特集

「富山のさかな」のブランド化の推進について

富山県 農林水産部 水産漁港課

 

1 はじめに


富山湾は、日本海に分布する約800種のうち約500種の魚が生息し、一年を通して豊富な魚種に恵まれている水産資源の宝庫です。また、沿岸から急激に水深1,000m以上までに落ち込む急峻な海底地形となっており、漁場が漁港から近く短時間で水揚げできることから、「富山のさかな」は飛びぬけて鮮度がよいという特徴があります。

この富山湾の良好で豊かな自然・漁場環境を背景とする本県漁業の特徴を最大限に活かして「富山のさかな」のブランド化を推進するため、県では平成21年度に学識者や漁業団体、飲食、旅行関係者、行政などで、「富山のさかな」ブランド化推進協議会を設立し、様々な取組みを行ってきております。


▲ 豊富な魚種
▲ 富山湾の海底地形 (色が濃いほど深い)

2 これまでの取組み

①「富山のさかな」の強みを活かしたブランドづくり

各漁協等がそれぞれの地域の漁業の優位性を最大限に活かした新たなブランド魚種の発掘・育成や既に全国的に知名度があるブリやホタルイカ、シロエビといったブランド魚の良さをブラッシュアップする取組みに対し、支援しています。


▲ 各漁協等の取組みに対する支援の一例
②「富山のさかな」のファンづくり

県内向けの取組みとして、漁業関係者や卸・流通業者などで構成された「富山県おさかな普及協議会」が行っている、学校給食への県産魚の提供や、一般消費者・学生を対象にした料理教室といった地産地消及び魚食普及の活動に対し、支援しています。

また、「『うまさ一番 富山のさかな』キャンペーン」サイト(ホームページ)による「富山のさかな」の情報発信や、首都圏において種類豊富でおいしい魚の魅力を重点的に発信し、実感していただく「富山のさかな」おもてなしフェアをはじめとした県外でのPRイベントの開催などに加え、輸出やインバウンド消費の拡大を目的として、「『うまさ一番 富山のさかな』キャンペーン」サイトや、富山のさかなを紹介するパンフレットの多言語版を制作し、「富山のさかな」の海外向け情報発信に取り組んでいます。


▲ おさかな料理セミナー
▲ 「富山のさかな」おもてなしフェア
○「うまさ一番 富山のさかな」キャンペーンサイト
http://www.toyama-sakana.jp/
③高品質な水産物「富山ブランド」の供給

「富山のさかな」の衛生管理・鮮度保持対策を徹底するため、県全体の漁港の衛生管理指針の作成、荷さばき所の改築、冷凍貯蔵施設の整備などの施設整備の支援を行っています。その他、美味しい「富山のさかな」を安定的に供給するため、ヒラメ・アワビなどの種苗生産・放流や、次期栽培種としてキジハタ・アカムツの研究等の栽培漁業の推進、藻場の保全・清掃活動、漁業体験をはじめとした漁業の担い手確保・育成などに取り組んでいます。

▲ 桟橋屋根の整備、荷さばき所の改築
▲ 児童によるヒラメの放流
▲ 海岸清掃
▲ 定置網漁業の体験

3 新たなブランド「高志の紅ガニ」

平成8年に、ブリ、ホタルイカ、シロエビを「富山県のさかな」に選定していますが、県と漁業関係者では、これらに続くブランドとして、平成28年から新たに秋を代表する魚として、県産紅ズワイガニを「高志(こし)の紅(アカ)ガニ」とネーミングして、ブランド化に取り組んでいます。

この「高志の紅ガニ」のネーミングは、県内漁業者の中で使用されている紅ズワイガニの呼称「アカガニ」に、県の地名ゆかりの「高志」と、良い物の提供をめざす漁業者の「高い志」を重ねたものです。「富山湾の朝陽(あさひ)」というキャッチフレーズとともにPRしています。

なお、高志の紅ガニの中でも、一定の規格を満たすものについては、「極上 高志の紅ガニ」とし、その証としてタグを付け、トップブランドとして出荷しています。

▲ 富山湾の朝陽 高志の紅ガニ
図
▲ タグ表面

図
▲ タグ裏面
■トップブランド『極上 高志の紅ガニ』の規格
産 地
県内の漁港で水揚げされたものであること
重 さ
概ね1,000g以上
大きさ
甲幅140mm以上
その他
すべての脚がついていること
堅ガニ(身入りがよいもの)であること
■『高志の紅ガニ』の特徴
  • 漁場が近く、水揚げまでの時間が短いため鮮度が良い。
  • 高志の紅ガニはズワイガニよりも早く漁期が始まり、旬を先取り。

※図をクリックすると大きく表示されます

※鮮度指標:小さいほど鮮度が良く、一般的に刺身などの生食用には、20%以下が目安とされています。
※県農林水産総合技術センター食品研究所他調べ
▲ 高志の紅ガニキャンペーンやシティスケープ
によるPR(H29)
▲ 高志の紅ガニフェアでの食べ方講座(H30)

県産紅ズワイガニのブランド化により、春:ホタルイカ、夏:シロエビ、秋:高志の紅ガニ、冬:ブリと富山の四季を代表するブランドが揃い、「富山のさかな」の魅力が更に増したのではないかと考えています。今後はこの4大ブランドを中心に、県内外へ重点PRを実施する等、「富山のさかな」のブランド力の一層の強化を図っていきます。

▲ 富山湾の神秘 ホタルイカ
▲ 富山湾の宝石 シロエビ
▲ 富山湾の王者 ブリ
○「高志の紅ガニ」の紹介
http://www.toyama-sakana.jp/kani/index.html

4 今年度(令和元年度)の主な取組み

図
▲ ルミネ大宮での
グルメフェア
①首都圏における「富山のさかな」の販路拡大・PR

富山県産魚の販路拡大を図るため、情報発信力が強く、消費量が多い首都圏における、特に若者等への富山のさかなの浸透を目的として、若者が多く集まるルミネ大宮での「富山のさかな」を使用したグルメフェアの開催、ポスターやホームページ等の広告媒体による「富山のさかな」の通年PRなどを実施します。

②サスティナブルな漁業や漁師等の魅力も含めた「富山のさかな」の情報発信
図
▲ 水揚げの風景

定置網漁業等のサスティナブル(持続可能)な営みや、鮮度の高い魚を提供する漁師の姿等も含めて「富山のさかな」の魅力を発信し、影響力のある料理人や文化人等の評価も得て、高付加価値化や担い手の意欲向上・確保につなげることを目的として、「富山のさかな」魅力体験ツアーの開催、ホームページによる県内の漁師や料理人の魅力紹介、サスティナブルな水産物であることを示す「水産エコラベル」認証の県内漁業者への周知や認証取得に向けた調査研究などに取り組みます。

③富山湾の深海魚の調査研究・魅力発信

近年、リュウグウノツカイやダイオウイカといった希少な深海性魚介類が出現し、富山湾の深海に対する関心が高まっていることから、魚津水族館と連携協力して、富山湾の深海映像の撮影調査など深海生物の生態等の調査・研究を進めるとともに、子供向けイベントやシンポジウム等を開催し、富山湾のさらなる魅力発信に努めます。

▲ リュウグウノツカイ

5 おわりに


図

これまでの取組みの結果、平成28年3月に経済専門誌が実施した調査で「魚の県といえば」の質問に対して富山県が第1位に選ばれるなど、「富山のさかな」の認知度や評価が向上しています。今後もこの評価や知名度を持続させ、より強固なものとしていくとともに、さらに1ランク上を目指して、「富山のさかな」の魅力を一層強力に発信していくこととしています。




とやま経済月報
令和元年9月号