特集

小矢部市の商業まちづくり
〜アウトレットモール進出効果を中心として〜

小矢部市企画政策部 アウトレット・商工立地課

はじめに


小矢部市は、平成26年4月のアウトレットモール進出合意を受けて、大型商業施設の集客力を本市の活性化に生かすため「小矢部市商業まちづくりプラン」を策定し、商業の振興と賑わいの創出に取り組んでいる。本プランに掲げる「商業まちづくり」では、アウトレットモール来訪者の1%をまちなかの商店街や市内の観光施設に誘客することにより、市内消費を拡大し商業の振興を図ることとしている。

北陸初となるアウトレットモールが開業して1年が経過したことから、本稿では、本市への波及効果を中心として商業まちづくりの現状等について紹介する。

1 小矢部市への波及効果


小矢部市では、アウトレットモール進出により期待される効果を「一石数鳥の効果」と説明してきた。「小矢部市商業まちづくりプラン」では、本市への波及効果として①商業の振興、②交流人口の増、③知名度の向上、④雇用の創出、⑤税収の増を掲げている。

現時点において数値として把握できる主な波及効果は表1のとおりである。市内誘客の増、空き店舗の解消、社会動態人口の増、住みよさランキングの躍進、市税収入の増など多方面にわたり想定を超える波及効果があった。

表1 小矢部市への主な波及効果
表

※1 出所:小矢部市調べ
※2 出所:小矢部市「平成27年度版小矢部市統計書」
   開業後の数値は平成27年実績であり、開業前の数値は平成26年実績である。
※3 出所:東洋経済新報社「都市データパック2016年版」
※4 出所:小矢部市「平成28年度小矢部市予算書」

(1) 商業の振興

小矢部市内では、アウトレットモール進出を商機と捉えた飲食店等の開業が増えている。昨年度、空き店舗等への新規出店者に対し補助金を交付した件数は11件であり、そのうち9件が飲食店であった。

また、市と商工会は、市内商店を周遊し買い物を楽しんでもらうため「おやべ周遊クーポン事業」を実施している。アウトレットモール内に開設した富山観光案内所等で市内商店を紹介したクーポン付き冊子を配布し、アウトレットモール来訪者の市内周遊と市内消費を促している。

この事業への参加店舗にアンケートを実施した結果、約3割の店舗が「来店客が増えた」と回答している。飲食店や宿泊施設などでアウトレットモールの従業員を中心に来店客が増えたとのことであった。この結果からもアウトレットモール進出は市内商業の振興に一定の効果があったことがわかる。

(2) 交流人口の増

小矢部市の観光施設において観光客入込数が増えたことも効果の一つである(表2参照)。

本市では、まちなか商店街でのイベントや市の観光施設への誘客数を集計した結果、開業後と開業前を比較して約10万人増加した。この増加数はアウトレットモール来訪者当初年間見込数350万人の約3%にあたり、アウトレットモール開業を契機として本市の交流人口は大きく増加した。ただし、まちなか商店街に限ると誘客数の増加数は0.5%であり、まちなか商店街の賑わい創出は目標半ばである。

一方、市の取り組みに賛同する市民団体が朝市や歩行者天国イベントを開催するなど、商店街の活性化を目的とする市民活動が萌芽したこともアウトレットモール進出の効果といえる。本市としては、まちなか商店街への誘客について、こうした市民活動とも協力し取り組んでいきたいと考えている。

表2 小矢部市の主な観光施設の観光客入込数
表

出所:小矢部市調べ

(3) 知名度の向上

平成27年1月、開発事業者は施設の正式名称を「三井アウトレットパーク北陸小矢部」に決定したと発表した。その後、北陸全域にわたりテレビCMでアウトレットモールの宣伝が行われ、繰り返し「小矢部(おやべ)」の名称がアナウンスされたことにより本市の知名度は飛躍的に向上したと実感している。

また、新聞等においてもアウトレットモールに関する記事が何度も掲載された。「住みよさランキング」における小矢部市の躍進がアウトレットモール進出効果として新聞に取り上げられたほか、アウトレットモールが進出した小矢部市を紹介する記事がタウン情報誌等にも取り上げられた。

これらの効果を数値として測ることはできないが、波及効果の大きさを最も実感したのが知名度の向上である。

(4) 雇用の創出

昨年、小矢部市ではアウトレットモールで働く従業員にアンケートを実施した。その結果によるとアンケート回答者の約12%が市内居住者であった。この結果からアウトレットモール進出が地元雇用の創出につながっていることを伺い知ることができる。

本市の有効求人倍率(就業地別)は平成27年3月から2倍を超え、その後も2倍以上で推移し、平成28年6月現在も2.43倍と高止まりしており、雇用機会は拡大している。

本市では、アウトレットモール周辺の国道8号沿線に商業施設の集積が進んでいることから、市民の雇用機会が更に拡大することを期待している。

図1 小矢部市と富山県の有効求人倍率の推移
図

出所:小矢部市の有効求人倍率は、砺波公共職業安定所小矢部出張所より
   富山県の有効求人倍率は、富山県労働局「富山県の雇用失業情勢」

(5) 市税収入

平成28年度小矢部市予算において、市税収入は約4,450百万円(対前年度比6.7%増)を見込む。アウトレットモールやその周辺に立地した商業施設などの固定資産税の増を見込んでいる。

2 まちなか商店街への誘客に向けた取り組み


(1) 小矢部市による石動駅周辺整備事業

先に述べたが、まちなか商店街へのアウトレットモール来訪者の誘客については目標半ばである。本市では、まちなか商店街の賑わい創出に向けてソフト事業とハード整備を一体的に進めている。

本年度から本格的に着手した石動駅周辺整備事業では、石動駅舎と市民図書館の合築、南北自由通路及び駅南駐車場の整備を進めている。これらの整備が完了すれば、石動駅周辺に市民図書館の利用者約7万人の来訪をはじめとする新たな来訪者が見込まれる。また、石動駅の駅南広場と駅北広場を南北自由通路で連結することにより、一層、石動駅利用者の利便性が高まることになる。

本市では、石動駅周辺の都市機能を向上させることにより、石動駅前に位置するまちなか商店街の賑わい創出につなげたいと考えている。

図2 石動駅周辺の開発に関する概要図

※図をクリックすると大きく表示されます

図

出所:小矢部市作成

(2) 商工会による駅前ビル改修事業

商工会では、まちなか商店街へのアウトレットモール来訪者の誘客について市と歩調を合わせ、商店街における賑わい創出の拠点づくりに取り組んでいる。石動駅前の空きビルを改修し、買い物客や地域住民が集う商業スペースやコミュニティスペースを整備し、駅から商店街への導線をつくる計画である。

現在、商店主、地域住民、学識経験者らで構成する「おやべ地域・まちづくり活性化検討委員会」において、商店街への誘客に役立つ施設とするため駅前ビルの具体的な活用方法が検討されている。

3 今後の課題(アウトレットモール効果の持続)


これまで述べてきたように、アウトレットモール進出による小矢部市への波及効果は多方面にわたるが、効果の持続に向けて課題も見えてきた。

本市の平成27年新設住宅着工戸数は76戸であり対前年比約45%の減であった。県内10市のなかで小矢部市だけが対前年比がマイナスであった。この結果は開業前に新設住宅着工戸数が増えた反動とみることもできるが、アウトレットモール効果を持続させ定住人口の増加につなげたい本市としては見過ごせない数値である。

平成27年にプラスに転じた社会動態人口は、本年に入りその勢いに陰りが見える。本市では、定住人口を増やす施策としてアパートや住宅団地の整備などを民間事業者に更に働きかけることが必要といえる。

表3 県内10市の新設住宅着工戸数
図

出所:県建築住宅課ホームページを参照し小矢部市が作成

おわりに


アウトレットモールが開業し1年が経過した現時点において、小矢部市が取り組む商業まちづくりについて総括すると、正しく一石数鳥の波及効果がみられ、本市の商業は確実に活力を取り戻しつつある。本市では、今後、この効果を点から線、線から面へと市内全体に波及させたいと考えている。大型商業施設の集客力を生かし市内商業の振興とまちなか商店街の賑わい創出を目指す小矢部市の挑戦は続く。

とやま経済月報
平成28年10月号