特集

キャリア教育の推進への新たな取組

富山県教育委員会 県立学校課 高校教育係

 

はじめに


本県高校生のインターンシップは、年々拡充しており、平成30年度の体験率(全日制)は、職業科で99.7%、全体で75.2%と全国的にみても高い割合になっています。しかしながら、普通系学科の体験率が65.6%と職業科に比べて低いこともあり、進学希望者にも体験を通して自己の将来について深く考えさせることが生徒のキャリア発達において求められています。

そこで、今年度から新たに、富山型キャリア教育充実事業の一環として、「社会へ羽ばたく『17歳の挑戦』」を実施しています。具体的には、従来の企業でのインターンシップに加えて、普通系学科の生徒を対象として新たに「アカデミック・インターンシップ」と「富山の企業魅力体験バスツアー」を実施しています。

以下では、「アカデミック・インターンシップ」と「富山の企業魅力体験バスツアー」についてご紹介いたします。

インターンシップ体験率の推移(全日制・3年生)

1 アカデミック・インターンシップ


(1)目的

大学等への進学を希望する生徒に対し、大学研究室等と連携して将来進む可能性のある学問分野に関係した研究活動等を体験させます。また、大学の学びが社会につながることを理解させ、学習意欲や進路意識を高める契機とします。

(2)内容

富山大学、富山県立大学の教授や学生等から指導を受けながら、実験・実習・演習を体験します。

(3)研修内容(262名の申し込みがあり、抽選により参加者を決定)

富山大学(10講座)

学部・学科 研修テーマ
人文学部・人文学科 人文学部で学ぶということ
経済学部・経営学科 日本企業の海外投資経営行動について
薬学部 消化管の働きのマクロからミクロまでを目で見る
医学部・医学科 医師の職業体験
医学部・看護学科 看護師の技術体験
人間発達科学部 社会的ニーズに合った支援の方法
理学部 見よう!触れよう!野生のけもの
工学部・工学科
電気電子工学コース
マイコンを利用してラジコンカーをハッキングしよう!
工学部・工学科
応用化学コース
医薬品の化学合成
都市デザイン学部
都市・交通デザイン学科
ウェアラブルセンサーを装着して様々な情景を情報センシングしよう

富山県立大学(4講座)

学部・学科 研修テーマ
工学部
電子・情報工学科
パワーエレクトロニクス(省エネ回路を作ってみよう)
人間情報工学(生体情報の計測とその解析)
工学部
電子・情報工学科
LEDと省エネルギー照明
IoTプログラミング(加速度センサーを使ったプログラミング)
アカデミック・インターンシップ
富山県立大学工学部・工学科
「加速度センサーを使ったプログラミング」
アカデミック・インターンシップ
富山大学工学部・工学科(応用化学コース)
「医薬品の化学合成」

(4)参加生徒の意識調査(回答120名)
Q1 全体的な内容について満足できたか。
  • 参加した生徒全員が内容について満足している。
Q2 学部の研究内容に対する理解は深まったか。
  • 学部の研究内容が深まった生徒の割合が95.8%と高い割合となっている。
Q3 将来の進学先として、県内大学を選択肢に入れているか。
  • 進学先として、県内大学を選択肢に入れている生徒の割合が 88.3%と高い割合となっている。
Q4 今後の進路を考えるための参考になったか。
  • 今後の進路を考えるために参考になった生徒の割合が99.2%と高い割合となっている。
(5)生徒の感想(一部抜粋)
  • 実際に訪問しないとわからない雰囲気や研究内容などを親切に教えていただき、進路を考えるうえでとても参考になりました。
  • オープンキャンパスでは経験できない大学の内部を見ることができ充実した1日でした。
  • 大学生の方に勉強の仕方を教えていただいたので、これからの勉強の参考にしたいです。
  • 大学で授業を実際に受けることにより、学習や進学の意欲も高まりました。
  • 様々な分野の先生方がおられ、自分が知らなかった分野を学べるということを知りました。

2 富山の企業魅力体験バスツアー


(1)目的

県内企業等の見学・実技体験や就労体験等を実施することにより、県内企業理解を深め、地域を支え富山で活躍できる人材を育成します。

(2)内容

進学希望者のUターンに寄与するように、オンリーワン企業や産業観光地などを巡り、見学、体験します(必ず体験可能な企業を入れる)。

(3)対象校

4校

(4)事業内容(※アンダーラインは体験を実施した企業)

雄山高校 1人2社訪問

実施日 8月22日(木)
参加生徒 2学年 116名(普通科3クラス)
訪問先
(10社)
(株)北日本新聞社、(株)富山村田製作所、(株)大和富山店、北陸電気工業(株)、富山市役所、(株)プレステージ・インターナショナル富山BPOタウン、(株)廣貫堂、YKK(株)、ホテルグランテラス富山富山地方鉄道(株)

呉羽高校 1人2社訪問

実施日 8月28日(水)
参加生徒 1学年 230名(普通科6クラス)
訪問先
(16社)
YKK(株)、(株)プレステージ・インターナショナル富山BPOタウン富山信用金庫富山第一ホテル、(株)不二越、(株)スギノマシン、(株)チューリップテレビホテルグランテラス富山(株)北陸銀行、(株)富山村田製作所、(株)北日本新聞社富山地方鉄道(株)、富山市役所、北陸電気工業(株)、(株)廣貫堂、北陸電力(株)

大門高校 1人2社訪問

実施日 8月1日(木)
参加生徒 1学年 120名(普通科3クラス)
訪問先
(6社)
ホーライサンワイナリー(株)、(株)富山環境整備、若鶴酒造(株)、(株)能作、北陸コンピュータサービス(株)、(株)プレステージ・インターナショナル富山BPOタウン

南砺平高校 1人2社訪問

実施日 7月12日(金)
参加生徒 1学年 24名(普通科1クラス)
訪問先
(2社)
若鶴酒造(株)、(株)能作
(5)参加生徒の意識調査(回答467名)
Q1 今後の進路を考えるための参考となったか。
  • 進路を考えるための参考となった生徒が85.7%となっている。
Q2 県内企業に興味関心を持ったか。
  • 県内企業に興味関心を持った生徒が、91.6%と高い割合となっている。
Q3−1 将来の就職先として、県内企業を選択肢に入れているか。(事前)
  • 企業見学前は、将来の就職先として、県内企業を選択肢に入れたいと答えた生徒の割合は、約半数である。
Q3−2 将来の就職先として、県内企業を選択肢に入れているか。(事後)
  • 企業見学後、将来の就職先として、県内企業を選択肢に入れたいと答えた生徒が事前に比べ21.6%増加した。
Q4 他にどのような企業について、知りたいと思ったか。(複数回答可)

(6)各校教員からの意見(一部抜粋)
  • 実際に企業を見学したことで、県内の企業に対する理解が深まった。
  • 自校のOBや若手社員の方からお話しを聞くことで、近い将来を具体的にイメージできた。
  • 進学先としての大学だけではなく、その後につながる職業を意識して将来を思い描く機会となった。
  • 担当者へ積極的に質問するなど、企業への関心の高さが感じられた。
  • 将来は、働きやすく暮らしやすい富山で就職したいとの感想も多く見られた。

おわりに


インターンシップは、高校生にとって、近い将来の進路や生き方を考えるうえで大きな意義があります。新学習指導要領の総則にもキャリア教育の充実を図ることが明記され、インターンシップを含めたキャリア教育はますます重要性を増しています。

「アカデミック・インターンシップ」では、想定を上回る応募があり、参加者からは満足できたとの意見がありました。今後は、富山大学、富山県立大学において、他の学部・学科(コース)の受入先の拡充や新たな大学への依頼などを検討していきます。また、「富山の企業魅力体験バスツアー」では、本県の企業の良さを知り、仮に県外の大学等に進学した場合であっても、将来、県内企業も就職の対象としてもらうため、来年度以降も県立高校の全ての普通系学科で順次実施することとしています。

自己の将来について深く考えさせることが生徒のキャリア発達において重要であることから、県立高校の全学科でのインターンシップの促進を図るため、今後とも「社会へ羽ばたく『17歳の挑戦』」を推進し、本県の将来を担い、富山で活躍する人材の育成に取り組んでいきます。




とやま経済月報
令和元年12月号