特集

黒部市の観光施策について

黒部市 産業経済部 商工観光課

 

1 はじめに


黒部市は、神秘の海富山湾から標高2,903mの白馬鑓ヶ岳まで、面積427.96km2、人口41,850人(平成29年8月1日現在)、日本の秘境として知られる黒部峡谷とその雄大な自然を望む湯の街宇奈月温泉、そして「名水の里黒部」として黒部川の偉大なる恩恵に育まれた、国内外に誇れる自然環境と観光資源を有する都市です。

黒部峡谷は、北アルプス中央部の鷲羽岳に源を発し、長さ86km、標高差3,000mを流れ下る黒部川の上・中流域に、切り立った深いV字峡を形成する大峡谷です。そこに電源開発のための工事用資材の運搬に敷設されたのがトロッコ電車の愛称で親しまれている黒部峡谷鉄道で、年間約35万人の観光客が訪れます。

また、黒部峡谷鉄道の入口には富山県を代表する温泉地「宇奈月温泉」があります。その源泉は約7km上流の黒薙(くろなぎ)温泉で、泉温は98.3度と高く、1日3,000トンの湯量は、北陸随一を誇ります。また泉質は弱アルカリ性単純泉、透明度は日本有数で "美肌の湯"として知られています。

さらに、下流域は、愛本橋を扇頂に富山湾まで13.5km、扇頂角60度の典型的な臨海扇状地です。扇状地の扇端に位置する生地(いくじ)地区には、環境省が選定した全国名水百選(昭和60年選定)に選ばれている黒部川扇状地湧水群があり、この湧水は「清水(しょうず)」と呼ばれ地域住民が管理する共同洗い場が点在し、住民のコミュニケーションの場としてなくてはならないものとなっています。

この豊富に恵まれた水が、農業、工業、特産品などのものづくりに利用されるとともに、地域住民や観光客に潤いを与えてくれます。

また、平成26年に富山湾から立山連峰まで、高低差4,000mをフィールドとする立山黒部地域が日本ジオパークの認定を受けています。

2 北陸新幹線開業による変化


平成27年3月14日の北陸新幹線の開業により、黒部宇奈月温泉駅は北陸の玄関口としての役割を期待されるとともに、新幹線の持つ「高速・定時・大量」といった旅客力が発揮され、時間距離の大幅な短縮により、黒部市と首都圏の交流が拡大しました。

JR西日本の発表によると、平成28年度の1日平均乗車人数は金沢駅で22,668人(平成27年度比331人減)と最も多く、富山駅で7,843人(同58人減)、新高岡駅で1,988人(同59人増)、黒部宇奈月温泉駅は898人(同69人減)となっています。

また、企業の地方拠点強化の動きとしては、YKKグループの本社機能一部移転やR&Dセンターの開設などがあり、黒部市における企業活動や機能の強化を図るとともに、パッシブタウンの整備など企業が進めるまちづくりとして注目されています。

3 黒部市の観光の現状


黒部市の観光客入込数(主要4施設合計)の年次推移は、平成21(2009)年以降減少傾向にありましたが、平成27(2015)年は前年比18.5%の増加となっています。

※図1 黒部市観光客入込数の推移(主要4施設合計)

注.対象にしている主要4施設は次のとおりです。
   宇奈月温泉(入湯客数)、黒部峡谷、魚の駅「生地」、宇奈月麦酒館

宇奈月温泉の宿泊者数の年次推移は減少傾向にありましたが、平成27年は前年と比較すると29.2%の増加となりました。

同様に、黒部峡谷鉄道の乗客数についても平成27年は19.1%の増加となりました。

訪日観光客については、宇奈月温泉宿泊者数・黒部峡谷鉄道乗客数ともに増加傾向にあり、訪日観光客が占める割合も増加傾向にあります。

※図2 宇奈月温泉宿泊者数・黒部峡谷鉄道乗客数の年次推移

4 黒部市の取り組む観光


(1)生地まち歩き

黒部川扇状地湧水群のある生地地区では、湧水のことを「清水(しょうず)」と呼び、日々の暮らしの中で大切に利用されています。生地には約20ヶ所の清水があり、飲み比べるとそれぞれに味わいが違うと言われます。ありのままの自然と暮らし、そこで生まれたものづくりの文化を訪ねるまち歩きを導いてくれるのは、地元のことを知りつくしたまち歩きガイドです。平成13年に発足し、これまでの15年間で約8万人のお客様をご案内しています。

また、清水めぐりと昼食をセットにした商品の販売も始め、これまでなかった漁師町の寿司ランチおよび北陸新幹線「黒部宇奈月温泉駅」からの循環バス1日乗り放題チケット付きのコースも実施しています。


(2)黒部峡谷パノラマ展望ツアー

黒部峡谷鉄道トロッコ電車終点「欅平駅」の先にある、一般のお客様は立ち入ることのできない関西電力施設内の「専用列車」・「トンネル」・「竪坑エレベーター(高低差200m)」の体験と、周辺の白馬鑓ヶ岳、唐松岳などの北アルプスの山々が間近に展望できるルートを散策する特別なツアーです。平成27年からスタートし、今年で3年目となります。このツアーは、黒部峡谷欅平周辺の魅力アップを図るため、富山県、黒部市、関西電力、黒部峡谷鉄道、(一社)黒部・宇奈月温泉観光局が連携協力し商品化しました。今年は6月2日〜11月13日までの金・土・日・月曜日に開催しております。


(3)宇奈月温泉総湯 湯めどころ宇奈月

平成28年4月に宇奈月温泉街の新たなシンボルとして日帰りの共同浴場 宇奈月温泉総湯「湯めどころ宇奈月」がオープンしました。北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅や富山地方鉄道宇奈月温泉駅からのアクセスも良く、宇奈月温泉にお越しいただいた方々が気軽に温泉を楽しみ、くつろげる温泉利用多目的施設です。また、宇奈月温泉や、黒部峡谷の自然の素晴らしさを身近に来訪者に伝えるための観光案内所があり、北陸新幹線開業後の黒部市の更なる観光誘客を図る上でも大変重要な施設として、オープンから1年で65,000人の入浴者を迎えています。

5 終わりに


平成29年3月には新たに黒部市観光振興計画を策定しました。新しい計画では、「大自然とその四季の魅力を活かし、世界に誇れる観光交流のまち 黒部」を将来像とし、「連携による観光の通年化」、「外国人観光客の受入環境の整備と誘客促進」、ブランド化に向けた「戦略的なPR」の3つを重点プロジェクトとして掲げ、オール黒部で観光の振興を進めていきます。



お問い合わせ先
 黒部市 産業経済部 商工観光課
 〒938-8555 黒部市三日市1301番地
 TEL: 0765-54-2611
とやま経済月報
平成29年10月号