特集

ミラノ・トリエンナーレの出展、伝統工芸技術の継承について

富山県 商工労働部 経営支援課

 

はじめに


本県には、高岡銅器、井波彫刻、高岡漆器、庄川挽物木地、越中和紙の5つの国指定伝統的工芸品のほか、越中瀬戸焼、越中福岡の菅笠、高岡鉄器、高岡仏壇、とやま土人形、富山木象嵌の6つの県指定伝統工芸品があります。

こうした優れた伝統工芸品は、長い歴史と伝統を有し、高度な技術・技法が受け継がれている本県の貴重な財産ですが、近年の生活様式の変化等に伴い全国的に売り上げが低迷しており、本県においても伝統的工芸品の生産額は、平成2年度の約430億円から平成27年度は約130億円と、ピーク時の約3分の1に減少しています。

また、従事者数についても、平成2年度の約4,500人から平成27年度は約1,700人と大幅に減少しているほか、従事者の年齢についても50歳以上が約6割を占めるなど、担い手不足が懸念されています。

このため、県では、伝統工芸品産業の振興を図るため、商品開発や販路開拓による需要拡大、伝統工芸技術の継承や人材育成など、様々な施策による支援を行っています。

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今回は、その中から、海外販路開拓の支援として、とやま伝統工芸ミラノ・トリエンナーレ国際展出展事業と、伝統工芸技術の継承として、伝統工芸「匠の技術」継承支援事業について紹介いたします。

1 とやま伝統工芸ミラノ・トリエンナーレ国際展出展事業


ミラノ・トリエンナーレは、デザイン、ファッション、建築などを題材として、1923年からイタリアのミラノ市で開催されている国際展です。21回目となる今回は、「Design After Design」をテーマとし、平成28年4月2日から平成28年9月12日にかけて、メイン会場であるトリエンナーレ美術館を含む19会場で開催されました。

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富山県では、平成27年度にミラノ国際博覧会日本館における「富山県の日」(8月1日、2日)に合わせてトリエンナーレ美術館で富山県伝統工芸品展示会を開催したところ、同美術館のカンチェラート館長から高い評価をいただき、本国際展への出展について提案を受けたことから、本国際展に出展することとなりました。

自治体単位でミラノ・トリエンナーレに出展するのは富山県が初めてであり、メイン会場であるトリエンナーレ美術館での展示は、日本からは唯一選ばれました。

県の展示エリアでは、「音の波紋」や「共振」をテーマとし、高岡銅器のおりんや風鈴をはじめ、高岡漆器、井波彫刻、庄川挽物木地、越中和紙、とやま土人形など79品を展示しました。来場者に高岡銅器の音色を体感してもらうため、たくさんの風鈴を天井から吊るしたほか、おりんの楽器も用意しました。

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特に、家具を中心とした国際見本市「ミラノ・サローネ」が開かれた4月12日〜27日は多くの人が訪れました。来場者は、ミラノで活躍するデザイナーが多く、学生やバイヤーなども見られました。中には、世界的な建築家でデザイナーのマリオ・ベリーニ氏も訪れ、おりんに興味を示されていました。

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会期中の来場者は約48万人で、県が実施した来場者へのアンケートでは、「風鈴やおりんの音色が美しい」、「デザインが美しく、洗練されている」、「伝統的であるが革新的でもある」といった高い評価をいただきました。

また、展示会の期間中に合わせて富山県の伝統的工芸品を取り扱う5社が現地に赴いて、商談会を開催し、高岡漆器の技を活かして螺鈿細工を施したグラスや越中和紙を使ったペン立てなどを現地のバイヤー3社と報道機関にアピールしたほか、おりんの楽器を使用した演奏会も行われていました。

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2 伝統工芸「匠の技術」継承支援事業


本県の伝統工芸品は、高い技術を有するものの、生活様式の変化等により生産額、従事者数が大きく減少していることから、担い手が不足し、その高度な技術・技法の継承ができなくなることが懸念されています。

こうしたことから、県では、平成28年1月に新たに「伝統工芸担い手育成等検討会」を設置し、伝統工芸品産業の担い手の育成策や今後の施策の方向性について検討いただきました。その報告も踏まえ、平成28年度から、各産地で高い技術や希少な技法を持つ職人を「伝統工芸の匠」に認定し、その技術の継承に対して支援する「伝統工芸『匠の技術』継承支援事業」を実施することといたしました。本事業では、「伝統工芸の匠」が継承者に対して技術を継承する研修を行い、その講師料や材料費を支援することを内容としております。

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平成28年7月11日に、伝統工芸の高度な技術や希少な技法を有する職人7人に対して、石井知事から「伝統工芸の匠」の認定書の交付が行われました。匠の認定を受けたのは、高岡銅器の内免(ないめん)悌次朗(ていじろう)さん、和田(わだ)順吉(じゅんきち)さん、松岡(まつおか)靖裕(のぶひろ)さん、井波彫刻の溪(たに) 齊(ひとし)さん、高岡漆器の藤田(ふじた)正作(しょうさく)さん、内島(うちじま)昭夫(あきお)さん、越中福岡の菅笠の中嶋(なかしま)尋之(ひろゆき)さんの7人です。候補者は、各産地組合から推薦を受け、学識経験者などでつくる検討会で決定しました。

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伝統工芸の匠は、一定の技術を有する継承者13人に対し、7月から少人数指導で研修を行っています。

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おわりに


県では、このほかにも、平成28年6月にオープンした日本橋とやま館における伝統工芸品のPRイベントの開催のほか、インターンシップや雇用型訓練の実施による伝統工芸人材の確保育成事業など、様々な取組みを行っております。今後とも、本県伝統工芸品産業の振興を図るため、積極的な支援を行ってまいります。

とやま経済月報
平成29年1月号