特集

「イクボス企業同盟とやま」の設立
〜働き方改革の推進に向けて〜

富山県 総合政策局 少子化対策・県民活躍課

 

1 はじめに


少子高齢化の進行に伴い、生産年齢人口が減少するなか、魅力と活力あふれる富山県として持続的に発展していくためには、若者や女性、高齢者など、誰もが意欲や能力に応じて活躍できる環境づくりを進めることが大変重要です。

このため、県では、これまで、特別保育や学童保育の充実を図るとともに、一般事業主行動計画の策定を義務付ける企業の範囲を、県条例で法律よりも大幅に拡大し、さらに、優れた取組みを行っている企業を顕彰するなど、仕事と子育ての両立支援や働きやすい雇用環境の整備促進に取り組んできました。

一方、国においては、「働き方改革」を一億総活躍社会に向けた最大のチャレンジと位置づけ、本年3月に、長時間労働の是正、柔軟で多様な働き方や女性の活躍推進などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」が取りまとめられました。また、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針)」においても、働き方改革や女性の活躍推進に積極的に取り組むこととされています。

こうしたなか、県では、働き方改革の推進を県民運動として展開するため、本年6月、新たに、経済団体や労働団体等で構成する「とやま県民活躍・働き方改革推進会議」を設置し、働き方改革の推進に向けた取組みの検討を始めるとともに、本年7月には、企業経営者等のネットワーク「イクボス企業同盟とやま」を設立しました。

2 富山県の現状と課題


(1)人口減少について

本県の生産年齢人口(15〜64歳)は、2010年時点で665千人(本県人口の60.8%)ですが、2040年には435千人(同51.7%)になり、230千人減少すると予想されています。このままでは、将来、慢性的な人手不足に陥り、現在の生活水準や経済を維持することが困難となる恐れがあります。本県の経済を維持し、さらに発展させるためには、IоT等の活用による生産性の向上に加え、女性や高齢者の活用による労働力の確保が不可欠です。

そのためにも、従来のような男性中心型の労働慣行を見直し、柔軟で多様な働き方の促進や仕事と生活の両立支援を行うなど、女性や高齢者が働きやすい職場環境を整備していく必要があります。

本県の人口減少(少子高齢化)の状況

※図をクリックすると大きく表示されます

(2)女性の就業状況(M字カーブ)

女性の就業状況については、一般的に、多くの女性が就業継続の意思を持ちながら、仕事と子育ての両立の困難などの理由により、結婚・出産を機に仕事を辞めており、女性の労働力率を年齢階級別に見ると、30歳代を底としたいわゆるM字カーブを描いています。

本県の女性の労働力率は、全国平均を大きく上回っており、M字カーブの底は浅くなっていますが、H25年度に実施した富山県「子育てサービスに関する調査」によると、第1子出産を機に女性の常勤者の43.9%が離職しており、離職者の26.9%が就業の継続を希望しながらも、「仕事と育児の両立が難しいため離職した」と答えています。

こうしたことから、仕事と子育ての両立しやすい職場環境づくりを進めていくことが大変重要と言えます。

年齢階級別労働力率(全国・富山県)

(資料:総務省「平成27年国勢調査」)

出産後の就業継続の有無(富山県)
(3)男性の家事・育児の参加について

女性が仕事と家庭を両立しながら活躍するためには、男性の協力が必要不可決です。

しかし、家事・育児の約8割は依然として妻が主に担っており、男性の育児休業取得率や6歳未満の子どもを持つ夫の一日あたり家事・育児関連時間の水準は低いのが現状です。

国の調査では、夫の休日の家事・育児時間が長い夫婦ほど、第2子以降の生まれる割合が高いというデータもあり、男性の家事・育児の参加が重要であることがわかります。

家庭における役割分担(富山県)
 
家事 81.4% 1.7%
育児 77.9% 1.0%

(資料「H27富山県男女共同参画社会に関する意識調査」)



夫の休日の家事・育児時間と第2子以降の出生の状況

(出典 厚生労働省「第13回21世紀成年者縦断調査」(H26))

3 働き方改革に向けた取組み


こうした課題を踏まえ、県では、長時間労働の是正や柔軟な働き方など働き方改革の推進に向けた取組みを議論し、働き方改革を県民運動として展開していくため、本年6月、経済団体や国、市町村等で構成する「とやま県民活躍・働き方改革推進会議」を設置しました。また、7月には、この推進会議のもとに、「女性の活躍推進委員会」を設置し、女性の活躍推進に向けた仕事と家庭の両立支援やキャリアアップの推進等について検討を始めています。

また、企業経営者向けに「働き方改革推進セミナー」を開催し、生産性を向上させる働き方改革に成功した先進企業等の情報を共有していただくほか、企業の人事労務担当者向けには、「働き方改革推進実践講座」を開催し、専門家による実践講座を通じて、各企業に働き方改革を推進いただくよう働きかけることとしています。

仕事と子育ての両立支援の観点からは、県内企業を対象に企業子宝率(男女を問わず従業員が企業に在職中に持つと見込まれる子どもの数)の調査を実施し、企業子宝率が高く、仕事と子育てを両立できる職場づくりに成果を上げている企業を表彰したほか、子育て支援・少子化対策条例により、従業員の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」の策定を義務付ける企業の範囲を法律より大幅に拡大するなど、各企業の両立支援の取組みが進むように支援しています。

次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定状況

4 イクボスのすすめ


男女がともに仕事と家庭を両立しやすい職場環境づくりを推進するには、各企業が積極的に働き方改革に取り組んでいただくことが大変重要ですが、そのためには、働き方を企業戦略として強力に進めるという企業経営者等の意識改革が必要です。

県では、これまで、県内の企業経営者等の皆さんに「イクボス」となっていただくよう呼びかけてきました。

「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことです。企業のトップが「イクボス」になるよう努め、部下の仕事と家庭の両立を応援するための自らの取組みを宣言する「イクボス宣言」を実施することによって、企業における働き方改革の推進が期待されます。

本県では、平成27年11月に、石井知事が県内初となるイクボス宣言を行いましたが、その後、これまでに、多くの企業・団体のトップの方がイクボス宣言を実施されてきました。

5 「イクボス企業同盟とやま」の設立


前述のように、企業における働き方改革が喫緊の課題となっていることから、今年度、イクボス宣言した企業の連携を強化するとともに、働き方改革の取組みを県民運動として展開していくため、「イクボス企業同盟とやま」を設立することとしました。

そして7月25日、県の経済団体・企業・自治体の代表の方々を発起人とし、約80名のイクボスの参加のもと、同盟設立式を開催しました。

設立式では、同盟設立発起人による共同設立宣言が行われたほか、コクヨ株式会社の黒田代表取締役会長が「働き方改革〜イクボスの育つ環境」と題して講演されました。イクボス育成の鍵は「経営者の覚悟と信念」にかかっていること、働き方改革やイクボスの取組みが企業を成長させることなどについてお話しいただき、同盟に加盟した県内企業経営者の皆様からも共感の声が寄せられました。

平成29年8月現在、97の企業・団体と6の自治体、計103団体が同盟に加盟しています。

「イクボス企業同盟とやま」設立発起人の皆様

※図をクリックすると大きく表示されます

「イクボス企業同盟とやま」設立共同宣言

※図をクリックすると大きく表示されます

「イクボス企業同盟とやま」設立式の様子
(平成29年7月25日県民共生センター「サンフォルテ」)

県のホームページで、同盟加盟企業を紹介しています。各団体のイクボス宣言もご覧いただくことができます。

http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1017/kj00017992.html


今後は、加盟企業等を対象とした連携会議を開催し、各社の取組みについての事例発表や情報交換のほか、情報誌等の発行により先進的な取組み等の情報を提供するなど、加盟企業間のネットワーク形成を支援することとしています。

この同盟の設立を機に、企業等の枠を超えた「イクボスの輪」をさらに広げるとともに、働き方改革の取組みを県民運動として展開していきたいと考えています。

6 おわりに


今回は、「イクボス企業同盟とやま」の設立についてご紹介しましたが、県では、このほかにも、働き方改革を推進するために様々な取組みを実施しています。

例えば、女性の活躍推進の取組みとして、女性の登用や能力開発に積極的で、女性が職場でいきいきと活躍している企業に県知事賞を授与する「女性が輝く元気企業とやま賞」や、リーダーをめざす女性社員の相互交流と自己研鑽を図り、業種・職種の枠を超えたネットワークを構築する「煌めく女性リーダー塾」、結婚・出産を機に離職した女性への再就職支援を行う「女性の再就職パワーアップ応援事業」等の事業を実施しています。

本日ご紹介した取組みを通じて、すべての県民が活躍できる職場環境づくりの実現にむけて、今後も官民連携で取り組んでまいります。


各事業の詳細については、県少子化対策・県民活躍課のホームページで紹介しています。

http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1017/index.html

とやま経済月報
平成29年9月号