特集

少子化対策における取組みについて

富山県 総合政策局 少子化対策・県民活躍課

 

1 はじめに


近年、全国的に、未婚化・晩婚化の進行、晩婚化による晩産化・少産化等により、少子化・人口減少に歯止めがかからない状況にあります。

富山県では、平成21年6月に制定した「子育て支援・少子化対策条例」や平成27年に策定した「かがやけ とやまっ子 みらいプラン」に基づき、家庭・地域における子育て支援、仕事と子育ての両立支援、子育て家庭における経済的負担の軽減など、子育て支援・少子化対策に関する施策を総合的に推進してきました。こうした取組みの結果、病児・病後児保育などの特別保育や放課後児童クラブの実施箇所数の増加、仕事と子育てを両立しやすい職場環境の整備に取り組む企業の増加など、一定の成果も現れてきているところですが、全国同様、依然として少子化・人口減少傾向にあります。

こうしたなか、県では、昨年10月から実施された幼児教育・保育の無償化などの国の動き、子どもや子育てを取り巻く環境の変化などを踏まえ、中長期的な視点に立って本県の子育て支援・少子化対策を推進するため、今年度末に終期を迎える現行計画に続く、新たな基本計画を策定することとしております。地域社会の持続的な発展には、県民の結婚・出産、子育ての願いがかなう環境づくりを進めていくことが不可欠であり、県民全体で少子化対策に取り組むことが重要です。

本稿では、本県の少子化の現状と課題を分析し、課題解決に向けた取組みの一例として、結婚支援、男性の家事・育児参画の促進に関する事業をご紹介します。

2 富山県の少子化対策における現状と課題


(1)少子化の状況

本県の出生数は、昭和47年をピークに減少傾向にあり、平成30年には7千人を割り込み、6,846人となっています。

合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む子どもの数)は、平成18年度、19年度には1.34と過去最低となりましたが、以降増加傾向に転じ、平成27年に21年ぶりに回復した1.50台を4年連続維持し、平成30年は1.52と全国値1.42を上回っています。


資料:人口動態統計(厚生労働省)
資料:人口動態統計(厚生労働省)


(2)少子化の要因

この少子化の要因として、@未婚化・晩婚化の進行、A晩婚化による晩産化・少産化等が挙げられます。


①未婚化・晩婚化

近年、男女ともに未婚化が進んでおり、特に女性の25〜29歳、30〜34歳の未婚率は、平成2年にはそれぞれ31.6%、7.9%であったものが、平成27年には、それぞれ59.4%、32.6%と、大幅に上昇しています。また、男性の25〜29歳、30〜34歳の未婚率は、平成27年には、それぞれ73.6%、47.9%と全国平均を上回っています。




平均初婚年齢についても、平成30年には男性31.0歳、女性29.3歳と、男女ともに年々上昇し、理想の結婚年齢(男性29.1歳、女性27.1歳:R元県調査)と開きがあります。

また、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合)は、男女ともに平成2年から大幅に上昇しており、平成27年では男性が21.9%と、4.5人に1人、女性が10.4%と9.6人に1人は結婚経験がありません。


②晩婚化による晩産化・少産化

初婚年齢の上昇に伴い、晩産化の傾向が現れています。第一子出生時の母親の平均年齢は全国と同様に上昇傾向にあり、平成5年に26.6歳だったのに対し、平成30年には30.6歳となっています。初婚年齢が高くなることに伴って、晩産化の傾向が現れており、第1子を持ちたい理想的な年齢27.8歳とは開きがあります。(R元県調査)




(3)少子化の要因の背景

これら少子化の要因の背景には、若者の結婚に対する意識や、子育て家庭の育児に対する不安や負担感が大きいことなどがあります。


①結婚に対する意識

令和元年に行った県の意識調査によると、20代、30代の未婚者の83.3%がいずれは結婚したいと考えており、理想の結婚年齢(平均)は、男性29.1歳、女性27.1歳、子ども(第1子)を持ちたい理想的な年齢は、男性30.0歳、女性27.8歳となっています。




②結婚しない理由、結婚できない理由

現在結婚していない理由としては、「適当な相手にめぐり会わない」が男女とも最も高くなっています。また、異性と交際する上での不安として、全体では「そもそも異性との出会いの場所がわからない」が39.1%と最も高く、出会いの場の創出が必要であるといえます。


※表をクリックすると大きく表示されます



③未婚化・晩婚化の理由

未婚化・晩婚化の理由としては、「独身生活のほうが自由だから」という意見が全体として48%と多くなっています。男女に大きな差があるものは、「女性の仕事、育児に対する負担感、拘束感が大きいから」について、男性の回答が16.9%であるのに対し、女性は34.5%と高くなっています。




④出産に対する意識

子どもを持つ保護者の理想の子どもの数は、約半数が「3人」と回答している一方、実際に欲しい子どもの数は「2人」が約半数とギャップがあります。


資料:「子育て支援サービスに関する調査」(H29 富山県)


厚生労働省の調査によると、夫の家事育児時間が長くなるほど第2子以降の生まれる割合は高い傾向にあります。しかし、富山県の男性の家事育児時間は1日あたり1時間5分と、女性の7時間21分に比べ大変短い状況にあります。平成27年の国勢調査によると、富山県は共働き世帯の割合が55.9%と全国4位であり、妻への家事・育児負担が大きいことが分かります。男性の家事・育児参画を促進し、女性の家事・育児の負担を軽減することが、未婚化・晩婚化対策、少子化対策に重要であるといえます。


出典:内閣府ウェブサイトより
総務省「平成28年社会生活基本調査」等

3 課題解決に向けた取組み


(1)結婚を希望する男女への支援

結婚を希望する独身男女へ出会いの機会を創出するため、本県では平成26年10月にとやまマリッジサポートセンターを開設し、マッチングシステムによる出会いの機会を提供しております。これまで、794組のカップルが成立し、うち59組からご成婚の報告をいただいております。

さらに今年度は、特に若い世代に効果的に訴求するよう、新たにSNSやタウン情報誌等を活用して、マリッジサポートセンターを周知するなど、会員増の取組みを強化しております。

また、自然な出会いの場の創出のため、異業種間交流会の開催、民間企業・団体等が開催する婚活イベントへの補助の実施により、各種団体の活動を後押ししています。


(2)男性の家事・育児参画の促進

男性の家事・育児参画の促進のため、県では、県民一人ひとりが、家庭内での家事分担について考える機会を創出することを目的とした「家族でハッピー!家事・育児分担キャンペーン」を実施しております。

夫婦で現在の家事育児、例えば、「ゴミの分別・ゴミ出しをする」、「食事を作る」、「子どもをお風呂に入れる」など30の項目について、夫婦のどちらがどれくらい担っているかを記入することで現状を見える化し、今後の改善につなげていただくための「わが家のミーティングシート」を作成し、令和元年度は148のご家族に取り組んでいただきました。取り組んでみたご家族からは「やっているつもりだったが妻と比べれば全然だった」「任せきりだったと反省した」「もっとがんばりたい!」などといった感想が寄せられました。



また、家事・育児分担の啓発と、家族の温かさを感じるようなファミリー川柳を募集したところ、家事・育児の大変さをよんだ作品や、家族への感謝がこめられた作品など全276作品の応募をいただき、5作品が奨励賞を受賞しました。




今後、その川柳を使用したポスターを作成し、県内公共交通機関や市町村等に掲出し、「結婚っていいな、家族っていいな」と思ってもらえるような気運醸成に取り組むこととしております。

2月24日(月)には、男性の家事・育児参画を促進するためのイベント「家族でハッピー!家事・育児フェスティバル」を開催し、子育て中のパパによる「パパトーーク」や、とやま子育て応援団体験ブース、家族みんなが笑顔になれるステージショー等を行い、子育て気運の醸成を図ります。


4 おわりに


今回は、結婚支援や男性の家事・育児参画の促進についてご紹介しましたが、県ではこのほかにも少子化対策のための様々な取組みを実施しています。

例えば、平成27年4月から第3子以降の保育料を原則無償化し、平成30年9月からは低所得世帯の第1子、第2子の保育料についても無償化・軽減するなど、国の動きに先駆けて保育料軽減策を実施しているほか、全国初の取組みである「とやまっ子子育て応援券」事業や、多子世帯の教育費等に対する実質無利子融資の実施など、子育て支援策の拡充・強化を図っています。

本稿でご紹介した取組み等を通じて、県民の結婚・出産、子育ての願いがかなう環境づくりに取り組んでまいります。


各事業の詳細については、県少子化対策・県民活躍課のホームページで紹介しています。

http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1017/index.html




とやま経済月報
令和2年2月号