特集

国の伝統的工芸品の新規指定及び海外販路開拓支援について

富山県 商工労働部 経営支援課

 

1 はじめに


本県には、高岡銅器、井波彫刻、高岡漆器、庄川挽物木地、越中和紙、越中福岡の菅笠(平成29年11月30日に指定)の6つの国指定伝統的工芸品のほか、越中瀬戸焼、高岡鉄器、高岡仏壇、とやま土人形、富山木象嵌の5つの県指定伝統工芸品があります。

こうした優れた伝統工芸品は、長い歴史と伝統を有し、高度な技術・技法が受け継がれている本県の貴重な財産ですが、近年の生活様式の変化等に伴い全国的に売り上げが低迷しており、本県においても伝統的工芸品の生産額は、平成2年度の約430億円から平成29年度は約127億円と、ピーク時の約3分の1に減少しています。

また、従事者数についても、平成2年度の約4,500人から平成29年度は約1,500人と大幅に減少しているなど、担い手不足が懸念されています。

このため、県では、伝統工芸品産業の振興を図るため、商品開発や販路開拓による需要拡大、伝統工芸技術の継承や人材育成など、様々な施策による支援を行っています。

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今回は、その中から、昨年新たに国の伝統的工芸品に指定された「越中福岡の菅笠」と伝統工芸品の海外販路開拓支援策として実施した「とやま伝統工芸PR展示会 in Paris事業」について紹介いたします。

2 「越中福岡の菅笠」国の伝統的工芸品への指定


「越中福岡の菅笠」は、主に高岡市福岡地区において生産されている縫いがさです。江戸時代に加賀藩が生産奨励したことから、生産が本格化し、幕末頃の最盛期には210万蓋(がい)を出荷し、福岡地区は菅笠の一大生産地となりました。現在の生産高は約3万蓋となっていますが、今でも菅草の栽培から笠骨作り、笠縫いから仕上げを経て出荷するまでの全工程が当地で集約的に行われており、当産地の菅笠は全国シェアの約9割を占めています。

このようななか、越中福岡の菅笠製作技術が平成21年3月に「国の重要無形民族文化財」に指定されました。

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スゲ草の刈り取り
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製作風景(笠骨づくり)
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製作風景(笠縫)
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様々な種類の管笠

また、富山県では平成25年10月に富山県伝統工芸品に指定し、販路開拓事業や後継者育成事業の支援を行ってきました。

そして、平成29年11月には国の伝統的工芸品に指定され(富山県では、越中和紙以来29年ぶりの指定)、富山県の国指定伝統的工芸品は6品目になりました。

3 とやま伝統工芸PR展示会 in Paris 事業


富山県の伝統工芸品の魅力を海外に発信するため、平成30年4月15日〜4月19日(5日間)、パリのDiscover Japan Parisにおいて伝統工芸品の展示会を実施しました。展示会ではフランス人デザイナーであるヤニック・デュフェ氏が富山を訪問した際に選定した富山県の伝統工芸品22社111点を展示しました。

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ディスカバージャパンパリ外観
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展示の模様

会場では、伝統工芸士島谷好徳氏(おりん職人)と国際北陸工芸サミット「U-50国際北陸工芸アワード」で最優秀賞を受賞した川原隆邦氏(和紙職人)による製作体験も実施し、多くの人に伝統工芸の魅力を発信することができました。

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川原氏による和紙の製作体験
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川原氏による和紙の製作体験
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島谷氏によるすずがみの製作実演
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島谷氏によるすずがみの製作実演

また、4月17日(火)にはパリの在仏日本大使公邸において、「とやま伝統工芸 in Paris交流会」を開催しました。交流会では、主催者側として木寺駐フランス日本国特命全権大使、石井知事、永原日本工芸会富山支部長が参加し、パリ在住美術館関係者、メディア関係者、観光関係者、デザイナー等を招いて開催されました。

会場では、富山県の伝統工芸品の展示や島谷氏、川原氏による実演を行い、多くの来場者が興味深そうに見入っていました。特にフランス人女性の方々が概して男性以上に熱心に展示物に触れながら質問しているのが印象的でした。

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島谷氏による実演
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川原氏による実演
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伝統工芸品の展示
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交流会の様子

4 おわりに


県では、このほかにも、伝統工芸品の製作体験の商品化やブラッシュアップに対する支援、タイでの伝統工芸品のPRイベントの開催、パリで開催されるジャポニズム2018公式企画への参加、各産地における希少な技術や技法の継承について支援を行うなど、商品開発や販路開拓による需要拡大、伝統工芸技術の継承や人材育成など様々な取組みを行っています。今後とも、本県伝統工芸品産業の振興を図るため、積極的な支援を行ってまいります。

とやま経済月報
平成30年7月号