ち込んでいる。全国比較するとその割合は全国平均値をわずかに上回っているものの、富山市でも米離れが進んでいる。
一方、パンの割合は、昭和45年に1.5%が平成11年には3.1%と、30年間で2倍となり全国と同率となった。(図5)
図5 食料費に占める米・パンの割合(全世帯)
イ 副食では魚が中心
 「表2 食品における富山市の嗜好(平成9、10、11年家計調査年報より)」によると生鮮魚介への支出金額は、常に全国のトップレベルに位置する。過去3年をみても、「たら」「ぶり」「いか」(さしみを含む)は連続して全国1位となっている。
 また、「魚介の漬物」(魚の味噌漬け、醤油付け等)も5年連続して全国1位である。
 保存の目的の他に多様な食べ方として、魚がいかに富山市の食生活に密接に関わっているか、うかがい知ることができる。
 食料費に占める魚介類と肉類への割合を全国比較すると、富山市では魚介類の割合が上回り、肉類は下回って、副食は魚介類が中心となっている。その他支出金額の多いものとして、「かぶ」「昆布」「もち」がある。
 また、購入数量で「かぼちゃ」「バナナ」が全国1位となっており、特に「バナナ」は支出金額で全国24位と上位ではなく、富山市民は安く大量に「バナナ」を購入しているといえる。(図6−1、6−2)
図6−1 富山市が1位の購入品目と支出金額及び上位5市までの県庁所在都市(平成11年)  単位:円
たら上位5市 こんぶ上位5市
いか上位5市 かぶ上位5市
いか上位5市 もち上位5市
魚介の漬物 カツレツ上位5市
富山市が下位の購入品目と支出金額及びワースト5位までの県庁所在都市(平成11年) 単位:円
小麦粉下位5市 ケチャップ下位5市
表2  食品における富山市民の嗜好(平成9,10,11年家計調査年報より)(年間支出金額ランキング)
平成9年 平成10年 平成11年





1位 たら、ぶり、いか、魚介の漬物
かぶ、こんぶ、バナナ、清酒
カツレツ、コロッケ、天ぷら・フライ
たら、ぶり、いか、魚介の漬物
かぶ、こんぶ、
カツレツ、コロッケ
たら、ぶり、いか、魚介の漬物
こんぶ、かぶ
もち、カツレツ
2位 竹の子 オレンジ
天ぷら・フライ、
もち
かまぼこ、ほうれん草、昆布佃煮
食塩、うま味調味料、カステラ
コロッケ、清酒
3位 しじみ、生椎茸、やきとり 刺身盛り合わせ、かまぼこ
竹の子、清酒
天ぷら・フライ








47位 ケチャップ、マヨネーズ・ドレッシング
落花生
鶏肉、ケチャップ
46位 食用油、紅茶 小麦粉、玉ねぎ、
マヨネーズ・ドレッシング
小麦粉、酢、ケチャップ、落花生
45位 ちくわ、玉ねぎ、ピーマン、鶏肉、焼酎 ちくわ、乾燥スープ、落花生 鶏肉、マヨネーズ・ドレッシング
図6−2 食料費に占める魚介類と肉類の割合(全世帯)


ウ 進む食事の中食化

 食料費の最近の特徴としてあげられるのは、「中食」と呼ばれる調理を必要としない弁当や惣菜などの調理食品を利用する食形態が伸びてきていることである。全国的には、既婚女性の就業が多くなったことや、コンビニエンスストアの急速な増加に助長され消費者の簡便志向が強まったことにより、調理食品の購入が拡大してきている。
 富山市の1世帯当たりの有業人員は、常に全国平均を上回っている。これは、富山県では、女性就業率が53.4%(全国4位、平成7年国勢調査)、共働率が62.1%(全国3位、平成7年国勢調査)と全国的にもトップクラスであることによる。
 また、富山市の外食の割合は、常に全国を下回って積極的とはいえない。一方で調理食品は、食料費のなかで魚介類、野菜海藻、外食費につづいて多く支出されている。
 調理食品の中では、「カツレツ」「天ぷら・フライ」「コロッケ」が常に上位にランクインし、調理食品が忙しい家庭の力強い味方として購入されている様子がうかがえる。
 食料費に占める外食と調理食品の割合をあわせて全国比較すると、昭和55年富山市13.1%(全国16.6%)が平成11年富山市23.2%(全国25.8%)となり、全国より伸びている。(図7−1、7−2)
食料費(支出項目内訳)の推移(富山市全世帯)
食料費(支出項目内訳)の推移(全国全世帯)
エ 富山市民は清酒好き
 酒類では、清酒への支出金額が平成9年1位、10年は3位、11年は新潟市についで2位と、全国で常に上位に位置し、購入数量をみても、たいへんよく飲まれている。ワインは、食生活の変化や健康志向などで人気が高まったことなどから、近年、年間購入数量は全国でも富山市でも増加していたが、平成11年は10年よりも購入数量は減っており、ブームは落ち着いてきている。(表3、図8)
表3 酒類の年間購入数量及び対前年増加率
全国 富山市
清酒(ml)  焼酎(ml)  ビール(l)  ワイン(ml) 清酒(ml)  焼酎(ml)  ビール(l)  ワイン(ml)



平成元年 13,880 5,191 49.59 924 20,608 2,332 55.25 446
2年 13,471 4,899 55.39 857 25,826 2,358 60.88 797
3年 13,183 4,674 56.43 819 22,078 2,143 48.78 805
4年 13,784 4,986 54.32 765 20,593 3,229 49.96 505
5年 13,713 5,030 54.99 773 23,280 1,853 52.43 362
6年 12,986 5,799 61.77 1,024 22,113 1,334 66.66 632
7年 13,246 6,115 58.93 1,270 25,185 2,475 63.26 779
8年 13,139 6,362 60.16 1,468 18,899 2,674 66.67 1,261
9年 12,444 6,641 58.26 1,938 25,029 2,288 46.88 1,207
10年 11,700 6,332 55.06 2,899 18,260 4,671 63.39 2,586
11年 11,126 6,735 50.10 2,620 20,113 3,387 49.16 1,879





平成元年 -7.5 0.7 0.9 17.7 10.9 -5.4 17.0 -28.6
2年 -2.9 -5.6 11.7 -7.3 25.3 1.1 10.2 78.7
3年 -2.1 -4.6 1.9 -4.4 -14.5 -9.1 -19.9 1.0
4年 4.6 6.7 -3.7 -6.6 -6.7 50.7 2.4 -37.3
5年 -0.5 0.9 1.2 1.0 13.0 -42.6 4.9 -28.3
6年 -5.3 15.3 12.3 32.5 -5.0 -28.0 27.1 74.6
7年 2.0 5.4 -4.6 24.0 13.9 85.5 -5.1 23.3
8年 -0.8 4.0 2.1 15.6 -25.0 8.0 5.4 61.9
9年 -5.3 4.4 -3.2 32.0 32.4 -14.4 -29.7 -4.3
10年 -6.0 -4.7 -5.5 49.6 -27.0 104.2 35.2 114.3
11年 -4.9 6.4 -9.0 -9.6 10.1 -27.5 -22.4 -27.3


2 住 居 費(平成9年、10年、11年の3か年平均)

 富山市の1世帯当たりの消費構造をみるとき、大きなウエイトを占めていると考えられる住居に関する費用(家や土地の取得に関わる直接の費用)は、「実支出以外の支出」の中に「預貯金」等といっしょに集計されるために把握できない。
 「住居費」として表章されているのは、家賃地代と設備修繕・維持費であり、その特徴は次のとおりである。
  家賃地代については、持ち家住宅率が高いことと(富山県80.6%;「平成10年住宅・土地統計調査」全国第1位)、家賃支払い金額が都市圏に比べて比較的安いことなどにより、1か月の消費支出に占める割合は1.9%と低く全国46位である。 一方、持ち家住宅率が高 いことが影響して、設備修繕・維持費の割合は3.5%と全国6位(全国2.6%)の高い割合になっている。この結果、住居費全体としては、5.4%で全国平均(6.5%)を下回り、全国37位となった。(表4)
  
表4 消費支出に占める住居費割合                            単位:%、円
都市名 平 成 11 年 平成9、10、11年の平均値
住居費 家賃・地代 設備修繕・維持費 住居費 家賃・地代 修繕・維持費
月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 割合 順位 割合 順位 割合 順位
富山市 17,556 4.3 45 6,540 1.6 46 11,016 2.7 19 5.4 37 1.9 46 3.5 6
金沢市 26,141 6.9 16 9,970 2.6 37 16,172 4.3 3 5.7 35 2.6 38 3.1 15
福井市 13,542 4.4 44 6,656 2.2 43 6,886 2.2 28 5.1 39 2.8 34 2.3 31
                                            
全国平均 21,041 6.5   12,578 3.9   8,463 2.6   6.5   3.9   2.6


3 交通・通信費

  携帯電話やPHS、インターネットが急速に普及したことなどにより、電話通信料が年々増加している。
  富山市においても全国同様増加しており、5年前(平成6年)と比べると、1.6倍となっている。(図9)
4 教育費と仕送り金 (平成9年、10年、11年の3か年平均)
 富山市の1世帯当たりの消費支出に占める教育費への支出割合は、「図4−2消費支出割合(富山市・全国の比較)」からもわかるように全国平均を大きく下回り、最下位となっている。これは、富山県の高等学校生徒数に占める公立学校生徒数の割合が79.0%(全国13位「平成11年学校基本調査 」)であることから授業料の支出が少ないことと、本調査の分類上、県外で暮らす大学生等への教育費用が「教育費」には含まれないことが要因と思われる。

  県外大学への進学率は83.9%(全国61.5%「平成11年学校基本調査」)と非常に高く、大学生の5人のうち4人は、県外の大学で学生生活を送っていることになる。この場合、調査上はその生活費だけでなく、通常なら「教育費」に含まれる大学の授業料なども「仕送り金」として分類される。富山市ではこの「仕送り金」の支出割合は5.0%(全国9位)で、全国平均(2.8%)を上回っている。(表5)
表5  消費支出に占める教育費の割合
                                 単位:%、円
都市名  平 成 11 年 平成9、10、11年平均値
教育費 仕送り金 教育関係費 教育費 仕送り金 教育関係費
月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 割合 順位 割合 順位 割合 順位
富山市 13,549 3.3 39 21,086 5.2 6 34,155 8.4 17 3.0 47 5.0 9 7.9 31
金沢市 19,959 5.3 8 11,878 3.1 27 32,594 8.6 14 4.6 16 3.4 31 8.1 25
福井市 11,913 3.9 29 12,779 4.1 16 25,681 8.3 18 4.0 30 4.0 21 8.2 21
                                 
全国平均 13,539 4.2   8,580 2.7   23,199 7.2   4.4   2.8   7.5   
5 教 養 娯 楽 費  (平成9年、10年、11年の3か年平均)
 富山市の1世帯当たりの教養娯楽費への支出割合は(図4−2消費支出割合)、全国に比べて低い。平成元年からの教養娯楽費への支出割合をみると、常に全国値を下回っている。
 教養娯楽費を耐久財、サービス、その他(半耐久財、非耐久財)に区分して、全国と比較してみると、サービス支出割合の乖離が目立ち、常に全国値を下回っている。
 これは、富山の旅行・行楽形態が日帰り志向であること、自家用車の利用などから、サービスで大きな割合を占めるパック旅行の支出が少ないためと考えられる。また、持ち家住宅率が高く、広い敷地(全国5位)を持ち、園芸、日曜大工などのあまりお金のかからない趣味が多いことも影響していると考えられる。(表6、図10)
表6 消費支出に占める教養娯楽費の割合
                  単位:%、円
都市名 平 成 11 年    平成9、10、11年平均値
教養娯楽費 教養娯楽費
月平均額 割合 順位 割合 順位
富山市 32,488 8.0 47 8.3 47
金沢市 36,814 9.7 32 9.6 29
福井市 28,288 9.1 38 9.1 38
         
全国平均 33,378 10.3   10.0
6 その他の消費支出 (平成9年、10年、11年の3か年平均)
 その他の消費支出は「諸雑費」、「こづかい」、「交際費」、「仕送り金」の4項目からなる。「交際費」の支出割合は全国25位。「こづかい」の支出割合は14.3%で全国平均7.4%を大きく上回り全国1位である。これは1世帯当たりの有業人員が全国平均より多いことが一因と考えられる。(表7)
表7 消費支出に占める交際費、こづかいの割合
                              単位:%、円
都市名  平 成 11 年 平成9、10、11年の平均値
交 際 費 こ づ か い 交際費 こづかい
月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 割合 順位 割合 順位
富山市 37,587 9.2 32 77,695 19.0 1 9.6 25 14.3 1
金沢市 35,601 9.4 29 26,240 6.9 11 9.7 24 7.1 27
福井市 30,266 9.8 20 18,495 6.0 38 9.9 18 7.2 24
                       
全国平均 30,845 9.6   22,876 7.1   9.7   7.4   
7 財・サービス区分でみた耐久財、サービス (平成9年、10年、11年の3か年平均)
 財への支出の内訳をみると、耐久消費財は7.6%と全国平均(6.7%)を上回っている。広い住宅で快適に過ごすための耐久消費財が多いという「住生活重視」がここでも表れている。

 サービスの支出割合は38.4%で、全国平均(40.6%)より低い。これは持ち家比率が高いことなどから家賃・地代等への支出が少ないことや、教養娯楽費でのパック旅行サービスが低いこと、また自動車保有台数が高いことから、交通(公共輸送機関)への支出が少ないこと、公立学校生徒数の割合が高いことから授業料などへの支出が少ないことなどがあげられる。(表8)

*財・サービス区分は、消費支出を商品(財)とサービスとに分けたもので、商品についてはさらに耐久度により耐久財、半耐久財及び非耐久財の3区分に分類している。                

耐久財
商品(財) 半耐久財
非耐久財
全世帯の消費支出(こづかい、贈与金、他の交際費及び仕送り金を除く)
サービス
                                  
表8 消費支出(財・サービス区分)に占める耐久財・サービスの割合
                                        単位:%、円
平成11年 平成9,10,11年の平均値
都市名 消費支出額
(財+サービス)
うち耐久消費財 うちサービス うち耐久消費財 うちサービス
月平均額 割合 順位 月平均額 割合 順位 割合 順位 割合 順位
富山市 286,112 18,316 6.4 31 111,034 38.8 37 7.6 10 38.4 36
金沢市 319,138 21,425 6.7 24 131,393 41.2 14 6.5 26 39.4 25
福井市 258,910 20,237 7.8 12 91,880 35.5 45 7.2 18 36.6 45
                       
全国平均 272,108 17,725 6.5   111,321 40.9   6.7   40.6