特集

富山県ものづくり産業未来戦略と取組みについて

富山県 商工労働部 商工企画課

 

1 はじめに


富山県は、世界的にも高い技術を持った企業が多く立地し、日本海側屈指の工業集積を有する「ものづくり県」です。しかし、グローバル競争が激化する中、今後10年、20年先においても、本県のものづくり産業が競争力を維持し、持続的に発展していくためには、産学官の連携により、魅力ある新商品や競争力に優れた新技術を開発するなど、絶え間ないイノベーションが必要です。このため、県では、平成26年5月に「富山県ものづくり産業未来戦略」を策定し、本県産業を従来の縦割りから、高度で多面的に成長する産業構造への転換を目指すこととしています。

本県ものづくり産業の将来像
表

2 必要な施策の方向性


「富山県ものづくり産業未来戦略」では、この将来像を実現するために必要な施策の方向性として以下の5項目を上げています。

1)新たな産業クラスター形成のための技術基盤形成
具体的には、高機能素材(ナノテクを含む)、デジタルものづくり、ライフサイエンスの各分野の技術開発基盤の構築
2)成長分野への参入促進
医療バイオ、医薬工連携、航空機、次世代自動車、ロボット、環境・エネルギーといった各成長分野について、本県企業の参入促進
3)研究開発、生産現場、経営における人材育成
4)デザインの活用やブランド化
5)国内外への積極的な販路開拓

3 新たな産業クラスター形成のための技術基盤形成の取組みについて


富山県ものづくり産業未来戦略に基づいた取組みの中からごく一部ですが、紹介します。今回は、多々ある取組みの中から新たな産業クラスター形成のための技術基盤形成の取組みについてご紹介します。

まず、高機能素材分野における主な取組みとしては、以下のようなものがあります。

1)「高機能素材ラボ」の整備
平成26年度に富山県ものづくり研究開発センターに、マグネシウム合金など新素材の開発を支援する「高機能素材ラボ」を整備し、平成27年4月より供用を開始しました。
2)「とやま高機能素材研究会」の実施
ラボの最先端設備の高度な活用のため、平成26年度にマグネシウム合金等の最先端素材及びその加工等周辺技術に関する研究会として「とやま高機能素材研究会」を設置しました。
3)「とやまナノテククラスター」事業の推進
地域イノベーション戦略支援プログラム(文部科学省事業)の採択を受け、平成26年8月より「とやまナノテククラスター」を実施しています。
本事業は、本県企業が有するセルロースナノファイバーの製造技術を核として、化粧品ベース材料や、再生医療材料、高強度・誘電性樹脂、超精密成型用の型などの研究開発を進め、地域の幅広いものづくり産業の技術と融合(コネクト)することで、世界的な競争力のある次世代ものづくり産業拠点の形成を目指すものです。

※図をクリックすると大きく表示されます

また、デジタルものづくり分野における主な取組みとしては、以下のものがあります。

1)「デジタルものづくりラボ」の整備
富山県ものづくり研究開発センターに、3D(スリーディー)プリンターなどを活用した新商品開発を支援する「デジタルものづくりラボ」を整備し、平成27年4月より供用を開始しました。
2)「とやまデジタルものづくり研究会」の実施
ラボの最先端設備の高度な活用のため、3Dプリンター関連技術の高度化、利活用を目的とした技術提案型の研究会である「とやまデジタルものづくり研究会」を設置しました。

加えて、ライフサイエンス分野における主な取組みとして

1)「北陸ライフサイエンスクラスター」事業の推進
「健やかな少子高齢化社会」の実現に貢献し、将来的・国際的に魅力のあるライフサイエンスクラスターの形成を目指す「北陸ライフサイエンスクラスター」事業を実施。富山のバイオ技術、石川の診断技術に福井県のチタン加工技術が加わることで、予防、診断、治療の一貫した取組みを行う。
・バイオテクノロジーを活用した機能性食品や医薬品の開発
・血液中のアミノ酸や遺伝子、イメージング機器による診断技術の確立
・高度な医療機器、治療法、治療薬の開発

※図をクリックすると大きく表示されます

2)「製剤開発・創薬研究支援ラボ」の整備
医薬・バイオの分野で、創薬研究の促進と製剤技術力の強化を図るため、富山県薬事研究所に「製剤開発・創薬研究支援ラボ」を整備しました。
また、平成27年度もバイオ医薬品等の創薬研究や製剤開発時の試作に用いる装置を整備することとしています。

このほか、平成27年度には、以下の研究開発事業を行っています。

1)高機能素材・ライフサイエンス産学官連携戦略研究事業
高機能素材、ライフサイエンス分野における産学官連携大型研究の実施
2)ものづくり研究開発・雇用創造支援事業
5分野(高機能素材、デジタルものづくり、次世代自動車、医薬工連携、ロボット)の技術の高度化や試作品開発等に取り組む企業に対し、人件費、研究費等を支援

4 おわりに


今回は、富山県ものづくり産業未来戦略に基づく取組みのごく一部をご紹介しましたが、このほかにも、「新たな成長産業への挑戦支援」、「ものづくり人材の確保・育成」、「デザインの活用による高付加価値化」、「販路開拓」などで、多様な取組みを行っています。今後も、本県のものづくり産業が競争力を維持し、持続的に発展していくために、積極的な支援を行っていきます。

とやま経済月報
平成27年12月号