統計情報ライブラリー/経済県民経済計算
平成24年度県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間(年度)の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 平成24年度の日本経済は、東日本大震災からの復興需要や政策効果の発現により、夏場にかけて景気回復に向けた動きが見られたが、年中央以降、円高の進行や欧州政府債務危機の再燃による世界経済の減速、エコカー補助金の終了などにより輸出や生産が減少し、景気は弱い動きとなり、底割れが懸念される状況となった。その後、年末に新政権が発足し、政府の経済政策への期待感を背景に円安・株高が進行し、25年に入って景気は持ち直しに転じた。また、雇用情勢も緩やかな改善の動きがみられた。
 この結果、平成24年度の国内総生産は、名目で472兆5,965億円、実質で517兆4,992億円となり、対前年度経済成長率は、名目で0.2%減、実質で0.7%増となった


2 富山県経済の概況

 平成24年度の県内総生産は、名目で4兆3,840億円、実質で4兆7,016億円となり、対前年度経済成長率は、名目で1.5%減(前年度2.0%増)実質で1.5%減(同3.5%増)と、名目、実質ともに3年ぶりの減少となった。
 これは、総生産の7割弱を占める第3次産業が2年連続で増加したものの、主力産業である製造業において、円高傾向が続くもとでの企業の国際競争力の低下や海外経済の減速などの影響を受け、電気機械、一般機械、金属製品、非鉄金属、鉄鋼などが減少となったことなどによる。
 また、県民雇用者報酬、財産所得及び企業所得を合算した県民所得は、3兆3,307億円(前年度比1.6%減)となり、1人当たり県民所得は、3,077千円(同1.1%減)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況



3 県内総生産(生産側) (名目、実質)


【製造業 名目 4.0%減(実質 4.7%減)、サービス業 名目 1.8%増(実質 1.5%増)、卸売・小売業 名目 1.5%減(実質 0.6%減)、県全体で 名目 1.5%減(実質 1.5%減)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別寄与度(名目)


(1)第1次産業  名目総生産 528億円(5.8%増)【23年度 名目総生産 499億円(0.9%減)】

<農 業(6.4%増)>

 農業の総生産額の約6割を占める基幹作物である米の作況指数が前年度の「やや良」から「平年並み」となって収穫量が減少したものの、米価の上昇などにより生産額が増加したことなどから、農業全体では6.4%の増加となった。

<林 業(1.2%減)>

 林業の総生産額の約5割を占める育林業は増加したものの、約4割を占める栽培きのこ類、木材生産が減少したことなどから、林業全体では1.2%の減少となった。

<水産業(3.9%増)>

 水産業の総生産額の大部分を占める海面漁業において、ぶり類などの漁獲量が減少したものの、えび類、いか類などの単価が上昇したことなどから、水産業全体では3.9%の増加となった


(2)第2次産業  名目総生産 1兆 3,783億円(5.0%減)【23年度 名目総生産 1兆 4,503億円(3.7%増)】

<鉱 業 (9.6%減)>

 採石業の大部分を占める陸砂利、山土砂採取数量が減少したことなどから、鉱業全体では9.6%の減少となった。

<製造業(4.0%減)>

 化学は、医薬品の受託製造や後発医薬品の増加などにより9.2%増加し、県内総生産に占める割合が5.3%と、製造業の中では最も大きかった。電気機械は、電子部品の減少などにより11.0%減少した。一般機械は、海外向け工作機械、自動車部品関連の需要減などにより23.2%減少した。金属製品は、建築用金属製品の減少などにより1.5%減少した。非鉄金属は、アルミニウム再生地金やアルミニウム合金の減少などにより13.5%減少した。鉄鋼は、工作機械や自動車向けの減少などにより22.1%減少した。
 これらのことから、製造業全体では4.0%の減少となった。


図3 製造業の中分類別総生産額の推移 (名目)



<建設業(8.4%減)>

 建設業の総生産額の約3割を占める民間建築工事が増加したものの、建設業の総生産額の約4割を占める公共土木工事の治山治水工事、鉄道軌道工事がともに大きく減少したことなどから、建設業全体では8.4%の減少となった。


(3)第3次産業  名目総生産 2兆 9,265億円(0.1%増)【23年度 名目総生産 2兆 9,231億円(1.0%増)】

<電気・ガス・水道業(1.9%減)>

 電気・ガス・水道業の総生産額の約7割を占める電気事業において、県内水力発電量が減少したことや、県内火力発電量が増加したものの、燃料費が前年度に引き続き大きく増加したことなどから、電気・ガス・水道業全体では1.9%の減少となった。

<卸売・小売業(1.5%減)>

 卸売業は、機械器具などの販売額が減少し、全体の販売額は減少したものの、卸売業全体のマージン率が上昇したことから1.1%の増加となった。小売業は、飲食料品などの販売額が増加し、全体の販売額は増加したものの、小売業全体のマージン率が下降したことから3.5%の減少となった。
 これらのことから、卸売・小売業全体では1.5%の減少となった。

<金融・保険業(4.1%減)>

 金融業は、受取手数料が増加したものの、低金利の影響などにより8.0%の減少となった。保険業は、民間生命保険などが減少したものの、損害保険が増加したことから、0.6%の増加となった。
 これらのことから、金融・保険業全体では4.1%の減少となった。

<不動産業(0.9%増)>

 不動産業の総生産額の大部分を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)において、住宅床面積が増加したことなどから、不動産業全体では0.9%の増加となった。

● 帰属家賃
 持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定し、それを市場家賃で評価したもの。

<運輸業(3.2%増)>

 運輸業の総生産額の約6割を占める道路貨物業が増加したことなどから、運輸業全体では3.2%の増加となった。

<情報通信業(4.8%減)>

 通信業は、情報通信業の総生産額の約4割を占める電信・電話業の減少により4.4%の減少となった。情報サービス・映像文字情報制作業は、情報通信業の総生産額の約3割を占める情報サービス業の減少などから5.9%の減少となった。
 これらのことから、情報通信業全体では4.8%の減少となった。

<サービス業(1.8%増)>

 公共サービス業は、医療・保健、介護が増加したことから3.4%の増加となった。対事業所サービス業は、広告業が増加したことなどから0.6%の増加となった。また、対個人サービス業は、旅館・その他の宿泊所、娯楽業が増加したことなどから1.1%の増加となった。
 これらのことから、サービス業全体では1.8%の増加となった。

図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健 介護 その他の公共サービス

● 対事業所サービス
広告業 業務用物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス
娯楽業 飲食店 旅館・その他の宿泊所 洗濯・理容・美容・浴場業 その他の対個人サービス業


4 県民所得(分配)(名目)

【県民雇用者報酬 0.5%減、財産所得 0.6%増、企業所得 4.1%減、全体で1.6%減   1人当たり県民所得は 3,077千円、1.1%減】

 平成24年度の県民所得は、1.6%減の 3兆3,307億円となった。
 これは、主力産業である製造業における生産活動水準の下降の動きを受けて、県民雇用者報酬が0.5%減少、企業所得が4.1%減少したことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、1.1%減の3,077千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移

●1人当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれるため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得金額(名目)の推移


図6 県民所得伸び率(名目)の推移



(1)県民雇用者報酬     0.5%減 (23年度 0.7%減)

 県民雇用者報酬のうち全体の約8割を占める賃金・俸給は、最も大きな割合を占める製造業が給与の増加により4.4%増加したものの、その他の産業では賃金の低下や雇用者数の減少などにより、サービス業が5.4%の減少、卸売・小売業が6.8%の減少、政府サービスが2.1%の減少、建設業が8.6%の減少となり、全体で0.7%の減少となった。また、雇主の社会負担は、健康保険、年金などの増加により0.4%の増加となった。
 これらのことから、県民雇用者報酬全体では0.5%の減少となった。

(2)財産所得         0.6%増 (23年度 3.1%増)

 家計部門で個人預金残高の増加により、受取利子、受取配当が増加したことなどから、財産所得全体では0.6%の増加となった。

(3)企業所得         4.1%減 (23年度 8.9%増)

 民間非金融法人企業で主力産業である製造業などの企業所得が減少したことなどから、企業所得全体では4.1%の減少となった。



5 県内総生産(支出側)(名目)


【民間最終消費支出 0.7%増、政府最終消費支出 0.9%減、総資本形成 0.0%増、全体で1.5%減】

  平成24年度の県内総生産(支出側)は、4兆3,840億円となった。


表6 県内総生産(支出側名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出        名目 0.7%増 (23年度 0.3%増)

 民間最終消費支出は、0.7%増の2兆4,761億円となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終消費支出において、娯楽・レジャー・文化、家具・家庭用機器・家事サービス、教育などが減少したものの、約3割を占める住居・電気・ガス・水道や食料・非アルコール飲料、交通などが増加したことによる。


(2)政府最終消費支出       名目 0.9%減 (23年度 1.6%増)

 政府最終消費支出は、0.9%減の8,552億円となった。


(3)総資本形成            名目 0.0%増 (23年度 4.6%増)

 総資本形成は、9,670億円となり、前年度とほぼ同額(0.0%増)となった。これは、民間住宅が減少したものの、民間企業の設備投資が増加したことによる。


(4)財貨・サービスの移出入(純) 

 財貨・サービスの移出入(純)は、397億円の移出超過となり、49.5%の減少となった。



図9 県民経済計算の概念と相互関連図