特集

個人企業経済調査からみる個人企業の状況について

統計調査課 経済動態係

 

1 個人企業経済調査とは


個人企業経済調査は、個人で「製造業」、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」または「サービス業」を営む事業所の経営実態を明らかにするため、総務省が都道府県を通じて実施している統計調査です。特に重要な統計調査として統計法に基づく基幹統計調査に位置づけられており、調査結果は、景気動向の把握、中小企業振興のための基礎資料や国民経済計算(GDP)の推計資料などに幅広く利用されています。

2 個人企業経済調査の概要


(1)調査地域
全国で190市区町村
(富山県では2市)
(2)調査対象
個人で上記産業を営む事業所のうち約4,000事業所(抽出調査)
(富山県では約40事業所)
(3)調査事項
動向調査
事業主による業況判断、従業者、営業収支に関する事項など
構造調査
事業主、従業者、営業収支、経営形態・方針、事業経営上の問題点、営業上の資産及び負債に関する事項など
(4)調査時期
動向調査…4半期ごと
構造調査…毎年12月末日現在

3 個人企業経済調査の結果について


調査結果は、動向編(4半期ごと)と構造編(年に1回)に分けて公表されています。本稿では、平成28年の構造編の結果から、北陸地域(新潟県、富山県、石川県、福井県)の個人企業の状況についてご紹介します。


(1)富山県の個人企業の事業所数及び従業者数

まず、富山県に個人企業がどのくらいあるのか「平成28年経済センサス−活動調査」の速報結果からご紹介します。

富山県では、51,495事業所(農林漁業及び公務を除く)のうち、個人企業は21,393事業所と、全体の41.5%を占めています。

また、個人企業の従業者数は60,940人と、従業者総数(農林漁業及び公務を除く)504,875人の12.1%を占めており、約10人に1人が個人企業で働いています。(図1、図2)

※図をクリックすると大きく表示されます

このように、県内事業所の約4割を占める個人企業について、個人企業経済調査の結果(地域別)に基づき、事業主の年齢、事業の開始時期、1事業所当たりの売上高及び営業利益率に着目し、ご紹介していきます。


(2)北陸地域の産業大分類別事業主の年齢構成

北陸地域において、「事業主の年齢が60歳以上」の事業所の割合は、「製造業」が83.8%と最も高く、次いで「卸売業、小売業」が80.4%、「宿泊業、飲食サービス業」が74.5%となっています。

一方、「サービス業(※1)」では「事業主の年齢が60歳未満」が33.3%と、他の産業に比べて高くなっています。(図3)(※2)

※1 「サービス業」に含まれる主な産業は、普通洗濯業、理美容業、自動車整備業

※2 数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の計は必ずしも一致しない。(図2〜図8)


産業大分類別に事業主の年齢階級別構成割合の推移をみると、「製造業」では平成28年の「70〜79歳」の事業主の割合が41.9%と突出して高く、平成18年の2倍以上となっています。また、平成18年は「50〜79歳」の事業主が全体の約8割を占めていましたが、平成28年は「60〜79」歳の事業主が全体の約8割を占める結果となり、高齢の事業主が増加傾向にあることがわかります。(図4)

「卸売業、小売業」では「60〜79歳」の事業主の割合が全体の約5〜7割で推移しています。また、近年は「80歳以上」の事業主の割合が上昇傾向にあり、平成28年は19.7%と、10年前と比べて6.7ポイント高く、他の産業に比べて10ポイント以上高い割合となっています。(図5)

「宿泊業、飲食サービス業」では「60〜69歳」の事業主の割合が一番高く、10年前は全体の約3割を占めていましたが、近年は全体の約5割を占めています。

一方、10年前は27.7%であった「50歳未満」の事業主の割合は低下傾向にあり、平成28年は6.4%となりました。(図6)

「サービス業」では「70〜79歳」の事業主の割合が一番高く、平成28年は10年前と比較すると、24.6ポイント高い38.3%となっています。また、他の産業に比べて「50歳未満」の事業主の占める割合が比較的高くなっています。(図7)

(3)事業の開始時期

事業を開始した時期は、「昭和59年以前」が「製造業」が83.8%、次いで「卸売業、小売業」が67.8%、「サービス業」が65.5%と、30年以上事業を続けている事業所が多いことがわかります。特に、「卸売業、小売業」では「昭和29年以前」が32.3%を占めており、60年以上事業を続けている事業所が多数存在しています。

一方、「宿泊業、飲食サービス業」では「昭和59年以前」と「昭和60年以降」が約5割ずつとなっており、特に「昭和39年以前」が6.4%と、他の産業に比べて低い割合となっていることから、比較的新規の事業所が多いことがわかります。(図8)

(4)売上高及び営業利益率

産業大分類別に1事業所当たりの売上高の推移をみると、全ての産業で減少傾向にあります。特に「卸売業、小売業」では、平成28年の1事業所当たりの売上高は12,631千円で、平成18年の約6割の売上高(△40.8%)となり、過去10年間で最小の金額となりました。また、「卸売業、小売業」とその他3つの産業大分類にあった売上高の差は、10年間で縮小してきていることがわかります。(図9)

1事業所当たりの営業利益率(※3)は、「製造業」では、リーマンショック直後の平成21年及び23年に大きく低下したものの、近年は上昇傾向にあり、平成28年の営業利益率は過去10年で最も高い35.9%となりました。1事業所当たりの営業利益額では、平成27年の3,178千円が過去10年で最も高い金額となりましたが、平成28年も2,862千円と、比較的高い金額で推移しています。

一方、「製造業」を除く3つの産業大分類では、平成18年と比べて平成28年の営業利益額はいずれも減少しており、調査年によりバラつきがありますが、減少傾向にあります。特に「卸売業、小売業」の平成28年の1事業所当たりの営業利益額は1,562千円と、10年前の3,180千円に比べ半減(△50.8%)しています。(表1、図10)

表1 1事業所当たり営業利益の推移(北陸)

※表をクリックすると大きく表示されます

※3営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合

4 おわりに


今回は個人企業経済調査の結果から北陸地域の個人企業の事業主の年齢、事業を開始した時期、売上高及び営業利益率についてご紹介しましたが、総務省統計局のホームページでは全国、地方別(8ブロック)に、営業上の資産・負債、事業経営上の問題点なども掲載されています。

総務省統計局ホームページ 「個人企業経済調査」
http://www.stat.go.jp/data/kojinke/index.htm

また、個人経営の事業所の皆様におかれましては、統計調査員が伺いましたら、調査にご協力いただきますようお願いいたします。

とやま経済月報
平成29年12月号