チャイナドレスをオーダーメード!
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1 はじめに富山県と中国上海市は、2005年(平成17年)に富山―上海便の就航を契機として、経済・文化・教育等の分野において、交流を推進していくことに合意しました。そして、人材交流の一環として、2006年(平成18年)から継続的に富山県の職員が上海市に派遣されています。 私は、2013年(平成25年)9月から10ヵ月間派遣職員として上海に滞在し、上海交通大学で中国語を勉強するとともに、市政府機関及び関係団体等の連絡調整を行いました。 |
2 上海について上海といえば、外灘(ワイタン)など旧租界地域(外国人居留地)の欧米アジアの文化が融合した街並みや建築物、それとは対照的な浦東(ほとう)の中国経済の成長を象徴する近未来的な街並みを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? この街並みを見るだけで、上海に暮らす人々が古き良き伝統文化を維持するとともに、日々新しい文化を求めているその鼓動を感じることができます。 ![]() (写真1 旧フランス租界地の街並み) ![]() (写真2 浦東の夜景) 上海市の面積は、6,340.5平方キロメートルで富山県の1.5倍、戸籍人口は1,426.93万人(2012年戸籍人口)で富山県の13倍です。上海市一人あたりのGDPは85,373元(2013年、※1)と天津、北京に次いで高く、経済面において中国を代表する都市の一つといえます。 また、明の時代に外国人が上海に来てから、1843年に上海が通商港として開港し、英米仏日など各国の租界が設置された結果、1931年時点で6万人を超える外国人が居住していました。それから80年あまり経った2010年には、214ヵ国・地域から14万3千人の外国人が居住する国際都市となっています。 上海は、政治の中心である北京と対比される中国経済を牽引する国際都市です。 |
3 チャイナドレスをオーダーメード(1)オーダーメードについて さて、固い話はここまでにして、上海生活の楽しみの一つであるオーダーメードについてお話ししましょう。 私も住んでみるまで知らなかったのですが、実は上海では日本よりもお手頃な価格で、衣類・バッグ・靴などのオーダーメードができるのです。なかでも、衣類は、春・夏はシルクやリネンのシャツやワンピース、スカート、秋・冬はカシミアのニットやコート、ダウンコート、更にはチャイナドレスやウエディングドレスなど様々な衣類を自分の体形に合わせて作れます。 いわゆるチャイナドレスは、中国語では旗袍(チーパオ)といい、満州族から伝わった女性用の中国式長衣のことを指します。日本の着物同様、現代では日常的に着る服ではありませんが、最近は改めて注目されているようです。テレビで特集が組まれていたり、街中や地下鉄などでチャイナドレス姿の女性をしばしば見かけたります。チャイナドレスは、中国人女性にとって、何かしらのイベントなど、特別な時に着用する特別な服という位置づけのようです。 オーダーメードはどこで行うかというと、布市場です。布市場の特徴は何と言ってもリーズナブルなことが挙げられます。年々物価が上がっている上海ですから、例にもれず布市場でのオーダー価格も上がっています。それでも、ZARA、H&M、ユニクロなどのファストファッションと同じ価格帯、もしくはそれよりも安い価格でオーダーメードができるので、お手頃感があります。 参考までに目安の価格は、以下の通りです。
それでは、「布」の文字を目印に、布市場に出発です。 (写真3 大きい「布」の字が布市場の目印です!)
(2)布市場で実践!
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1)お店を選ぶ
いざ、布市場に入ってみると、多くのお店が並んでいます。オーダーメードというと高級なイメージですが、場所は市場であるため、全体的に雑然としています。 それぞれの店舗には得意分野があります。お店に並んでいる服の種類から、オーダーしたい服を扱っているお店を探します。店舗によって、扱っている布の種類が異なります。例えば、シルクが多い店、中国風の布が多い店、麻素材の多い店など多様なため、作りたい布地の多いお店を選びましょう。また、各店舗の店先には、サンプルの服がかかっているので、サンプルの服の雰囲気から、自分の好みに合いそうなお店を探します。 2)形を選ぶ気に入ったお店があったら、中に入ってサンプルを手に取って見てみたり、試着をしたりします。 このサンプルですが、実は誰かがオーダーして完成した服が、サンプルとして店先に並べられています。そのためサイズはバラバラなのですが、自由に試着することができます(ということは、自分がオーダーした服も試着されるということですが…)。 また、各店舗は狭いので、試着室はありません。そのため、店員さんが布で隠してくれる陰に隠れて試着をすることになります。試着のしやすい服装で行くことをお勧めします。 3)布を選ぶ作りたい形が決まったら、次は布を選びます。お店に備えてある布のほか、布見本からも選ぶことができます。 店員さんのお勧めの布を聞いたり、気に入った布を合わせてみて、布を決定します。 4)サイズを測定する形と布が決まった段階で、いよいよサイズを測定します。サイズ測定時には、体の部位に応じて、フィットさせたいのか、ゆったりした方がいいのかの確認があります。 ちなみに、一般的に中国人は身体にフィットした作りを好み、日本人はゆったりしたサイズを好むようです。 スカートの長さや、袖の長さもサイズ測定の時に、希望を伝えて決定します。 5)詳細を決定おおまかなオーダーが決定した後は、詳細を確認していきます。襟の形、ボタンの種類など自分の好みで決定します。 例えば、シャツの場合は襟の形を選べます。ボタンも、通常のボタンのほか、中国結びのボタンも選べますし、好みのボタンがあればそれを持参してつけてもらうことも可能です。 6)価格交渉さて、最後にいよいよ価格交渉です。相手の言い値で購入すると損をするのが上海です。交渉で、少しでも安くしたいところです。 何枚か買うから安くしてほしい、あるいは今度友達を連れてくるから安くしてほしいなど、値下げのお願いをします。この時、お店にとっても利益があれば、交渉がスムーズに進みます。 価格が決定したら、全体価格の半額ほどの前払金を支払って、オーダー用紙兼領収書を受け取ります。この用紙には、受取り可能日も記載されています。 7)完成基本的に一週間から10日で完成します。とはいえ、何事もおおらかなお国柄ですから、受取り可能日にまだ完成していないということもままあります。事前に完成を電話で確認したのち、受取りに行くのが賢明です。 また、裏ワザとして、「特急代金」(約50〜100元《800〜1,000円》)を支払えば、通常よりも早く受け取ることが可能です。 受取りの際には、必ず試着しましょう。この試着で、気になる点があったら、修正してもらえます。 ここまできて、ようやくオーダーした服が完成するのですが、この受取りに来たときに再度オーダーする人が後をたちません。 一度のオーダーから学ぶことも多いため、次回はこの経験を活かして、より自分に合った服を作ってみたいという意欲がかきたてられるのでしょう。一度はまると、なかなか止められないのがオーダーメードの特徴です。 布市場の魅力は、オーダーの過程を通して、その服に思い入れが生まれることです。完成した服を見ると、オーダー時の店員さんとのやり取りが思い出されます。商売上手な店員さんとの値切り交渉もまた、楽しみの一つです。どう理由をつけたら安くしてもらえるか、と考えて交渉し、値切りが成功するのはとても嬉しいものです。また、多くの体の部位や、色、布の種類などの実生活に役立つ中国語を覚えられたのも布市場での収穫でした。 (写真4 サンプルからお気に入りを探します!)
![]() (写真5 Yシャツ襟の種類がこんなに!)
![]() (写真6 布の種類も豊富です!)
![]() (写真7 ついにチャイナドレスが完成!)
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4 最後に経済成長が緩やかになりつつあると言われている中国ですが、現在も新しいビルを建設中です。街を歩く人々も賑やかにおしゃべりを楽しんでいて、活気があふれています。 2014年4月現在、中国から日本への観光客が、前年比90%増の19万人と過去最高を更新しました。日中関係が改善したわけではありませんが、円安・人民元高で、日本への旅行コストが大きく下がった結果、中国では今、一番行きたい国のトップに日本があがるようになりました。 中国からの訪日観光客数(2011年1月〜2014年4月) ※2
![]() その一方、日本から中国への観光客は、両国間の冷え込みからか激減しており、10年ぶりに300万人を割り込んでいます。 しかし、今回ご紹介した布市場のほかにも、上海には面白い場所が多くあります。また、2013年に「中国(上海)自由貿易試験区」が設置され、外国投資に対するサービス産業の開放が始まりました。さらに、2015年には上海ディズニーランドがオープンするなど、話題に事欠きません。すでに成熟した国際都市の上海ですが、これからどのように発展していくのか楽しみです。現在2015年の開業に向け、建設中で中国で最も高い建築物となるであろう上海タワーの写真で結びに代えます。 (写真8 建設中の上海タワー)
(参考文献)
![]() ※1 日本貿易振興機構(ジェトロ)調査レポート「シャンハイスタイル」 ※2 楽天証券経済研究所「中国から観光客急増で、ついに日本の旅行収支が黒字--『日本への考え変わった』」(2014/6/10) |