特集

平成30年富山県の工業 製造品出荷額等が初めて4兆円を超える!
〜2019年工業統計調査結果より〜

統計調査課商工係

 

1 はじめに


工業統計調査は、製造業を営む事業所を対象に、明治42年(1909年)に第1回調査が実施され、大正9年(1909年)以降は毎年(※1)実施されている、大変歴史のある調査です。(大正9年に第1回調査が実施された国勢調査よりも古くから実施されています。)また、この調査は公的統計の中でも特に重要性の高い基幹統計調査として、統計法に位置づけられています。

この調査では、従業者数4人以上の事業所について、事業所数、従業者数、製造品出荷額等、原材料使用額等、現金給与総額、有形固定資産(※2)、在庫額(同)、工業用地及び用水量(同)などを知ることができます。

調査結果は、GDP(国内総生産)の推計、国や都道府県、市町村が行う中小企業対策、産業振興政策工業団地開発計画などの企画・立案のための基礎資料として利用されるほか、市場予測や事業者が事業計画を立てるうえでの資料としても重要な役割を担っています。その他、県内小学校4年生以降の学習用教材として「のびゆく富山県」にも掲載され、官民問わず幅広く活用されています。

今回、2019年工業統計調査が令和元年6月1日現在で実施されましたので、その結果についてご紹介します。

※1
5年に1回、全産業の全ての事業所(工業統計調査では対象としていない従業者数3人以下の事業所も含む)を対象とした経済センサス−活動調査を実施する年(次回:令和3年)は、工業統計調査は実施されません。(経済センサス−活動調査の中で工業統計調査の内容を把握することとしています。)
※2
従業者30人以上の事業所

2 2019年工業統計調査結果の注目トピック


製造品出荷額等は、これまでの最高額である平成19年の3兆9,601億円を更新し、4兆320億円となり、明治42(1909)年の調査開始以来、初めて4兆円を超えました。

なお、明治42年の第1回調査の製造品出荷額等は、632万3千円でした。

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3 2019年工業統計調査結果の概況(従業者4人以上の事業所)

(1)事業所数及び従業者数

事業所数は2,718事業所、前年比+0.7%(+18事業所)で3年ぶりの増加となりました。従業者数は127,378人、前年比+2.0%(+2,469人)で6回連続の増加となりました。

人口1万人あたりの事業所数は25.9事業所(全国平均14.6事業所)で全国3位、従業者数は1,213人(全国平均637人)で全国1位であり、本県は、製造業が盛んな「ものづくり県」であることがわかります。


産業別の事業所数をみると、金属製品17.8%、生産用機械12.4%、食料品11.9%、プラスチック7.9%、繊維5.6%と、この上位5産業で55.5%を占めています。


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産業別の従業者数をみると、金属製品15.1%、生産用機械12.2%、化学11.9%、電子部品7.7%、プラスチック7.3%と、この上位5産業で54.2%を占めています。


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(2)製造品出荷額等

製造品出荷額等は4兆320億円、前年比+4.4%(+1,684億円)で2年連続の増加となりました。

富山県は、化学18.4%、生産用機械14.2%、金属製品10.3%、非鉄金属9.9%、電子部品8.9%と、この上位5産業で61.8%を占めています。

全国は、輸送機器21.1%、化学9.0%、食料品9.0%、生産用機器6.6%、電気機械5.7%と、この上位5産業で51.4%を占めています。

また、本県は、化学工業のうち、医薬品製造が75.5%を占め、県産業全体からみても13.9%と一番高い比率となっており、まさに「くすりの富山」ということができます。そのほか、金属製品のうち、金属製サッシ・ドア製造業が45.8%を占めており、住宅用アルミニウム製サッシは全国シェア32.8%で1位となっています。


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調査項目の変更や産業分類の改訂のため単純比較はできませんが、調査開始当初から現在まで富山県は化学工業が盛んであることがわかります。また、明治から昭和にかけて繊維・紡績工業の比率が高く、平成になってからは、生産用機械などの機械工業や金属製品の比率が高くなるなど、産業構造の変化がみられます。


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(3)付加価値額 (※3)

付加価値額は1兆4,536億円、前年比+6.8%(+929億円)で2年連続の増加となりました。

富山県は化学18.7%、生産用機械15.3%、電子部品11.3%、金属製品10.8%、非鉄金属5.2%と、この上位5産業で61.3%を占めています。

全国は輸送機械17.6%、化学11.0%、食料品9.7%、生産用機械7.7%、電気機械6.3%と、この上位5産業で52.3%を占めています。

※3
付加価値額は、事業所の生産活動において、新たに付け加えられた価値のことで、次の式により求められます。
付加価値額=生産額−(原材料使用額+減価償却費+内国消費税)

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本県の付加価値率(※4)は35.4%で、産業別では、窯業・土石が53.0%、ゴム製品が49.2%、電子部品が44.1%と高くなっています。

※4
付加価値率は、算出に必要な「減価償却額」及び「製造品在庫額・半製品、仕掛品の価格の増減額」を毎年調査している従業者30人以上の事業所のみで計算しています。
付加価値率(%)=付加価値額/製造品出荷額等×100

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(4)地域・市町村別の動き

事業所数は、富山地域が最も多く、前年に比べ富山地域、高岡・射水地域で増加しました。

従業者数は、富山地域が最も多く、前年に比べ富山地域、高岡・射水地域、新川地域、砺波地域と全ての地域で増加しました。

製造品出荷額等は、富山地域が最も多く、前年に比べ富山地域、高岡・射水地域、新川地域で増加しました。


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4 おわりに


本稿では、「平成30年富山県の工業」から一部要約してご紹介しましたが、このほか、都道府県別や従業者規模別の結果なども掲載しております。ビジネスのデータ分析に、学校の教材に、よもやま話に、さまざまなシーンで工業統計調査結果をお役立ていただければ幸いです。

※なお、詳しい結果内容につきましては、とやま統計ワールド内の工業統計調査ページを、全国の結果につきましては、経済産業省のホームページをご覧ください。

とやま統計ワールド「工業統計調査」
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/kogyo/index.html
経済産業省「工業統計調査」
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/index.html

今回、2019年工業統計調査の実施にあたり、ご協力いただきました関係の皆様方、ご回答いただきました事業所・企業の方々に改めて厚く御礼申し上げます。

また、今年実施されました2020年工業統計調査結果「令和元年富山県の工業」は、令和3年6月に公表を予定しています。

来年は令和3年6月1日を基準日に、農林漁家等を除くすべての事業所及び企業を対象とした「令和3年経済センサス‐活動調査」が実施されます。引き続き、同調査へのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。




とやま経済月報
令和2年10月号