特集

地方拠点強化税制と企業誘致活動について

富山県 商工労働部 立地通商課

 

1 はじめに


企業誘致は、雇用の創出や税収などの増加をもたらすだけでなく、優秀な人材の集積や、周辺企業との取引拡大などを通じて、本県の産業や経済に大きな効果をもたらします。

富山県においては、雇用の受け皿として、ものづくり産業が大きな位置を占めておりますが、人口減少等により地域の将来が懸念されるなか、地域の活力を維持・向上させていくためには、女性や若者がその能力を発揮して活躍できる社会の創造は不可欠であり、これらの人材を呼び込む、より多様な企業の誘致が一層重要になっています。

このことから、本県では、制度設計段階から関わった「地方拠点強化税制」を活用した新たな誘致計画を策定し、本社又は本社機能の一部の誘致を積極的に進めています。

今回は、その誘致計画である本県の地域再生計画(名称「『とやま未来創生』企業の地方移転・拠点強化促進計画」)の概要についてご説明するとともに、本県の充実した企業立地助成制度についてご説明いたします。

2 本県の地域再生計画の概要


少子高齢化や人口減少が進行するなかで、日本の再生・再興に向けて地方創生を推進していくには、とりわけ東京圏から地方への人の流れを作ることが重要であり、本社機能の移転や研究開発拠点の拡充などにより、魅力のある企業が地方に増えていくことが必要です。

このため、本県では全国知事会と連携して、東京圏から地方への本社機能の移転や研究開発拠点の立地等を促し、地域経済の発展が期待できる国税・地方税の軽減制度の創設について、国に強く要望してまいりました。

その結果、平成27年度の税制改正で、本社機能等を移転・拡充した企業を法人税等の税制面で支援する「地方拠点強化税制」が創設されることとなりました。その後、平成27年6月に「地域再生法」の一部改正法が施行され、平成27年8月には「地方拠点強化税制」の関連法案が施行されました。

本県では、この「地方拠点強化税制」を活用し、新たな企業誘致を行うため、早速、本県独自の地域再生計画(名称「『とやま未来創生』企業の地方移転・拠点強化促進計画」)を作成し、内閣府に認定申請を行ったところ、平成27年10月に全国第1号の認定を受けることとなりました。

この認定によって、東京23区内から富山県内に本社機能を移転する企業(移転型)や、富山県内において本社機能や研究開発拠点を強化・拡充する企業(拡充型)は、知事の認定を受けた場合、オフィス減税、雇用促進税制の特例措置や地方税の不均一課税等の優遇措置を受けることができることになりました。


本県が策定した地域再生計画の概要は、次のとおりです。
(1)名  称 「とやま未来創生」企業の地方移転・拠点強化促進計画
(2)計画区域 県内全15市町村
(3)計画期間 平成27年10月2日〜平成32年3月31日まで
(4)計画目標(平成31年度末まで)
①雇用創出 500人
②東京23区内からの企業の新規立地 7件
③県内企業の拠点拡充及び東京23区以外からの企業の新規立地 20件

なお、知事の認定を受けた企業が適用を受ける税制上の優遇措置は、次のとおりです。

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この地域再生計画を策定後、現在までに、移転型(1社1計画)と拡充型(7社7計画)を合わせて、7社8計画が知事の認定を受けたところであり、今後も認定企業の増加(=企業立地の増加)に向けて制度の周知を行っていく予定です。

3 優れた立地環境と充実した企業立地助成制度


本県は、企業立地に非常に適した環境です。南側に3,000m級の立山連峰がそびえ、極めて台風の影響を受けにくいばかりでなく、地震の発生率も非常に低く、文献で確認できる1300年あまりの間、1mを超える津波はわずか1件にとどまるなど、安全、安心な地域です。

さらに、美しく豊かな自然、勤勉で粘り強く進取の気性に富む県民性、ものづくりの伝統、良質で豊富な水や廉価な電力、日本海側屈指の工業集積など、国内外に誇りうる優れた基盤が数多くあります。

また、交通インフラについては、北陸自動車道、東海北陸自動車道、日本海側の総合的拠点港である伏木富山港や、4つの国際定期便路線を有する富山きときと空港などに加え、昨年3月に北陸新幹線が開業し、東京−富山間が最短2時間8分で結ばれ、輸送能力も従来の3倍に増加するなど、陸海空のインフラ整備が大きく進んでいます。

このような優れた立地環境とともに、本県では、上記の「地方拠点強化税制」を活用した誘致活動の他に、次のような充実した助成制度を策定しており、様々な企業の立地促進を図っているところです。

※図をクリックすると大きく表示されます

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また、こうした助成制度や税制の支援措置を周知するため、今年度は、次の取組みにより企業立地の促進を図っています。

(1)とやま企業立地セミナーの開催

東京、大阪、名古屋において優れた企業の経営者や役員等を一堂に集め、我が国を代表する企業の経営者等による講演会や、知事から本県の優れた立地環境や助成制度等をアピールする「とやま企業立地セミナー」を毎年開催しています。

今年度も、3会場で約500人の参加を見込んでおり、引き続き関係企業との有益な情報交換を行う予定です。

(2)ビッグデータを活用した企業誘致

近年、県外企業のうち、県内企業に中間製品を販売している企業や、県内企業から中間製品を仕入れている企業の本県進出の事例が見られることから、今年度は、ビッグデータを活用して県内企業と関わりの深い企業をリストアップし、ターゲットを絞って積極的かつ重点的な企業訪問活動を実施することとしています。

4 おわりに


今後とも本県への企業立地が促進されるよう、本県の優れた立地環境や新幹線開業等をアピールし、助成制度や税制の支援措置等も十分活用しながら、富山県の産業が持続的に発展し安定的な雇用を生み出せるよう、産業の活性化や成長力のある企業の誘致に積極的かつ戦略的に取り組んでまいります。

とやま経済月報
平成28年6月号
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