特集

新幹線開業という契機を活かした企業誘致と今後の取り組み

射水市 産業経済部 商工企業立地課
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射水市は、平成17年11月1日、いわゆる「平成の大合併」により、新湊市、小杉町、大門町、大島町、下村の5市町村が合併して誕生し、今年で合併10周年を迎えます。

今年度は、射水市にとって記念となるビッグイベント等も多くあり、まさしく市制10年目の年を飾るにふさわしいメモリアルイヤーとなることから、射水市の魅力を皆様方に体感いただけるよう、万全の体制で皆様のお越しをお待ちしています。

1 本市を取り巻く環境


射水市は、日本海へとつながる富山湾沿岸の中央部に位置し、109.43km2、半径約7kmというコンパクトな市域に、海、川、野、里山などの自然環境と、国際貿易港、高速道路、鉄道といった物流の拠点となる社会資本を有するほか、住まい、福祉、教育環境が充実した住みやすいまちとなっています。

一方で、広域的な交通環境の変化として、平成20年7月に東海北陸自動車道の全線開通、平成27年2月の能越自動車道、七尾氷見道路の全線開通、同年3月の北陸新幹線の開業等、交通体系を大きく変え得る急激な進展が続き、人・モノ・情報の流れも大きな変節点を迎えています。

これらの地理的特性や交通環境の大幅な改善といった状況がある中、前述の特性等の利点をさらに向上させる、相乗効果が期待できる企業の誘致を推進しています。今年3月の北陸新幹線開業に際しては、助成制度の拡張や企業訪問によるPRを行い、これまで以上に積極的な企業誘致に取り組んできました。こういった近年の企業誘致活動の大きな成果として、今年度に操業を開始した株式会社プレステージ・インターナショナルと、コストコホールセールジャパン株式会社の2件の立地が挙げられます。

2 近年の成果


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株式会社プレステージ・インターナショナルは、操業当初から「エンド・ユーザー(消費者)の不便さや困ったことに耳を傾け、解決に導く」という経営理念を掲げ、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を、日本を含む世界各国で展開しており、平成24年12月に東証二部上場、平成25年12月東証一部指定、と成長目覚ましい企業です。日本国内におけるBPOの拠点として、秋田・山形・富山にそれぞれ1拠点の計3拠点を構築しており、その中で最新の拠点が「富山BPOタウン」であり、旧JET駐車場跡地において、平成27年4月から操業を開始しています。同社は、東日本大震災後、BCP(ビー・シー・ピー/事業継続計画)対策の観点から秋田・山形・東京から離れた場所に新たな拠点とする適地を探しており、平成23年度から県と市が協力して誘致活動を行ってきました。同社は他県の候補地とも比較しながら、富山県の自然災害の少なさ、県央に位置する射水市の立地環境、北陸新幹線の開業による首都圏とのアクセス向上、勤勉な県民性等々を高く評価いただき、最終的に射水市での立地を決定いただきました。

同社は、富山県内一の雇用環境を目指し、社内設備環境や福利厚生施設の充実に力を入れています。特に、女性が結婚・出産を経ても、長期にわたり貴重な戦力として活躍してもらいたいという想いから、企業内託児所、カフェテリア、社員寮等、県内随一の福利厚生施設を整備されており、市民、県民の採用活動に邁進されております。現在は、5年後までに1000人を雇用することを目標に、採用及び営業活動を推進されております。特に女性に働きやすい職場環境づくりに力を入れられている同社の方針は、子どもを産み育てるなら射水市という市の重点施策にも合致し、多くの女性が市内で安心して働ける場になると大変期待をしております。

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次に、コストコホールセールジャパン株式会社です。同社は、全世界に現在約670店舗、日本国内では現在23店舗を展開する、会員制倉庫型小売店舗です。会員は世界中で7000万人を超え、年間総売り上げも10兆円超を誇る企業です。

射水市は、平成23年度に、少子高齢化や高度情報化、国際化の進展、地方分権等地域を取り巻く社会環境が大きく変化している中で、これらの社会情勢について適切に対応すべく、本市の現状、課題、問題点等を把握し、新たな時代にふさわしい魅力と実行力のあるまちづくりに向けた戦略プロジェクトとして、市内におけるアウトレットモールの整備構想を作成しました。その後、都市計画マスタープランも踏まえ、平成24年度に「複合商業集積拠点整備計画」を立案し、その過程において、同社の誘致を進めてまいりました。

同社も、潟vレステージ・インターナショナルと同様、他市の候補地とともに射水市内での立地を検討されており、最終的に富山市と高岡市の間にある射水市の商圏としての魅力や、海外から物資を輸入する際にコンテナ輸送を多用する同社にとって便利な国際海上コンテナを多く扱う富山新港へのアクセスの良さ、高速道路や国道等の交通インフラの整備状況等を鑑み、小杉インターパークへの立地を決定していただきました。

コストコの立地によって、市としては主に4つのメリットがあると考えております。1点目は、雇用です。1店舗で約250〜400名程度の雇用を生み、その内約半数は正社員という方針で採用活動をされていることから、市内の雇用機会の創出や多様化に大きく貢献していただけると考えております。2点目は地域経済の活性化です。コストコは、多くのメディアに取り上げられたり、コストコの利用方法をメインに取り上げた企画・解説本も発行される等、各方面で注目を浴びています。こういったことから、同社の店舗は、広域からの観光的な集客力もあり、そのことによる市内及び県内の観光客の増加、域内での消費増加が見込まれます。一方で、コストコは卸売り店舗としての側面も持っており、周辺の地元商店では、コストコで仕入れた日本国内ではあまり目にすることのない珍しい海外製品をまとめ買いし、自身の店舗でばら売りすることが可能となります。これらのことが、地域経済の活性化につながることと期待しています。さらには3点目として、こうした注目を浴びる店舗が立地することにより射水市の知名度アップと富山県のイメージアップにもつながると考えております。最後に4点目は、防災対策での連携です。コストコは地域協力に積極的な企業であり、地域のイベントへの協力や自治体との連携に注力しています。その連携のひとつに自治体との防災協定があります。富山県においては、射水市と富山県それぞれと防災協定を締結し、有事における物資の提供等において、射水市はもとより、県内全域で協力をいただけることとなりました。

同社は平成27年8月に小杉インターパーク内に「コストコ射水倉庫店」をオープンさせ、順調に営業されています。市としては、オープン前から懸念となっている周辺の交通量の増加対策等を継続し、周辺地域との融和のサポートをしっかりと行っていきたいと考えています。

3 今後の企業誘致活動について


政府においては、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と銘打ち、人口減少社会への対応、地方での企業活動の活性化、東京一極集中の解消等の地方創生に取り組んでいます。一方射水市においても、第2次射水市総合計画において、「豊かな自然 あふれる笑顔 みんなで創る きららか射水」として、今後10年間は、都市機能の充実・強化を図り、未来に向かって大きく飛躍するための重要な期間と位置付け、まちづくりのための多くの施策を実行しております。

前述の2つの企業の誘致は、それぞれ業態は全く異なるものの、他市にはない個性的で大きな選択肢を増やす企業を誘致した点で、この総合計画の推進にもかなうものです。この2つの企業立地によって、まず即効性のある効果として、市民の普段の生活の利便性が向上し、地域経済の活性化に大いに資するものと考えられます。そして将来的に、このことが地域の魅力を高め、これまで以上に市民が本市に愛着と誇りを持って、市民一人ひとりが「住みたい、住み続けたい」と感じられるようになるものとなると考えています。ひいてはこのことが、今後の射水市が「選ばれるまち」としてさらなる発展を遂げる礎となることを期待しています。

企業の新増設の動きは、全国的には異次元緩和・円安の長期化・消費増税・株高・原油安等々の要因、地域限定的には北陸新幹線開業の要因等さまざまな外部環境の影響を受けて景気が回復傾向と言われる中、業種を問わず近年稀にみる活況であると感じます。空き用地等の問い合わせは、ここ数年増加傾向であり、市内での新規立地・増設案件は、企業内未利用地の活用等も含めて、確実に進んでいます。新増設によって市内の企業団地未利用状況も改善してきておりますが、一方で市内企業が市外へ新しく用地を求められる例も見られます。この一因として、射水市内は優良農地が多く、市街化区域へ編入可能な用地が少ないことから、企業が条件の良いある程度まとまった面積の用地を求めにくい状況となっていることが挙げられます。今後は、地方拠点強化税制等の新たな政府の施策等も活用しながら、都心等の企業の地方移転を促進するための活動を行う一方で、市内の企業が市内において雇用を守りながら積極的に事業を継続、拡大していってもらうための施策やサポート等の実施も重要であり、早急に取り組んでいきたいとムズムズしているところです。

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とやま経済月報
平成27年10月号