平成23年度富山県民経済計算推計結果について統計調査課 南保勇治 |
|
1 はじめに富山県では平成26年2月に平成23年度の富山県民経済計算の推計結果を公表いたしました。ここでは、今回の推計結果をご紹介するとともに、「県民経済計算」に関する若干のご説明についても併せて行いたいと思います。なお、本文中、意見に関する部分については筆者の個人的見解である旨をお断り申し上げます。 |
2 富山県経済の概況まず、平成23年度の富山県経済の概況を前年度と比較し表1で見てみます。
本県の経済成長率は平成14年度から平成20年度までは国の成長率と概ね同じ動きで推移していました。なお、平成20年度の本県と国の成長率の大きな落ち込みは、いわゆる「リーマンショック」によりもたらされた世界同時不況によるものです。翌平成21年度は国と本県では大きく成長率が異なりました。国は、まだマイナス成長だったとはいえ幾分回復傾向を見せましたが、本県の成長率は一段のマイナスを示しています。これは、本県は製造業が県産業全体に占める割合が高い上に、電気機械、化学、一次金属、一般機械など、いわゆるリーマンショックで大きくマイナスの影響を受けた製造分野の比率が高かったためになかなか回復基調に乗れなかったものと考えています。そして、リーマンショックから回復した平成22年度は、過去の落ち込みの反動もあり名目、実質とも国を上回る成長率となっています。
|
3 経済活動別県内総生産(名目)本県が公表する県民経済計算は、基本的に、基本勘定表3表、主要系列表7表、付表4表で構成されています。各統計表は本県ホームページ「とやま統計ワールド」http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/index2.html でご覧いただけます。 ここでは、そのうち最も利用されることの多い主要系列表の「経済活動別県内総生産(名目)」をご紹介いたします。
|
4 平成23年度の県内総生産額上記の表2のうち、直近の2ヶ年を抜き出して分かりやすく分析用の表にしたものが下の表3です。これに基づき、平成23年度の本県の生産面からみた県内総生産の状況について、各産業ごとに触れてみたいと思います。
|
5 経済活動別県内総生産の統計表次に、最も利用の多い経済活動別県内総生産の統計表に関して、これまでお問い合わせのあったものからいくつかご紹介いたします。
第3次産業部分は、私が見ても、まったくそっけなく感じます。 もちろん、これには理由がありまして、端的にいうと、特にサービス産業の分野では収集できる統計資料が大変限られており、細分化の作業自体が難しいという事情があるためです。 農林水産業の分野は長い伝統から統計がしっかりしていますし、製造業も大変詳細なデータが広汎に整備されています。これらの産業は農地や工場など生産活動の基盤が外部から認識しやすく活動も恒常的、安定的で統計化しやすい、との事情もあると思います。一方、第3次産業、特にサービス産業分野は時代や環境、社会のニーズで自由に変遷してゆく性質をもっていることなどから、安定的、網羅的な統計の作成が難しく、そもそも短期間で様々に変化していく業種をどのように分類し時系列化するのか判断に迷ってしまうということもあります。 ちなみに、現在のサービス業の表章は「公共サービス業」、「対事業所サービス業」、「対個人サービス業」の3分類となっており、まず、公共によるサービスか、民間によるサービスかにより分割し、さらにこの民間サービスを対象別(事業所向けか個人向けか)に分ける形になっています。また、参考までにいえば、推計作業上はさらに下記の細分類により推計を行っています。
統計表の表章は各県の県民経済計算との比較が可能なように、内閣府の指導のもとに共通の様式を使用することとなっており、本県でももちろん各県共通の様式を使用しています。統計調査の精度も年々向上しており、サービス業関連の統計も整備が進んでいますので、内閣府や各県との調整のうえ少しでも詳しく表章ができるようになればいいなと思っています。
各々の「サービス業」で推計の対象となっているのは次のとおりです。
これについても、ご指摘の通り、表章を見ただけで内容がある程度推測できるような名称を工夫する必要があると思います。
ちなみに、平成23年度の各都道府県民経済計算の公表時期は次のとおりでした。
|
6 おわりに県民経済計算は、推計対象年度の国民経済計算をはじめとした各種統計資料が出揃ってからこれをもとに推計するという制約上、推計対象年度からかなり遅れて公表されます。このため、県民経済計算は、他の経済統計に比較して速報性に欠け、特に、東日本大震災などのような大きな災害や社会変動には即応できない弱点があります。 しかしながら、公表される県民経済計算は、法人、個人を含めた県民の経済活動の諸側面を、県民経済計算の概念に従って加工、組み立てて作成された総合経済指標であり、その結果は地域経済全体を表している唯一の指標といえます。 そして、この県民経済計算を用いれば、時系列での分析、他県との比較や県経済の評価、特徴の把握などが可能であり、これが行政、企業、各種団体などの様々な活動や施策、経済活動を基礎の部分で支えることができるものとなっています。 今後とも工夫と改善を重ね、この県民経済計算がさらに様々な分野でお役に立てるものとなるよう、努力していきたいと考えています。 |