統計情報ライブラリー/経済県民経 済計算
平成19年度富山県民経済計算の概要  
 県民経済計算とは、本県の1年間の経済活動の結果を、生産・分配・支出の三面から 総合的・体系的にとらえ、県経済の規模や成長率、さらには産業構造などを明らかにしたものである。


1 日本経済の概況

 19年度の日本経済は、前半は18年度に引き続き好調な輸出に支えられ堅調に推移したが、後半には、サ ブプライム住宅ローン問題を背景としたアメリカ経済の減速から輸出の伸びが鈍化し、原油・原材料価格の高騰や改正建築基準法による建設投資の落ち込みなど により企業部門の勢いが弱まり、景気は足踏み状態となった。
 この結果、平成19年度の国内総生産は名目で 515兆 8579億円、実質で 562兆 8105億円となり、対前年度経済成長率は名目で 1.0%増、実質で 1.9%増となった。


2 富山県経済の概況

 平成19年度の県内総生産は名目で 4兆 6543億円、実質で 5兆 1086億円と な り、対前年度経済成長率は、名目で0.8%減(前年度 1.8%減)、実質で 0.2%減(前年度 0.9%減)と名目、実質ともに2年連続の減少となった。
 これは、主力産業である製造業が一次金属は増加したものの金属製品などが減少したことから 0.0%増に とどまったことや、建設業が 15.4%減と大幅減少したことによる。
 また、県民雇用者報酬と財産所得と企業所得を合算した県民所得は 3兆 4149億円(前年度比 0.2%増)となり、1人当たり県民所得 は、3,088千円(同0.6%増)となった。


図1 経済成長率の推移



表1 富山県及び国の状況


3 県内総生産(生産側) (名目、実質)

【製造業 名目 0.0%増(実質 2.3%増)、建設業 名目 15.4%減(実質 16.2%減)、全体で 名目 0.8%減(実質 0.2%減)】

●県(国)内総生産
  一 定期間における県(国)内での財・サービスの生産活動により新たに生み出された価値(付加価値)の総額であり、次の式により求める。
県 (国)内総生産=産出額(売上総額)−中間投入額(原材料費、燃料費など)

●名目値と実質値
  市場で実際に取引されている価格で計算した総生産を「名目県(国)内総生産」といい、その増加率を名目経済成長率という。また、物価変動の影響を排除した 総生産を「実質県(国)内総生産」といい、その増加率を実質経済成長率という。
  経済成長率は、通常、対前年(度)比、あるいは対前期(四半期)比で示される。


表2 経済活動別県内総生産(名目)


●固定基準年方式と連鎖方式
  固定基準年方式とは、実質県(国)内総生産を計算する場合、基準年を固定し、その年の価格をベースに計算する方式のこと。
  この方式では、基準年から離れるにつれ、経済の実態と乖離するデメリットがある。
 これに対し、連鎖方式とは、基準年を常に前年において計算する方式で、この計算方式により乖離を小さくすることができる。
  県民経済計算では、従来、県内総生産の支出側のみ固定基準年方式により実質化していたが、平成16年度推計から県内総生産の生産側も連鎖方式により実質化 している。
  なお、連鎖方式では加法整合性が成立しない(各項目の集計と合計が一致しない)ため、「開差」欄を設けて差額を表示している。


表3 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)



図2 経済成長率の産業別 寄与度(名目)




●寄与度
 寄与度とは、各項目の 増減が全体の増減にどれだけの影響を与えてい るかを示す指標のことで、各項目の寄与度は次の式により求められる。
 なお、各項目の寄与度の合計は、全体の伸び率と一致する。




(1)第1次産業  〜名目総生産 494億円(11.6%減)【18年度 名目総生産 559億円(5.2%減)】〜

農 業(14.9%減)

 産出額の6割以上を占める基幹作物である米は、作況指数が97の「やや不良」となり、さらに需要の低迷により 価格が低下したため、また、畜産・養蚕は、鶏卵価格が低下したため、産出額が減少したことなどから、農業全体では 14.9%減となった。

林 業(0.3%減)

 木材生産、栽培きのこ類の産出額が増加したが、中間投入額の増加により林業全体では 0.3%減となった。

水産業(3.1%増)

 産出額の大部分を占める海面漁業において、漁獲量、産出額ともに増加したこ となどから、水産業全体では 3.1%増となった。


(2)第2次産 業  〜名目総生産 1兆 6243億円(2.4%減)【18年度 名目総生産 1兆 6646億円(5.9%減)】〜

鉱 業 (18.9%増)

 産出額の約7割を占める土石業が、陸砂利の採取量が増加したことなどから増加し、砕石業も7年ぶりに増加したことから、鉱業全体では 18.9%増となった。

製造業(0.0%増)

 一次金属は、非鉄金属がアルミニウム再生地金・合金など、鉄鋼は製鋼・製鋼圧延業などの製造品出荷額が増加したことから 63.4%増となった。一方、金属製品は新設住宅着工戸数の減少により住宅用アルミニウム製サッシなどの製造品出荷額が減少したことなどから6.6%減、 化学は産出額は増加したものの中間投入額が大幅に増加したことにより 6.7%減となった。これらの結果から製造業全体では、0.0%増となった。


図3 製造業の中分類別 総生産額の推移 (名目)



建設業(15.4%減)

 民間建築工事は、改正建築基準法の施行(平成19年6月)以降、新設住宅着工戸数が大幅に減少したことから、また、公共土木工事は公共事業が減少したこ とから産出額が減少した。
 これに加え、資材価格が上昇したことから、建設業全体では 15.4%減となった。


(3)第3次産 業  〜名目総生産 3兆 1466億円(1.0%増)【18年度 名目総生産 3兆 1160億円(0.5%増)】〜

電気・ガス・水道業(4.6%減)

 生産額の約8割を占める電気事業において、県内発電量が増加したものの、原油価格の上昇により減少し、電気・ガス・水道業全体では 4.6%減となった。

卸売・小売業(2.1%減)

 卸売業は、建築材料卸売業、食料・飲料卸売業などの 産出額が減少したことなどから 4.3%減、小売業は、飲食料品小売業の産出額が増加したものの、中間投入額も大きく増加したことなどから 0.1%減となった。この結果、卸売・小売業全体では 2.1%減となった。

金融・保険業(2.3%増)

 預金利率の上昇から銀行などは支払利息が増加し、証券会社は夏以降の株価の低迷から手数料収入が減少したが、農林中金富山支店が開設(平成19年7月) されたことなどから金融業は 6.0%増となった。一方、保険業は、中間投入額が増加したため 5.3%減となり、金融・保険業全体では 2.3%増となった。

不動産業(2.1%増)

 生産額 の約9割を占める住宅賃貸業(持ち家の帰属家賃を含む。)が、平均家賃の上昇などにより 1.9%増となったことなどから、不動産業全体では 2.1%増となった。

● 帰属家賃
持ち家について、借家や貸間と同様のサービスが生産されるものと仮定 し、それを市場家賃で評価したもの

運輸・通信業(1.8%増)

 運輸業は、水運業や道路貨物業が増加したことにより 3.9%増、通信業は、 2.8%減となった。この結果、運輸・通信業全体では 1.8%増となった。

サービス業(2.6%増)

 公共サービス業 は、介護保険の増加により医療・保健衛生、介護が増加し 3.1%増、対 事業所サービス業も 5.6%増加した。対個人サービス業は、娯楽業の減少などにより 1.6%減少したが、サービス業全体では 2.6%増となった。


図4 サービス業の総生産額の推移(名目)


● 公共サービス
教育 研究 医療・保健衛生、介護 その他のサービス

● 対事業所サービス

広告業 物品賃貸業 自動車・機械修理業 その他の対事業所サービス 業

● 対個人サービス

娯楽業 放送業 飲食店 旅館 洗濯・理容・浴場業 その他の対個人 サービス業
   



4 県民所得の分配(名目)


【県民雇用者報酬 0.6%増、財産所得 9.7%減、企業所得 0.6%増、全体で 0.2%増】
【1人当たり県民所得は 3,088千円、0.6%増】

 平成19年度の県民所得は、0.6%増の 3兆 4149億円となった。
 これは、財産所得が 9.7%減となったものの、県民雇用者報酬が 0.6%増、企業所得が 0.6%増となったことによる。
 この結果、県民所得(名目)を県人口で割った1人当たり県民所得は、0.6%増の 3,088千円となった。


表4 県民所得(分配:名目)



表5 1人当たり県(国)民所得の推移



●1人 当たり県民所得
 県民所得を総人口で割って求める。県民所得には企業所得も含まれ るため、必ずしも個人の賃金・生活水準を示すものではない。


図5 県民所得の推移(名目)



図6 県民所得の増加率の推移(名目)


(1)県民雇用者報酬         〜    0.6%増 (18年度 0.0%増) 〜

 県民雇用者報酬全体の8割以上を占める賃金・俸給で製造業、サービス業などが増加し、厚生年金等の社会保障に係る雇主負担の増加や、退職一時金の増加な どから雇主の社会負担も増加したことにより、全体では 0.6%増となった。

(2)財産所得         〜  9.7%減 (18年度 16.3%増) 〜

 家計部門は、金利の上昇などから受取利子が前年度に引き続き大幅増となったものの、企業業績の低迷や株価の下落などから受取配当が減少した。また、一般 政府も受取利子が減少したことから、受取から支払を差し引いた財産所得全体では 9.7%減となった。

(3)企業所得         〜  0.6%増 (18年度 11.1%減)  〜

 個人企業所得が 0.9%減となったものの、企業所得全体の約5割を占める民間法人企業所得が 2.4%増となったことから全体では 0.6%増となった。



5 県内総生産(支出側、名目)


【民間最終消費支出 名目 2兆 1855億円、総資本形成 名目 1兆 802億円】

  平成19年度の県内総生産(支出側)は、名目で 4兆 6543億円となった。


表6 県内総生産(支出側、名目)



図7 県内総生産(支出側、名目)の推移


図8 県内総生産(支出側、名目)の増加率の推移


(1)民間最終消費支出     〜   名目 1.1%増 (18年度 0.4%増)  〜

 民間最終消費支出は、名目で 2兆 1855億円、1.1%増となった。これは、民間最終消費支出の大部分を占める家計最終 消費支出において、被服費などが減少したものの、住居費、交通通信費などで増加したことなどによる。

(2)政府最終消費支出     〜  名目 1.3%増 (18年度 0.5%減)  〜

 政府最終消費支出は、名目で 8720億円、1.3%増となった。


(3)総資本形成     〜  名目 1.3%減 (18年度 6.8%増)  〜

 総資本形成は、民間法人企業の設備投資の増加や北陸新幹線整備事業の進展があったものの、住宅着工戸数が減少したことなどから全体として 1.3%減となった。


(4)財貨・サービスの移出・移入    〜  移出 名目 3.0%増、 移入 名目 2.0%増  〜

 移出は、名目で 3兆 6695億円、3.0%増となった。
 移入は、名目で 3兆 565億円、2.0%増となった。
 なお、移出から移入を差し引いた純移出は、6130億円(8.2%増)の移出超過となっている。


図9 県民経済計算の概念と相互関連図