特集

橋梁の長寿命化対策の推進について

富山県 土木部 道路課

 

1 はじめに


富山県が管理する橋梁は、高度経済成長期以降に整備されたものが多く、今後、橋梁の修繕を行う時期が集中することが想定されます。

このため、予防保全的な維持管理への転換を図ることによって、ライフサイクルコストの縮減及び修繕・更新費用の平準化を図るため、平成22年度に富山県長寿命化修繕計画を策定し、平成23年度より優先度の高い橋梁から順次修繕を実施しています。

また、橋梁の架け替えについては、長寿命化修繕計画には含まれていませんが、老朽化が進み、長寿命化を図ることが困難な橋梁については、これまでも架け替えを進めてきており、ライフサイクルコストや耐震対策等を勘案のうえ、計画的に架け替えを実施していくこととしています。

2 長寿命化修繕計画の背景と目的


県が管理する道路橋は、817橋(橋長15m以上、平成27年4月現在)あり、このうち建設後50年を経過する橋梁は、132橋で全体の約16%となっています。
10年後には、50年を経過する橋梁の割合は43%、30年後には約85%となり、劣化した橋梁が急増するおそれがあります。
高齢化橋梁(50年以上経過)の割合
このような中、本県では、平成17年度に橋梁点検マニュアルを策定し、これに基づき平成18、19年度に県が管理する道路橋(橋長15m以上)について、橋梁点検を実施しました。
点検の結果、コンクリート部材のひび割れ、鋼部材の塗膜劣化・腐食、アルカリ骨材反応(ASR)による損傷が特徴として見受けられました。
これらのことから、これまでの対症療法的な維持管理から計画的かつ予防保全的な維持管理への転換を図ることによって、長寿命化によるライフサイクルコストの縮減及び修繕・更新費用の平準化を図り、道路交通ネットワークの安全・安心を確保します。
−対症療法型維持管理と予防保全型維持管理のイメージ図−

※図をクリックすると大きく表示されます

3 橋梁の状態把握に関する基本的な方針


通常点検(道路パトロール)により、主に路上部材の損傷の早期発見に努めます。
原則5年ごとの定期点検の実施により、橋梁の各部材の劣化や損傷状況を把握し、健全度の算定・データベース化を行います。(橋梁点検マニュアルに基づく)
定期点検については、外部委託によるレベル1点検と、職員も実施可能なレベル2点検(主に橋長15m未満の小規模橋梁や、簡易な構造の橋梁が対象)を行います。
−橋梁点検の種類・体系−

4 橋梁の長寿命化及び修繕・更新費用の縮減に関する基本的な方針


○橋梁の健全度と重要度に応じた「優先度」を設定し、優先度の高い橋梁から修繕を実施することを基本とします。

・ただし、橋の安全性に影響を及ぼすような特異な損傷があり、早期の対策が必要と判断される部材は最優先に修繕を実施します。

『健全度』
 全く損傷がなく健全な状態を100とし、「損傷の進み具合」と「損傷種類の重大性」に応じて100から減点した評価点
○今後概ね10年間(H23〜H32)で適切な管理水準※に引き上げ、それ以降は適切な管理水準を維持し、修繕・更新費用の縮減※※を目指します。
※「適切な管理水準」とは
・点検の結果、部材ごとに算出される『健全度』を管理水準の目安とします。
・短期的目標として、今後概ね10年間で『健全度』40未満の橋梁に対する修繕を実施し、健全度の向上に努めます。
・中長期的目標として、すべての橋梁において『健全度』60以上が維持できるような予防保全型の維持管理を行います。

※図をクリックすると大きく表示されます

※※「修繕・更新費用の縮減」について
・適切な管理水準を維持することによって、橋梁の長寿命化を図ります。ただし、県管理橋梁における高齢化の進展状況から、すべての橋梁に対して長寿命化を図ることは困難であり、最低限の橋梁の架替えは必要です。今後、点検により把握する劣化状況や機能性、重要性、費用対効果などを勘案し、架替えについても検討を行います。
○予防保全型維持管理への方策として次のことに取り組みます。
橋面水対策
橋面水の橋梁内部への浸入防止対策は、長寿命化に大きな効果があることから、橋面水対策を重点的に行います。
【具体的な対策】橋面防水工、伸縮装置の非排水化
   対策事例:県道富山小杉線 有沢橋 橋面防水工
鋼橋防食機能の維持
漏水の影響などにより、他の部分より劣化の早い鋼橋の桁端部に部分塗装を実施するなど、腐食環境に応じた方法により防食機能を維持します。
【具体的な対策】部分塗装、1種ケレンの部分併用
   対策事例:国道156号 大渡橋 再塗装工
コンクリートの劣化対策
コンクリート構造物の代表的な損傷である塩害や中性化、富山県内の橋梁で特徴的にみられるアルカリ骨材反応(ASR)などは、外部から侵入する水分や塩分によって劣化が進行することから、それらの侵入を防止し、損傷の拡大を防ぎます。
【具体的な対策】ひび割れ注入工
   対策事例:県道富山外郭環状線 新常願寺橋 橋脚ひび割れ注入工

5 長寿命化修繕計画による効果


○これまでの対症療法型から予防保全型の維持管理への転換により、①橋梁健全度の改善、②修繕費用の縮減、③修繕費用の平準化が可能となります。

≪50年間予測(試算)≫
・橋長15m以上の橋梁の点検データをもとに、対症療法型の維持管理と予防保全型の維持管理による今後50年の健全度と修繕費用について試算したところ、次の結果が得られました。
[効果@]橋梁健全度の改善
予防保全型では、今後概ね10年間(H23〜H32)で健全度を引き上げることによって、以後は適切な健全度を維持でき長寿命化が図れます。
[効果A]修繕費用(50年間)の縮減

[効果B]修繕費用の平準化

6 事後評価


○点検結果や修繕結果をもとに事後評価を行い、修繕の優先度などを適宜見直し、計画に反映します。
○必要に応じて橋梁点検マニュアルを見直します。
  ※平成27年4月にマニュアルを改訂しました。
とやま経済月報
平成27年12月号